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2019年07月08日
家族の木 THE THIRD STORY 純一と絵梨 <3 恋心>
恋心
僕は運よく大阪に本社のある会計事務所に就職した。会計事務所としては大手だったし僕が得意な海外法人の会計も多く扱っていた。意外なことに給料も思っていたよりも多くて助かった。いい年をして親がかりで生活していた僕にはありがたいことだった。
僕の大阪生活は快適だった。僕が祖母の家に暮らすようになってから叔父夫婦も祖母の家によく来るようになった。叔父は僕の父の弟だ。祖母は再婚で僕の父は祖母の連れ子だ。結局、僕の父が東京の田原家に養子に入って姉と僕が生まれた。
叔父夫婦は僕にとても親切だった。そして僕の縁談に熱心だった。就職して1年そこそこで結婚を考えるのは面倒だった。それにどうしても姉のことが頭から離れなかった。できることなら結婚に縛られたくなかった。
姉のことが本当に好きだった。物心ついたときには、いつも姉が僕のそばにいた。姉がいると安心できた。ところが、中学生になったころから姉がそばに来ると気分が落ち着かなくなった。じりじりする感じだった。こういう気持ちが恋心だと気が付いたのは高校に入ってからだった。
恋は同級生や知り合いのお姉さんにするものだと思っていた。まさか自分の姉に恋心を持つとは夢にも思っていなかった。それは、いけない恋、実らない恋だということは分かっていた。
姉は僕より4歳年上だ。僕が中学生のころには、もう大学生だった。女性として、ますます美しくなる時期だ。
朝、姉が起きてくる時のパジャマ姿をみて恐ろしく動揺した。下着をつけていない胸が揺れていた。無防備に近づいてくる姉に当惑した。何かといえば、顔を近づけてきて僕の頬や鼻をつまんだ。ずっと昔からそうだった。子供の時には、姉に触られるのが大好きだった。頬を合わせて写真を撮っていた。おでこを合わせた写真もある。
姉はずっと変わらなかった。変わったのは僕だった。姉に近づくのが怖くなっていた。胸や唇を触ってしまわないかと不安だった。抱きしめたい気持ちや、首元にむしゃぶりつきたい気持ちを抑えるのに必死だった。僕の思春期は性欲との戦いだった。
姉が初デートから帰ってきた日、浮かれてはしゃいでいた。僕は、そのころまだ嫉妬心という物を知らなかったが、その時のイライラした気分は今も忘れない。姉が男子学生と飲みに行った、バーベキューをしたという話を聞くたびにイライラが止まらなくなった。
「やるせない」という言葉を知ったのは大人になってからだった。今もずっとやるせない思いをひきずっていた。
家に居なくても済むように飲食店やコンビニでアルバイトをした。一番最初の経験はアルバイト先の女経営者だった。小遣いをくれたし何よりも長居させてくれることがありがたかった。家には寝に帰った。
最初の経験が年上の女だったからかもしれないが、その後も年上の女との関係が絶えることがなかった。僕はいつの間にか女癖の悪いスれた悪ガキになっていた。性欲のはけ口が解決したと思ったら今度は自己嫌悪との戦いだった。いつも、ふてくされていた。
特に姉にはつらく当たった。姉は毎年ささやかな誕生日プレゼントをくれた。必ず翌日には、それよりも高価なものを身に着けて姉に見せつけた。姉は、時々悲しそうな辛そうな顔をした。母も嫌な顔をした。それでも勉強ができた。文句を言われようものなら屁理屈でねじ伏せた。
続く
僕は運よく大阪に本社のある会計事務所に就職した。会計事務所としては大手だったし僕が得意な海外法人の会計も多く扱っていた。意外なことに給料も思っていたよりも多くて助かった。いい年をして親がかりで生活していた僕にはありがたいことだった。
僕の大阪生活は快適だった。僕が祖母の家に暮らすようになってから叔父夫婦も祖母の家によく来るようになった。叔父は僕の父の弟だ。祖母は再婚で僕の父は祖母の連れ子だ。結局、僕の父が東京の田原家に養子に入って姉と僕が生まれた。
叔父夫婦は僕にとても親切だった。そして僕の縁談に熱心だった。就職して1年そこそこで結婚を考えるのは面倒だった。それにどうしても姉のことが頭から離れなかった。できることなら結婚に縛られたくなかった。
姉のことが本当に好きだった。物心ついたときには、いつも姉が僕のそばにいた。姉がいると安心できた。ところが、中学生になったころから姉がそばに来ると気分が落ち着かなくなった。じりじりする感じだった。こういう気持ちが恋心だと気が付いたのは高校に入ってからだった。
恋は同級生や知り合いのお姉さんにするものだと思っていた。まさか自分の姉に恋心を持つとは夢にも思っていなかった。それは、いけない恋、実らない恋だということは分かっていた。
姉は僕より4歳年上だ。僕が中学生のころには、もう大学生だった。女性として、ますます美しくなる時期だ。
朝、姉が起きてくる時のパジャマ姿をみて恐ろしく動揺した。下着をつけていない胸が揺れていた。無防備に近づいてくる姉に当惑した。何かといえば、顔を近づけてきて僕の頬や鼻をつまんだ。ずっと昔からそうだった。子供の時には、姉に触られるのが大好きだった。頬を合わせて写真を撮っていた。おでこを合わせた写真もある。
姉はずっと変わらなかった。変わったのは僕だった。姉に近づくのが怖くなっていた。胸や唇を触ってしまわないかと不安だった。抱きしめたい気持ちや、首元にむしゃぶりつきたい気持ちを抑えるのに必死だった。僕の思春期は性欲との戦いだった。
姉が初デートから帰ってきた日、浮かれてはしゃいでいた。僕は、そのころまだ嫉妬心という物を知らなかったが、その時のイライラした気分は今も忘れない。姉が男子学生と飲みに行った、バーベキューをしたという話を聞くたびにイライラが止まらなくなった。
「やるせない」という言葉を知ったのは大人になってからだった。今もずっとやるせない思いをひきずっていた。
家に居なくても済むように飲食店やコンビニでアルバイトをした。一番最初の経験はアルバイト先の女経営者だった。小遣いをくれたし何よりも長居させてくれることがありがたかった。家には寝に帰った。
最初の経験が年上の女だったからかもしれないが、その後も年上の女との関係が絶えることがなかった。僕はいつの間にか女癖の悪いスれた悪ガキになっていた。性欲のはけ口が解決したと思ったら今度は自己嫌悪との戦いだった。いつも、ふてくされていた。
特に姉にはつらく当たった。姉は毎年ささやかな誕生日プレゼントをくれた。必ず翌日には、それよりも高価なものを身に着けて姉に見せつけた。姉は、時々悲しそうな辛そうな顔をした。母も嫌な顔をした。それでも勉強ができた。文句を言われようものなら屁理屈でねじ伏せた。
続く