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2020年06月28日

ブーレーズ 「ル・マルトー・サン・メートル」

頭でっかち音楽の最高峰ブーレーズの登場です。

ブーレーズはメシアンの弟子で、そのスタイルはクールで理知的、難解で演奏至難。ピアノソナタなんかは、どこがソナタなのかわかんないし、演奏不可能な箇所が何ヶ所かあって、録音を聴いても譜面通りに演奏してるのか聴き取れません。とんでもない曲です。

同時に非常にヤリ手で、フランス国立音響音楽研究所IRCAM(私は現代音楽マニアですからイルカムと読みます)を自分で創設して初代所長におさまっちゃう。国立の機関ですから、フランスのシリアスなクラシック音楽の頂点に立ったようなものです。とんでもない人です。

指揮活動も活発で、もともとはマイナーな作曲家エドガー・ヴァレーズを紹介したり、フランス現代音楽を振ったりするために始めたんですが、ドビュッシーやバルトーク、ストラヴィンスキーらの曲を指揮すると、これが非常に精緻で明晰。録音した途端にその曲のベスト演奏になっちゃうくらい。とんでもない音楽頭です。

そんなトンデモ人のブーレーズですが、実はとんでもないロマンチストで、トータル・セリーというガッチガチの技法を使いながら、聴き慣れてくるとそこかしこにポエジーが感じられます。

で、この「ル・マルトー・サン・メートル」ですが、ガッチガチなのに実に美しい。アルバン・ベルクの「叙情組曲」と双璧を成す美しさです。

ブーレーズは、残念なことに2016年に亡くなってしまいました。このニュースを聞いて、ひとつの時代が終わったと感じた人も多かったでしょう。そんな巨人です。

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