むーさんの負けてたまるか

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ぼんやり空を見上げ
呟いた
なんだ・・・
また降ってきたか
街は夜の帳を降ろし
人通りも途絶えた交差点
偽りの笑顔に満ちた
酒宴をやり過ごし
馴染みの「旅路」に寄ろうか
それとも帰ろうか
少し酔った頭で考えた
ただそれだけ
それだけだった
赤い車高の低い車が
甲高い排気音を闇夜に轟かせ
凄い勢いで近づいてくる

おいおいこの雪に
なんてスピードだよ！
アホなのか？
うん？
うん？?
え？
ええ？
えええ？
信号は赤だぞ？
なんで止まらない？
止まれないのか？
え？
ええ？
えええ？
恐ろしい狂気は
真人（まさと）へと
おいおい冗談だろー


若いOL風の子が
短い悲鳴を残し逃げ去る
真人は何故か動けない
どうしたことか
動けない

なんだよ！
どうしちまったんだ
俺はハネられるのか？
まさか
跳ねられてしまうのか？

年代物の映写機が映し出す
スローモーション
まるでゼンマイ仕掛けの
スローモーション
向かってくる狂気はコマ送り


なぜ　動けないんだ
なぜ　逃げれないんだ
冷静に考える自分が
妙に腹立たしい

それはまるで黒魔法
そう暗黒の呪縛
地の底から湧き出た
悪しき手は
真人の足をつかむ
「もう、放さぬぞー」
乾いた笑い声が響く

降りしきる雪の中
奴は横滑りしながら近づく


俺は死ぬのか？
ハネられて死ぬのか？
何でだ？
何でなんだ？
俺が何をしたんだ？

もう逃げようもない距離
真人は近づく怪物をぼんやりと
見つめるしかない
雪はやまない


おっさん！
どいてくれよ
頼むからどいてくれよ
何やってんだよ
この野郎ー

もう駄目だ
あぁぁぁーー終わりだ
終わりになるーーー

何でだよ
何で電話なんか
してきやがった
あのバカは
靖子！
忘年会なんか行くなって
云っただろうが

おっさん！どいてくれよ
もう止まれねぇんだよ
頼むからどいてよー
みんな逃げたろがよ
あんたも逃げてよ
あぁぁぁーー駄目だ
ぶつかるー！！！
嫌だぁーーーー

制御出来ないのは
車だけじゃない
運転してる充（みちる）自身もだ
友達と気持ちよく飲んでいたんだ
本当はこんなとこに
いるはずじゃなかったんだ
少し酔ったから
来春、一緒になる靖子の
「迎えに来てね」
のお願いも断るはずだったのだ
なんでこんな事になったんだ
どうして
どうしてー
どうして！！！
どうしてなんだよ・・・
雪だし飲んでるし
いつもより注意して
運転してきたのに・・・
そんな事を錯乱寸前の頭で考えた

酒を甘く見すぎた彼は
ひとつ前の交差点の赤信号に
止まれなかったのだ
ブレーキとアクセルを
踏み間違えてしまったのだ
ニュースでよく聞く
高齢者がよくやる
踏み間違いのあれだ

ダメじゃん！年寄りは！！
運転なんてしないで
家で寝てろよ！
バカがよー
そう嘲笑してきた充自身が
こうなるとは想像さえ
していなかったのだ
全てはそんなに甘くない
彼は最後の時を迎えるその時に
知る事になったのだ

もう高鳴る心臓の音しか
聞こえない
自由のきかぬハンドルは
愛車を怪物と化し
神に祈るしかない自分を恨んだ
恨むしか出来ない自分を
恨んだのだ


真人はたった数秒の事を
数時間の様に感じていた
今日の事　
今日までの事
これがよく云う
人生の走馬灯なのか
どんどん近づく魔の刻は
もう止めることなど
誰にも出来ぬのだ
ふと運転している
錆びついたような男の目と
目が合った刹那
今まで発した事もない
自らの絶叫を聞いた


魔物は容赦なく真人を
跳ね飛ばした
凄まじい衝突音の中
宙を舞いながら
車はおもちゃのように
何度も横転して
角の宝石商に突っ込んだ
真人は上空から
それを見下ろしていた
消えゆく意識の中
何処か不思議と
頭だけは冷静な自分に
驚いたのは真人自身だった

あぁ俺はここで終わるのか
嫌だなぁ
まだ嫌だなぁ
文菜、慎一、美咲・・・・
死にたくない！！
まだ死にたくないよ
・・・・
・・・・
・・・・

雪が降り続く
１２月の夜だった




<編集後記？＞

運転する皆んな
師走です
とにかく
安全運転でいきましょう
まさか酒を飲んで運転なんか
してないだろうね？
絶対に真人や充に
なってはいけません
事故は全てを奪い去ります

マヒーズドライバーさん
運転に慣れっ子になっちゃ
絶対にダメダメ！！
あの時ドキドキして
にぎり直したハンドル
あの日の想いは忘れないでね！
あたしも含め
いつも謙虚に
そして
慎重な運転でいきましょう


よかったら続編は誰か
書いてみてね＾ｗ＾
構想はあるんだけど
何だかやたら多忙です (^^;)
真人（まさと）や充（みつる）
これからどうなるんでしょうねぇ
ハハハ (笑)
とにかく　ご安全に！