ケンガンオメガ
第58話 一番手
加納アギトとの試合を避ける為に
一番手として試合に出場しようとする弓ヶ浜ヒカルを
小柄な筋肉質の男が腕を伸ばして制止する。
その直後、弓ヶ浜の鼻から血が溢れ出る。
カーロスと呼ばれた男が語るには
彼のダチであるホセ神崎を必要以上に痛めつけた分を
その鼻血でチャラにしてやるとのこと。
鼻へのカーロスの打撃は速すぎて、
鼻血が出るまで弓ヶ浜は反応できなかった様だ。
「ボスサーにはボクサー」だ。
ガオランは俺がやる。
黄金帝 カーロス・メデルの登場である。
ボクサーでホセやカーロスと聞くと
あしたのジョーに登場するキャラクターの、
ライバルであるベネズエラの無冠の帝王、カーロス・リベラや、
ラスボスであるバンタム級世界チャンピオン、ホセ・メンドーサを連想する。
ちなみに、ホセ神崎は、前々作である求道の拳にも登場した、
プロレスラーのキャラクターである。
第59話 黄金帝伝説
タイの闘神
ガオラン・ウォンサワット 187cm91kg
vs
黄金帝
カーロス・メデル 175cm53kg
「ボクサー同士、拳でコミュニケーションと洒落込もうぜ。」
「俺は今、伝説と対峙している。」
14年前、アカブルコの伊達男と呼ばれたカーロス・メデルが
ボクシング主要四団体 ミドル級 四冠を達成。
彼の身長は175センチでミドル級では平均を下回る小兵らしい。
この偉業が黄金帝伝説の始まりだったという。
ボクサーで伊達と聞くと『はじめの一歩』の伊達英二を連想する。
伊達英二は、元WBA世界フェザー級1位で、
元日本・OPBF東洋太平洋フェザー級チャンピオン。
紳士的な大人の雰囲気と、チャンピオンでありながら
ボクシング界を離れていたという点がカーロス・メデルと共通する。
メデルは戴冠直後、ベルトを返上し、スーパーミドル級への転向を表明。
このスーパーミドル級を難なく制覇し、
さらに上のライトヘヴィー級、クルーザー級、そしてヘヴィー級と
階級を制覇しては転向を繰り返していた。
階級を上げるごとに、肉体を一から作り直した結果、
カーロス・メデルは、もはやミドル級の頃とは別人と化していた。
そして、ついに四大団体ヘヴィー級王者の一角を落とした。
だがメデルの快進撃はそこまでだった。
名乗りを上げる対戦相手がいなくなってしまったのだ。
速水正樹が語るには、
選手の意向ではどうにもならない思惑が付き物のプロスポーツでは
メデルのように強過ぎる選手は扱いに困るとのこと。
他団体のヘヴィー級チャンプ達さえ統一戦には難色を示していたらしいと
若槻武士が付け足す。
当時、所属ジムが契約していたプロモーターが
極めて評判の悪い人物だったこともあり、
メデルの試合は一向に決まらなかった。
一時期はプロレスに転向と噂され、
日本の格闘技興業に参戦するという話もあったが、
いずれも実現には至らず、メデルは表から姿を消したという。
若槻はメデルが裏格闘技に参戦しているとは聞いていたが、
その裏格闘技とは煉獄のことだったのだ。
メデルの強過ぎる孤独に黒木玄斎を重ねる前作主人公の十鬼蛇王馬。
メデルは本当に黒木並の闘技者なのだろうか。
あしたのジョーで、対戦相手を次々と再起不能にしてしまい、
対戦相手が見つからなくなってしまう主人公の矢吹丈に共通するものがある。
また、人気のプレイ動画の多いPS2のゲームソフト「はじめの一歩2」において、
やり込みで全階級を制覇しようとしても、対戦相手が見つからなくなり、
対戦自体が出来ない状況に陥ってしまうという点が共通する。
はじめの一歩の原作でもブライアン・ホークが
鷹村守の減量する期間に余裕のない日付にしか試合を受け付けなかったり、
あしたのジョーのホセ・メンドーサがカーロス・リベラとの試合を
なかなか承諾しなかった背景がある等、
ボクシングを題材とした作品では定番の展開なのかもしれない。
ガオランがムエタイからボクシングに移籍してきたのは、
自身が一線を退いた後なので惜しいことをしたと語るメデル。
生きる伝説、カーロス・メデル、
もし、「環境」に恵まれていたならば、
史上初のヘヴィー級四冠王は、この男だったはずで、
古今東西、唯一、自分より格上に位置する存在だが、
相見えることは適わぬと思っていた為、
この対戦は願ってもない好機だとガオランは思考を巡らす。
ミドル級からヘヴィー級に掛けての五階級制覇した伝説の男、
ミドル級に至っては四団体王者という快挙だが、
メデルがガオランより評価が高いのは
不遇なキャリア後半のおかげであり「幻想」だと大久保直哉は意見する。
メデルを知らない臥王龍鬼は皆詳しいんだねと言うが
格闘技をやってる人間なら大概、メデルを知っており、
メデルの母国メキシコでは神のような存在なのだと速水正樹が補足する。
メデルを知らない男が、もう一人、
気になることがあると挙手をする徳尾徳道、
その問い掛けに、体重だろ?と相槌を打つ王馬。
二徳が王馬に意見を訊くと、表のことは、よく知らないが、
ヘヴィー級といえば、どの格闘技でも90キロぐらいからなのに、
今のメデルは見たところ54キロか53キロしかないと言う。
限界まで身体を絞って、汗の一滴も出なそうな状態で、
まともに闘えるのか、と疑問を抱く理人。
「何があった?」
今のメデルの目方は、せいぜいバンタム級程度、
その痩身で本気で自分と闘うつもりなのかと疑念を抱くが、
ボクシングで相対することが適わなかった男と
拳を交えることが出来る僥倖なのだから、
どんな状態であろうと全力で応えるまで、と思いなおすガオラン。
限界まで身体を絞ったバンタム級のボクサーといえば、
やはり、あしたのジョーの矢吹丈や力石徹を連想する。
この二人もまた、メデルと同じく「伝説の男」と言えるのではないだろうか。
煉獄レフェリーの椎名ありさの最終確認が行われる。
メデルは典型的なファイタータイプなので間合いに入れないと
ガオランは作戦を立てる。
開戦直後、ガオランの得意のフリッカージャブの高速連打「フラッシュ」が炸裂する。
しかしガオランの攻撃は全てメデルの体を擦り抜け、
実況の片原鞘香と解説のジェリー・タイソンを驚愕とさせる。
この光景を過去に見たことがあるとジェリー・タイソンが騒ぐ。
「気の起こり」を読み、攻撃前に回避したと分析、
メデルも「あの域」に到達しているのかと、
黒木玄斎との闘いを連想する加納アギト。
「高速のジャブ「フラッシュ」聞きしに勝る速さだな。
まさに光だ。」
ガオランを称えるカーロス・メデル。しかし・・・
ボドボドボドと鼻血を垂らし驚愕するガオラン。
「残念。俺は、光より速いぜ。」
そう豪語するカーロス・メデル。
拳願絶命トーナメントの参加者で最強の闘技者だった
黒木玄斎並みと評されるカーロス・メデルに、
ガオラン・ウォンサワットは打ち勝つ事が出来るのだろうか?
続きが楽しみだ。
今後の展開を予想するならば、
・攻撃前に回避する金田末吉との対戦経験が活きてくる。
・やはり38kgの体重差が響いてくる。
といったところだろうか。
【このカテゴリーの最新記事】
-
no image
-
no image
-
no image