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2024年02月18日

高行健の「朋友」で執筆脳を考える7

3 「朋友」のLのストーリー 

 高行健も自身で作家について考え、私もシナジーのメタファーで作家の執筆脳について考えている。平たくいえば、問題は、作家の頭の使い様である。
 飯塚(2005)によると、高行健の小説を書くための基本姿勢は、1非ストーリー性、2人称の変化、3主観の表出である。

1 非ストーリー性とは、ストーリーを語る意図がなく、所謂プロットがない。つまり、主題を中心とする登場人物の性格や心理描写が限られている。小説という言語の芸術は、現実の模写ではなく、言語の実現を意味する。
2 人称の変化とは、人物形象の描写に頼ることなく、異なる人称を使って、読者の受け取りに角度を与えている。角度は転換することができ、角度と距離を変えて観察し体験することができる。 
3 主観の表出は、環境に対する純然たる客観描写を排除しているため、内心の感情を外界へと投射する。
実際に「朋友」の中身を見てみよう。

花村嘉英(2021)「高行健の『朋友』で執筆脳を考える」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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