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「段取り力」 齋藤 孝

自分がいる場所でただ言われたことだけをやっているのではなく、全体で何が起こっているのかを、マニュアルを構築する側の立場に立って見通す。これがマニュアルを盗む力だ。段取りを盗む力になる。マニュアルは作る側から見ると知恵の結晶である。


段取りを意識することのよさは、先を見越しているので、反復する努力をいとわなくなることだ。先が見えない努力はつらい。しかしこれを続けていれば、必ず質的な変化が起き、少しでも変化すればそこを増幅すればいいと分かれば、反復も続けていける。これが上達の基本だ。


「段取り力」は、つまるところエネルギー配分だ。一番エネルギー値の大きいものを再重要なところにぶちこむ。勝負事で言えば、相手の一番弱いところに自分の最大エネルギーをぶつけるということだ。相手のスキに焦点を定めて、最大のエネルギーを注ぎ込めば、それだけで高度な技術を持つ相手に勝つことができる。


余計なことを考えないのは、仕事が速く上手にできる人の特徴のような気がする。高度な仕事をしているのにもかかわらず、考え方は実にシンプルなことが多い。自分のやっていることを単純化できるので、無駄な脳のエネルギーを使わない。しかし、仕事ができない人は、こんなことをやっていても大丈夫なのだろうかといろいろ考え過ぎてしまい、そのことで脳のエネルギーを消費してしまい、ことを成すまでの量的な蓄積ができない。だから仕事が遅い。




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