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2024年09月12日

心理学統計の検定を用いてトーマス・マンの「魔の山」を考える1

1 先行研究との関係

 データベースを作成ながら購読脳と執筆脳を分析するシナジーのメタファーの研究も次第に安定してきている。これまでバランスを意識して二個二個のルールに基づき多くの組み合わせを作ってきた。統計についても、バラツキ、相関関係、多変量分析と進み、今回の心理学統計を含めれば、バラツキと相関、多変量と心理という組み合わせができる。この小論では、実吉(2013)の心理学統計の検定の手法に従い、トーマス・マンの「魔の山」を題材にして男女の満足度について考えていく。 

花村嘉英(2019)「心理学統計の検定を用いてトーマス・マンの「魔の山」を考える」より

ラフ集合からThomas Mannの「魔の山」を考える5

3 まとめ

 周知のように、ラフ集合は、表形式のデータからどのような知識を抽出できるのかを問題にする。例えば、近似の観点から見ると、対象となる概念の肯定的な側面と否定的な側面を持つ知識を抽出することに特徴がある。一方、縮約の立場から見ると、概念の肯定的な側面を表現する最小限の属性集合を求めることに特徴がある。 
 現在作成しているThomas Mannのイロニーに関するDBは、1 「計算文学入門の概要」中でも示した通り、彼のイロニー自体が物事を肯定的にも否定的にも考察することから、ラフ集合によるアプローチは面白いと考えられる。また、ラフ集合の考え方を基とするテキストマイニングについては、Thomas Mannのイロニーが読み取れるような文章を抽出しながら話を進めれば、計算文学において価値のある基礎研究となるであろう。

花村嘉英 (2017)「ラフ集合でThomas Mannの「魔の山」を考える−テキストマイニングのトレーニング」より

ラフ集合からThomas Mannの「魔の山」を考える4

2.2 縮約

 データからパターンを抽出する際、最も簡単なルールを求めたい。ラフ集合の場合は、下近似の部分集合がルールを与えることから、属性の集合を満たす集合により下近似の部分集合を与え、属性数が最小のものを求めることによりルールが生成される。
 前節は、属性が一つの場合を扱ったが、実際に下近似を生成するには、複数の[属性=値]の連言による分割を考える必要がある。例えば、症状と喫煙の連言を考えてみよう。{{1},{2},{3,4},{5,6}}という分割が生成され、クラスの分割に一致した下近似と上近似が求められる。
 必要最小限の属性のみを抽出することは、簡略化と呼ばれる。また、ラベルの下近似を与える最小限の属性集合は、縮約と呼ばれる。{症状と喫煙}は、縮約の一例となる。最小限の[属性=値]の対を持つ規則は、必要最小限の属性数を持つ縮約から求めることができる。例えば、表1の場合、{症状と喫煙}という縮約から、以下のルールを求めることができる。

(3)[症状=重い(慢性)]⇒[クラス=長い]、[症状=重い(急性)]⇒[クラス=短い]、[症状=軽い]∧[喫煙=しない]⇒[クラス=中位]、[症状=軽い]∧[喫煙=する]⇒[クラス=長い]

 次に、[クラス=中位]を満たす集合{1}について考えてみよう。この{1}が、他のクラスを満たす集合{2},{3,4},{5,6}から特定できるような属性の集合を求める。レコード1と属性年代により特定できないレコードの集合を[1]年代と表記すると、属性年代、性別、病名、症状、喫煙に対して、以下のことが定義できる。

(4)
[1]年代=[1,2,3]
[1]性別=[1,5] [1]病名=[1,2,5] [1]症状=[1,2]
[1]喫煙=[1,3,4,5,6]

{1}の部分集合となるものは存在しないので、一つの属性だけで[クラス=中位]を分類することができる情報はない。そこで、これらの属性間の連言を考えてみる。[年代=20-29]∧[性別=女]を満たす集合は、[1]年代∩[1]性別として表記される。この場合、縮約の候補は、以下のようになる。

(5)
[1]性別∩[1]症状=[1]
[1]症状∩[1]喫煙=[1]

{性別,症状}、{症状,喫煙}あたりが候補となりそうだ。{2},{3,4},{5,6}についてもこの方法を適用すると、{症状,喫煙}が縮約となることがわかる。ここまでが、属性数2の縮約である。
次に、属性が3つある縮約を求めてみよう。これまでの議論からわかるように、この縮約は、属性数3となる候補のうち{性別,症状}を包含する属性の集合から生成される。この場合は、{1}ではなく{2},{3,4},{5,6}に関して計算しなければならない。例えば、

(6)
[2]性別∩[2]症状=[2]
[3]性別∩[3]症状=[3,4]
[4]性別∩[4]症状=[3,4]
[5]性別∩[5]症状=[5]
[6]性別∩[6]症状=[6]

となるので、3番目のレコードに着目すれば、

(7)
[3]性別∩[3]症状∩[3]年代=[3]
[3]性別∩[3]症状∩[3]病名=[3,4]
[3]性別∩[3]症状∩[3]喫煙=[3,4]

が得られる。{性別,症状、喫煙}は、{症状,喫煙}を部分集合として含むので、{性別,症状、年代}、{性別,症状、病名}が縮約となる。同様にして、4番目のレコードに着目すれば、

(8)
[4]性別∩[4]症状∩[4]
年代=[4] [4]性別∩[4]症状∩[4]病名=[3,4]
[4]性別∩[4]症状∩[4]喫煙=[3,4]

が得られ、3番目のレコードと同じ結果となる。以上のことから 表1のクラスに関する縮約は、{症状,喫煙}、{性別,症状,年代}、{性別,症状、病名}となる。 ここまで述べてきた計算方法は、一つずつ属性を追加していくことにより縮約にたどりつくボトムアップ型であるが、ラフ集合にはこれとは別に、決定ルールから出発するトップダウン型の計算方法がある。例えば、1番目のレコードは、次のような形式によって記述される。

(8)[年代=20-29]∧[性別=女]∧[病名=持病]∧[症状=軽い]∧[喫煙=しない]⇒[クラス=中位]

これらの属性のうち何が削除されると矛盾が生じるだろうか。例えば、症状と喫煙を削除すると、次のような二つの決定ルールが生成される。

(9)a [年代=20-29]∧[性別=女]∧[病名=持病]⇒[クラス=中位]
(9)b [年代=20-29]∧[性別=女]∧[病名=持病]⇒[クラス=短い]

 ラフ集合では、このことを矛盾が発生したと言う。つまり、{症状,喫煙}は、ルールの記述になくてはならない属性の集合を与えている。この手続きを残りの{2,3,4,5,6}に関しても適用すると、最終的に、{症状,喫煙}、{性別,症状,年代}、{性別,症状、病名}が表1の分類に不可欠な属性の集合となり、これらが縮約となる。

花村嘉英 (2017)「ラフ集合でThomas Mannの「魔の山」を考える−テキストマイニングのトレーニング」より

ラフ集合からThomas Mannの「魔の山」を考える3

2 ラフ集合

 津本(2001)に基づき平易なラフ集合の考え方を紹介する。津本論文は、データベース(DB)の中にある集合体の近似的な表現とそれに必要な最小限の属性集合(縮約と呼ばれる)の求め方を説明している。

2.1 近似

 「魔の山」の登場人物が患っている病気の症状(表1)について考えてみる。

表1 登場人物の病気の症状
No. (名前または
ニックネーム)     年代   性別  病名     症状     喫煙  クラス(療養所の滞在期間)
1.
Claudia Chauchat   20-29  女   持病    軽い(慢性)  なし    中位
2.
Hans Castorp     20-29  男  持病(カタル) 軽い(慢性) あり    長い
3.
Joachim Ziemßen   20-29  男  発熱(肺痛) 重い(慢性)  なし   長い
4.
爪を噛む青年     10-19   男   発熱      重い(慢性) なし    長い
5.
Barbara Hujus     20-29  女   持病     重い(急性) なし    短い
6.
Tou-les-deuxの長男   10-19  男  チフス    重い(急性)  なし    短い

この表は、1から6までのレコードを持っている。そして、内容は、属性の集合{年代、性別、病名、症状、喫煙}と所属クラス(サナトリウムの滞在期間)である。それぞれ属性には、値の集合がある。例えば、病名に関して大きく分類すると、{持病、発熱、チフス}がそれに当たる。
周知のように、ラフ集合は、各属性がデータの集合{1,2,3,4,5,6}の分割を与えるところに原点がある。[病名=持病]、[病名=発熱]、[病名=チフス]を満たすデータの部分集合は、{1,2,5}、{3,4}、{6}である。表1は、他の属性についても同様の分割を与えている。次に、レコードのラベル付けを考える。ここでは、クラスをそのラベルと仮定する。[クラス=中位]に注目すると、これを満たすデータは、{1}である。これらをまとめると、表2となる。

表2 分割の例
病名による分割  クラスによる分割
持病 {1,2,5}    短い {5,6}
発熱 {3,4}     中位 {1}
チフス{6}     長い {2,3,4,}

病名による分割とクラスによる分割から何が言えるであろうか。一番簡単なことは、[病名=チフス]を満たす分割が、[クラス=短い]を満たす分割の部分集合となっていることである。古典論理によれば、こうした関係は、次のように表記される。

(1)[病名=チフス]⇒[クラス=短い]

ラフ集合では、[病名=チフス]を満たす分割を[クラス=短い]の下近似と呼ぶ。[病名=チフス]を満たせば、クラスは短いが確定するためである。 次に、[クラス=短い]のすべてをカバーする分割について考えてみよう。上述の例では、[病名=持病]を満たす集合と[病名=チフス]を満たす集合の和集合が{1,2,5,6}となり、[クラス=短い]を部分集合とすることができる。これらの集合間の関係は、古典論理を用いると、次のように表すことができる。ラフ集合では、これらの病名に関するデータの分割をそれぞれのクラスの上近似と呼ぶ。

(2)[クラス=短い]⇒[病名=持病]∨[病名=チフス]

この結果、[クラス=短い]の下近似は、[病名=チフス]を満たす集合、上近似は、[病名=持病]または[病名=チフス]を満たす集合で与えられる。これらの関係は、表3にまとめられる。

表3 病名よる上近似と下近似
クラス 分割 上近似 下近似
短い {5,6} {6} {1,2,5,6}
中位 {1}   { } {1,2,5}
長い {2,3,4} { } {1,2,3,4,5}

ラフ集合は、近似の質をcard(下近似)/card(上近似)により定義する。例えば、[クラス=短い]の場合、近似の質は、1/4 =0.25である。一方、症状であれば、表4のような近似が得られる。

表4 症状よる上近似と下近似
クラス 分割  上近似 下近似
短い {5,6}  {6} {1,2,5,6}
中位 {1}    { } {1,2,5}
長い {2,3,4}  { } {1,2,3,4,5}

この表から分かるように、例えば、[クラス=短い]の場合、近似の質は、2/2 =1.0である。
ラフ集合では、各属性がデータ集合の分割を構成し、その分割によってクラスや決定属性といったデータのラベルと属性との関係について、近似とその質が測定されていく。その際、ラベルを上近似と下近似で押さえるということが、ラフ集合の特徴として上げられる。

花村嘉英 (2017)「ラフ集合でThomas Mannの「魔の山」を考える−テキストマイニングのトレーニング」より

ラフ集合からThomas Mannの「魔の山」を考える2

1 「計算文学入門」の概要

 本書は、タイトルにもあるように計算文学の入門編という位置づけである。計算文学は、人文科学と情報科学によるシナジー効果を探るための研究分野の一つと言える。しかし、闇雲に勉強したところで、マージなどできるはずがない。まず、スタートラインに立つために、ポイントとなる組み合わせを探る必要がある。周知のように、人間とコンピュータの間にロジックを立てることは標準となっており、「Thomas Mannはファジーネス」といった組み合わせを見つけることができれば、仮に既に亡くなってしまった作家の分析をコンピュータ上で行う場合でも、結合や比較といった単体的な処理ではなく、マージのための方向性を規定することができる。無論、言語系のロジックは、システム系と仕組みが異なるため緩衝材が必要となる。
Thomas MannのイロニーとZadehのファジー理論は、それぞれ次のように定義されている。

Baumgart(1964:22)によるThomas Mannの「イロニー」の定義。
”Als die Bedingung seines Prosas hält Thomas Mann immer die Distanz zur Wirklichkeit, einmal um sie so genau wie möglich zu betrachten, einmal sie zu kritisieren, das heißt ironisch. …Die kritische Distanz könnte zu einer ironischen Distanz werden. Tatsächlich ist der kritischen Prägnanz eine Art Grenze gesetzt, die aus der Beschaffenheit des sprachlichen Medium selbst dem Bedürfnis nach einer restlos präzisierten Begriffssprache entgegenwirkt.”
「Thomas Mannは、散文の条件として常に現実から距離をとる。一つには、現実をできるだけ正確に考察するために、また一つには、それを批判するために、つまり、イロニー的に。・・・この批判的な距離は、イロニー的な距離となるであろう。実際、批判的な表現上の簡潔さには、余すところなく正確に規定された概念言語の要求に対して、言語媒体そのものの特徴から反対の行動をとるある種の制限が設けられている。」

Yager et al(1987: 23)によるZadehの「ファジー理論」の定義。
”There is an incompatibility between precision and complexity. As the complexity of a system increases, our ability to make precise and yet non-trivial assertions about its behavior diminishes. For example, it is very difficult to prove a theorem about the behavior of an economic system that is of relevance to real-world economics.”
「正確さと複雑さは、両立が困難である。システムの複雑さが増すと、その振舞いについて正確ではっきりとした主張はできなくなってくる。例えば、現実の経済と関連したシステムの振舞いを推測することは、大変に難しい。」

 双方の定義間にあるギャップを埋めるために、言語系とシステム系の論理をつなぐ緩衝材として論理文法を使用する。(詳細については、「計算文学入門」の第2章「論理文法の基礎」を参照すること。) 論理文法は、小史を兼ねてHPSG(Head Driven Phrase Structure Grammar)、Montague Grammar、DRT(Discourse Representation Theory)、直感主義の論理などを経てファジー理論へと進んで行く。その際、Richard Montague による言語分析(PTQ)とThomas Mannの「魔の山」をマージすることにより、何か異質のもの(ここではファジー推論)を引き出せるかどうかがポイントとなる。つまり、Thomas Mannのイロニーを形式論によって記述する場合、ファジー推論を選択することが現状ではベストであるという結論を探っていく。
 「魔の山」からの分析は、上述したイロニー的な距離が問題となる。特に、主人公のHans CastorpとChaucha夫人との距離、さらに、ダボスの療養所に勤務する医者のDr. Krokowski(Behrens院長の助手)を仲介としたHans Castorpと甥のJoachim Ziemßen との距離が問題となっている。距離を測定するために、ファジー化、ファジー推論および脱ファジー化という技法が使われる。また、推論の基礎をなす記憶についても言及がある。(詳細については、「計算文学入門」の第3章「やさしい曖昧な数学」を参照すること。)

花村嘉英 (2017)「ラフ集合でThomas Mannの「魔の山」を考える−テキストマイニングのトレーニング」より

ラフ集合からThomas Mannの「魔の山」を考える1

0 はじめに

 Thomas Mann(1875−1955)の「魔の山」(Der Zauberberg)は、1924年、Fischer Verlagから出版され、評論、翻訳、テキスト言語学、映画といった主に文系の分野で研究がなされてきた。しかし、ここでは、この作品を計算文学というシナジーの領域で考察していく。出発点は、「計算文学入門」の中で説明したThomas Mannのイロニーとファジー推論の整合性の良さである。それをベースにスイスのダボスにあるサナトリウムの患者について表形式のデータを作成し、その一部を平易なラフ集合の概念に基づいて分析していく。「計算文学入門」は、記号論理を用いてThomas Mann のイロニーを分析しているが、 Zadeh自身がシステム系のファジー理論を言語系にアレンジしたように、本稿では、ラフ集合を言語系にアレンジしながらデータを処理していくため、テキストマイニングのトレーニングとしての位置づけもある。

花村嘉英 (2017)「ラフ集合でThomas Mannの「魔の山」を考える−テキストマイニングのトレーニング」より

2024年09月11日

花村嘉英 履歴書

氏名 花村 嘉英 (はなむら よしひさ)
生年月日 1961年5月12日(63歳)
住所 〒359‐1132 埼玉県所沢市松が丘2丁目22番地14号
電話/Fax 04-2921-1820
専門 比較言語・文学 (英語、ドイツ語、中国語、日本語)、文体論、計算文学(トーマス・マンとファジィ、魯迅とカオス、森鴎外と感情、ナディン・ゴーディマと意欲、川端康成と認知発達など)、健康科学、シナジー論(人文と情報、心理とメディカル、文化と栄養)、リスク社会学、翻訳学(ドイツ語)

【学歴】
●1977年4月 埼玉県立川越高等学校入学
●1980年3月 埼玉県立川越高等学校卒業
●1981年4月 立教大学文学部ドイツ文学科入学
●1985年3月 立教大学文学部ドイツ文学科卒業
●同年4月 立教大学大学院文学研究科博士前期課程ドイツ文学専攻入学
●1987年3月 立教大学大学院文学研究科博士前期課程ドイツ文学専攻修了
修士論文の題目: Anfangen、beginnen、aufhörenにおける様相因子の動きから生まれる文の曖昧性−モンタギュー文法による形式意味論からの考察
●同年8月 ドイツ・マンハイム大学の夏季語学講座参加
●1988年4月 立教大学大学院文学研究科博士後期課程ドイツ文学専攻入学
●1989年9月-1990年8月 ドイツ・チュービンゲン大学へ交換留学
●1993年3月 立教大学大学院文学研究科博士後期課程ドイツ文学専攻退学
●同年4月チュービンゲン大学大学院新文献学部博士課程ドイツ語学言語学意味論専攻入学
●1995年8月チュービンゲン大学大学院新文献学部博士課程ドイツ語学言語学意味論専攻博士論文提出後退学
博士論文の題目と内容: HPSG für Textanalyse – zur Ironie Thomas Manns 論理文法(モンタギュー文法からGPSG、HPSGまで)の小史ならびにトーマス・マンのイロニーとファジー理論の相性の良さを「魔の山」より考察。論理計算による計算文学とシナジー論の基礎をなす。(2005年5月に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか」と題して出版済 出版証明書付)

「学術関連表彰」
「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(2015)(華東理工大学出版社)
●栄誉証書  大連外国語大学(文献学)2017年3月、
●栄誉証書  南京農業大学(文献学)2017年3月、2017年5月
●捐赠証書(奨励)北京大学 2017年3月
●捐赠証書(奨励)北京外国語大学 2017年3月

【職歴】
「ビジネス翻訳・産業翻訳・著述業(学術): 技術文の校正と機械翻訳並びに特許明細書の和訳」
●1995年10月 博士論文の印刷に向けて電子データを作成する傍ら、技術文の翻訳の勉強を始める。
●1996年8月-1997年11月 ユニバーサルインターアド・コピーライティング部
翻訳のチェッカー、退社後、翻訳スクールに通う。(1998年2月まで)
●1998年3月-1999年9月 富士通ラーニングメディア翻訳事業部
英語の技術文の日本語訳をチェックしていた。富士通グループの製品+外資系企業のソフトウェアのマニュアル及び契約書を担当していたため、技術文特有の用語とか文体について日々勉強していた。工業英語3級合格。実用数学技能検定準2級合格、Fisdomも参照すること。
●Babel 修了講座名 ドイツ語翻訳家養成講座1999年3月、中日契約書翻訳講座2017年10月
ドイツ語の古典新訳のワークショップでゲーテの「イタリア紀行」を共訳し、電子出版した(2010年)。2000年以降は、共生を目指して他の企業の技術文の翻訳プロジェクトにも参加した。
●2003年4月-2004年9月 ソニー・ネットワークエンジニアリング事業部
技術者がプログラムを通して組み立てたソフトウェアの日本語の技術文を現場で英訳した。技術者の説明を反映するために、製品のマニュアルにある表現やIT用語辞典を例にして和文英訳のレポートを作成した。
●2004年10月-2009年2月 機械翻訳(SOHO)
翻訳ソフトTRADOSを使用してドイツ語と英語の技術文をメモリーベースで和訳した。(1日に1500ワード翻訳)対応言語は、独日、英日で、分野は、ソフトウェア、汎用機械および特許である。レポート作成済み(「産業日本語の学習法とその応用例」)また、トーマス・マンとファジィ理論に関しても文理シナジー学会で発表し、2005年5月に「計算文学入門−トーマス・マンのイロニーはファジィ推論といえるのか?」を出版した。私にとって翻訳作業は、文理共生の下支えである。
●エイブス・メディカル翻訳修了講座 英和入門2014年5月、英和初級2015年9月、英和上級2016年2月
●2016年3月- 2021年10月 独日特許翻訳(SOHO)
バイオ、医療機器、技術関連(特許デイタセンター及び協和テクノサービス、翻訳エディタ使用)
●2020年11月- 2022年4月 「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファ―の原点を探る」の校正。
●2022年9月- 2023年5月 「小説をシナジーで読む−魯迅から莫言へ シナジーのメタファ―のために」の校正。
●2023年8月- 2024年2月「小説をシナジーで読む−森鴎外から川端康成へ データベースと病跡学に備えて」の校正。
●2024年4月- 2024年8月 「私の病跡学−作家の執筆脳を比較と共生で考える」の校正。

「日本語専門家: 教授法」
●2009年3月-2011年1月 武漢科技大学外語外事職業学院外国語学部日本語科
1年生と2年生の日本語会話を担当した。教材は、「みんなの日本語」と「日本語会話技巧編」等である。共にクラスを通して会話の場面のイメージ作りを試みた。例えば、基礎レベルでは日本語能力試験を模して質問文を読む間に音声から漢字を連想するトレーニングをした。学生が漢字系の学習者ためである。技巧編ではロールカードを使用してペアワークによる場面のイメージ作りを試みた。内容は、学内の研究発表会で説明済。
●2011年2月-2012年1月 集美大学外国語学部日本語科
3年生を対象に日本語の作文と中日翻訳の演習を担当した。教材は、それぞれ「实用日语写作教程」と「汉译日精教程」である。また、2年生の日本概況と1年生の日本語会話も担当した。内容については、「中日翻訳の高速化」と題して延辺大学の中日韓朝比較言語文学の学会で発表した。
●2012年2月-2013年1月 天津外国語大学外国語学部日本語科
3年生を対象に日本語の作文と新聞購読の演習を担当した。教材は「实用日语写作教程」と「構成/特徴/分野から学ぶ新聞の読解」である。作文では添削指導をし、新聞購読では教材終了後、直近の日本の新聞記事を使用して要約のトレーニングも試みた。内容については、国際日本語教育研究大会(名古屋大学)で発表済。
●2013年9月-2014年1月 湖南科技学院外国語学部日本語科
3年生は「日本語総合教程第5冊」のクラスを、4年生は金田一春彦著「日本語上下」を用いて日本語学の講義を担当した。インフルエンザのため帰国。休暇中に森鴎外の「山椒大夫」を題材にしてデータベースを作成した。また、在任中、四川外国語大学の国際シンポジウムで「魯迅とカオス」について研究発表をした。
●2014年9月- 2015年1月 武昌理工学院国際教育学院
文法外国語学部の日本語科の1、3、4年生のクラスを担当。例えば、4年生の「視听说」のクラスではDVDを使用しながら総合的な日本語のトレーニングを試みた。また、中日教学研究会江蘇分会で森鴎外の「山椒大夫」のデータベースについて発表した。(2014年11月)
●2015年3月-2016年1月 寧波大红鹰学院人文学部日本語科
3年生はビジネス日本語と中日通訳のための日本語のシャドウィング及び作文のクラス、4年生は日本の経済学入門を担当。1、2年生は日本語会話の上下巻を担当した。また、在任中に中日対照言語学研究会(上海外国語大学)で「技術日本語の学習法とその応用例」と題して研究発表をし、華東理工大学出版社から著作「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」を出版した。(2015年11月)
●2016年9月-2017年6月 盐城工学院外国語学部日本語科
4年生は視听说、3年生は日本概況、日本文学史、新聞雑誌購読、作文、2年生は中級日本語听力を担当した。また、上海の同済大学で開催された中日教学研究会上海分会で「シナジーのメタファーの作り方」と題して研究発表をし、南京東南大学出版社から著作「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで」を出版した。(2017年6月)
●2018年3月-2019年1月 大連交通大学外国語学部日本語学科
3年生は日本語の基礎作文とビジネスメールの書き方に関する演習を、2年生は中級日本語会話を担当した。また、上海の同済大学で開催された中日教学研究会上海分会で「川端康成の『雪国』から見えてくるシナジーのメタファーとは」と題して研究発表をした。

「取得した主な資格」
●日本成人病予防協会(JAPA)健康管理士一般指導員認定2015年3月、健康管理能力検定1級取得 2015年3月、健康管理士ゴールド認定 2017年4月、健康管理士上級指導員認定 2020年3月、健康管理士統括指導員認定 2023年10月
●予防医学・代替医療振興協会修了講座 予防医学指導士 2015年12月、代替医療カウンセラー 2016年4月、認知症ケアカウンセラー 2016年12月
●Babel 中日契約書翻訳講座修了 2017年10月
●フードデリバリー 熱中症対策アドバイザー認定 2018年7月
●ソラスト修了講座 医師事務作業補助者(ドクターズオフィスワークアシスト)養成講座 2018年10月、医療事務講座クリニックコース 2019年3月
●技能認定振興協会(JSMA)医師事務作業補助者検定試験合格 2019年4年
●埼玉西武消防組合 甲種防火管理新規講習修了 2019年5月
●日本学術振興会 研究倫理eラーニング 「事例で「学ぶ/考える」研究倫理 誠実な科学者の心得」修了 2019年8月
●日本癌治療学会 Cancer eラーニング 104講座修了 受講証明書有 2019年8月
●ICR臨床研究入門修了講座 臨床研究の基礎知識講座、倫理審査委員会向けの倫理研修、臨床研究のデータベースマネージメント、再生医療研究のインフォームド・コンセント、臨床研究法 2019年8月
●Fisdom修了講座 10進法を2進法に変換、暗号化、パリティチェック、情報リテラシー Office2016、統計学入門、Python入門、学校における無線ネットワークの作り方、安全学入門、インターネットセキュリティ、情報法 2019年10月
●JTEX修了講座 製薬・医薬品の基礎 2019年10月、知的財産権入門 2019年12月
●東京女子医科大学 教育・支援プログラム 100講座修了 2020年2月
●動脈硬化予防啓発セミナー eラーニング 55講座修了 2020年5月
●INPIT 工業所有権研修・情報館 eラーニング 20講座受講済 2020年5月
●日本能力開発推進協会 マインドフルネススペシャリスト検定試験合格 2020年10月、上級心理カウンセラー検定試験合格2021年7月、行動心理士検定試験合格 2023年1月
●医療情報処理学会医療情報技師育成部会 eラーニング受講講座 医療情報基礎用語集、個人情報保護法の影響、医療統計セミナーB 2024年9月現在
●Gacco修了講座 セキュリティ・プライバシ・法令、公衆無線LANセキュリティ対策、SDGs(持続可能な開発目標)入門 、Memento Moriー死を想う、大学生のためのデータサイエンス、社会人のためのデータサイエンス 、多変量データ解析法 、統計学−データ分析の基礎、誰でも使えるオープンデータ、進化発生学入門、心理学スパイラルアップ、推論・知識処理・自然言語処理、クラウド基盤構築演習、アーキテクチャ・品質エンジニアリング、スマートIoTシステム・ビジネス入門、IoTとシステムズアプローチ、クラウドサービス・分散システム、センサ、機械学習、深層学習、社会の中のAI、ビジネスフィールドでのAI・データ活用スキル、がんゲノム医療オンライン講座2020 2024年9月現在

「所属協会及び研究会」
●日本成人病予防協会 
https://fanblogs.jp/hanamura4/ 研究一覧

【連絡先】
電話 04-2921-1820、メール hanamura36@gmail.com

フォーマットのシフト18ーモンターギュ文法のシュガーリング

 照応表現の指示は、その表現が現れる文脈内で一意に規定されなけれ ばならない。そこでRanta(1991)は、代名詞を擬似的に範疇化される表現と見なし、照応の依存領域に関する生成方法を問題にした。文脈内で形成される命題は、変項が文脈において自由に出現することを認めている。つまり、タイプ理論と同様に命題の力によって、さらに命題を形成するために、照応の依存関係や前提が所与の命題の真理値を予め仮定することができると考えている。
 文は、命題ではなく形式の判断である。個々の命題は、先行する文脈に依存し、テキストは、形式の文脈として表現される。その際、文に対する証明は、一般的に定項ではなく、変項として生成される。直感主義論理は、テキストのダイナミズムを処理するためにこのような方法を採用している。

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より

フォーマットのシフト17ーモンターギュ文法のシュガーリング

 直感主義論理に基づいた簡単なドイツ語の文法を考察する。レキシコンは、基本表現に範疇を割り当てていく。範疇文法は、直感主義のタイプ理論を形式化する規則である。そしてシュガーリングの規則は、形式化された表現がドイツ語として認知される語彙の連鎖を返す。
 Ranta (1991)の文法とMontague文法の違いは、前者がシュガーリングと意味の説明の基礎となる表現を形式化しているにすぎない点である。Montague文法は、@基本表現を分析榭に結合させ、A分析樹を単純な文にシュガーリングするといった二重構造になっている。
 レキシコンを考察しよう。普通名詞、固有名詞、動詞および形容詞が範疇化される。語彙登録は、シュガーリングのパターン(N0、V1、A1)を示している。レキシコンを持つことによって、名詞の集合や動詞の関数が定義され、上述した煤A∏、pair、λ、p、q、apといった演算子もそこに含まれる。さらに、SとNという演算子が導入される。これらは、タイプ理論の命題表現を変数として取り、文章と名詞を返す。

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より

フォーマットのシフト16ーモンターギュ文法のシュガーリング

 ここでは、直感主義論理に基づいた簡単なドイツ語の文法を導入する。直感主義は、論理の系統の中で様相論理などと共に多値論理のグループに属し、やはり量化の表現に真理値を割り当てる上で古典的な二値論理では不十分であるという立場を取る。また、直感主義を用いた自然言語に関する証明は、コンピュータのプログラムにも通じる方法であり、Ranta (1991)は、MontagueのPTQを土台にした英語の断片を提示している。ここで導入するドイツ語の文法は、レキシコン、範疇文法そしてシュガーリングを構成要素にする。
 まず前提として、テキストのダイナミズムを直接反映するために、Ranta (1991)は、Matin-Löf (1982)のタイプ理論を取り入れた。Matin-Löfの動機は、統語論と意味論を数学によって明確にするという立場から、 直感主義の数学とプログラミング間をつなぐために(例えば、argument とinput、valueとoutput、x=eとx:=e、関数の合成とS1;S2、条件の定義とif B then S1 else S2、回帰の定義とwhile B do Sなど)、直感主義のタイプ理論を考案した。(Matin-Löf 1982)
 直感主義のタイプ理論は、命題の表現を持っている。まず複合命題を考えてみよう。(66)は、領域Aの中で解釈される述語計算の(ヨx)と(∀x) に相応する。但し、タイプ理論が述語計算に比べてより形式的になっている点に違いがある。それは、タイプ理論が、命題や判断(または主張)を明確にするためである。命題は、判断の一部であるが、その逆となる ことはない。ここでは、A: propは、命題Aが適格な式であるという判断を意味している。a: Aは、Aが真であるという判断である。つまり、aはAの証明になる。こうした判断は、 例えば、疑問文などに生じることがある。
 演算子狽ニ∏は、ドイツ語の文章を形式化する場合、述語計算の(ヨx) や(∀x)と同じ方法で使用される。つまり、直感主義タイプの理論の量化表現を含む命題をドイツ語の文章へシュガーリングする規則と原子的な命題のシュガーリングの規則により、Ein Mann keucht. が派生することになる。
 しかし、自然言語を処理するためにタイプ理論をさらに豊かにする必要がある。一般化された関数のタイプ(x:α)ßの中で判断ができるようにした。判断は、変項に対するタイプ割り当ての中で行われる。そして、仮定の連鎖は、文脈(x1: α1,…, xn:αn )になる。例えば、判断Jが文脈の中で実行される場合、変項x1,…, xnは、自由にJの中に現れることになる。また、判断Jが文脈の中で行われ、定項も(a1: α1,…,an:αn(a1,…, an-1/x1,…, xn-1)が変項x1,…, xnと置換される場合、判断が文脈に依存することはない。 

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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