2018年05月17日
自己責任 【呪われた怖い話】
予めお断りしておきます。
この話を読まれたことで、
その後に何が起きても保証致しかねます。
自己責任のもとでお読み下さい。
今から5年前、私は中学生だった頃に、
一人の友達を亡くしました。
表向きの原因は精神病でしたが、
実際はある奴等に憑依されたからです。
私にとっては忘れてしまいたい記憶の一つですが、
先日、古い友人と話す機会があり、
あの時のことをまざまざと思い出してしまいました。
文章にすることで少し客観的になれ、
恐怖を忘れられると思いますので、ここに綴ります。
私たち(A・B・C・D・私)は皆、家業を継ぐことになっていて、
高校受験組を横目に暇を持て余していました。
学校側も、私たちがサボったりするのは
受験組の邪魔にならなくていい、と考えていたようで、
体育祭が終わった以降は朝学校に出て来さえすれば、
抜け出しても滅多に怒られることはありませんでした。
ある日、
AとBが近所の屋敷の話を聞いてきました。
改築したばかりの家なのに、持ち主が首を吊って自殺し、
一家は離散。
今は空き家になっているというのです。
サボった後のたまり場の確保に苦労していた私たちは、
そこなら酒やタバコが思う存分できると考え、
翌日すぐに昼から学校を抜けて行きました。
外から様子のわからないような、とても立派なお屋敷で、
こんなところに入っていいのか、少しビビりましたが、
AとBの二人は「大丈夫!」を連発しながら、
どんどん中に入って行きます。
既に調べを付けていたのか、勝手口が開いていました。
書斎のようなところに入り、窓から顔を出さないようにして、
コソコソと酒盛りを始めました。
でも、大声が出せないのですぐに飽きてきて、
5人で家捜しを始めました。
すぐにCが「あれ何や」と、
今いる部屋の壁の上の方を指差しました。
壁の上部に、学校の音楽室や体育館でよく見る、
放送室のような感じの小さな窓が二つ付いているのです。
「こっちも部屋か」
よく見ると、壁のこちら側にはドアがあるが、
本棚で塞がれていました。
肩車をすると、左上の方の窓は手で開きました。
今思うと、
その窓から若干悪臭が漂っていることに、
その時は疑問を持つべきでした。
それでもその時の、
こっそり酒を飲みたいという願望には勝てず、
無理矢理に窓から部屋に入りました。
部屋にはカビやホコリと、
饐えたような臭いが漂っています。
雨漏りしているのか、じめっとしていました。
部屋は音楽室と言えるようなものではありませんでしたが、
壁には手作りで防音材のようなものが貼ってあり、
その上から壁紙が貼られていることはわかりました。
湿気で壁紙はカピカピになっていました。
部屋の中はとりたてて調度品もなく、質素な作りでしたが、
小さな机が隅に置かれており、
その上に真っ黒に塗りつぶされた写真が、
大きな枠の写真入れに入ってました。
「なんやこれ、気持ち悪い」
と言って、
Aが写真入れを手に取り、持ち上げた瞬間、
額裏から一枚の紙が落ち、その中から束になった髪の毛が
バサバサと出てきました。
紙は御札でした。
みんな、ヤバイと思って、声も出せませんでした。
顔面蒼白のAを見て、
Bが「急いで出よう」と言いながら
逃げるように窓によじ登った時、
そっち側の壁紙全部がフワッと剥がれました。
写真の裏から出てきたものと同じ御札が、
壁一面に貼ってありました。
「何やこれ・・・」
酒に弱いCはその場でウッと、反吐しそうになりました。
「やばいてやばいて」
「吐いてる場合か急げ」
よじ登るBの尻を、私とDでグイグイ押し上げました。
何がなんだか、訳がわかりませんでした。
後ろでは誰かが、
「いーーー、いーーー」
と声を出しています。
きっとAです。祟られたのです。
恐ろしくて振り返ることも出来ませんでした。
無我夢中でよじ登って、反対側の部屋に飛び降りました。
Dも出てきて、部屋側から鈍いCを引っ張り出そうとすると、
「イタッイタッ」
Cが叫びました。
「引っ張んな足!」
部屋の向こうでは、
Aらしき声がワンワン変な音で呻いています。
Cは余程すごい勢いでもがいているのか、
足でこっちの壁を蹴る音がずんずんしました。
「B!かんぬっさん連れて来い!」
後ろ向きにDが叫びました。
「なんかAに憑いとる!
裏行って神社のかんぬっさん連れて来いて!」
Bが縁側から裸足でダッシュしていき、
私たちは窓からCを引き抜きました。
「足!足!」
「痛いか?」
「痛うはないけど、なんか噛まれた」
見ると、
Cの靴下のかかとの部分は
丸ごと何かに食いつかれたように、
丸く歯形が付いて唾液で濡れています。
相変わらず中からはAの声がしますが、
怖くて私たちは窓から中を見ることが出来ませんでした。
「あいつ、俺に祟らんかなぁ」
「祟るてなんや!Aはまだ生きとるんぞ!」
「出てくる時、めちゃくちゃ蹴ってきた・・・」
『しらー!』
縁側からトレーナー姿の神主さんが、
真っ青な顔して入って来ました。
「ぬしら何か!何しよるんか!馬鹿者が!」
一緒に入って来たBはもう、
涙と鼻水でぐじょぐじょの顔になっていました。
「ええからお前らは帰れ。
こっちから出て、神社の裏から社務所入って
ヨリエさんに見てもらえ。あと、おい!」
と、いきなり私を捕まえ、
後ろ手にひねり上げられました。
後ろで何か『ザキッ』と音がしました。
「よし、行け!」
そのままドンと背中を押されて、
私たちは訳のわからないまま走りました。
それから裏の山に上がって神社の社務所に行くと、
中年の小さいおばさんが、白い服を着て待っていました。
めちゃめちゃ怒られたような気もしますが、
それから後は、逃げた安堵感でよく覚えていません。
次の日から、Aが学校に来なくなりました。
私の家の親が神社から呼ばれたことも何回かありましたが、
詳しい話は何もしてくれませんでした。
ただ、山の裏には絶対行くな、とは言われました。
私たちも、あんな恐ろしい目に遭ったので、
山など行くはずもなく、学校の中でも、
小さくなって過ごしていました。
期末試験が終わった日、
生活指導の先生から呼ばれました。
今までの積み重ねをまとめて大目玉かな、
殴られるなと覚悟して進路室に行くと、
私の他にもBとDが座っています。
神主さんも来ていました。
生活指導の先生などいません。
私が入ってくるなり、神主さんが言いました。
「あんなぁ、Cが死んだんよ」
信じられませんでした。
Cが昨日学校に来ていなかったことも、その時に知りました。
「学校さぼって、こっちに括っとるAの様子を
見に来よったんよ。
病院の見舞いじゃないとやけん、
危ないってわかりそうなもんやけどね。
裏の格子から座敷のぞいた瞬間に、
ものすごい声出して倒れよった。
駆けつけた時には白目むいて、虫の息だった」
Cが死んだのに、そんな言い方ないだろうと思って、
ちょっと口答えしそうになりましたが、
神主さんは真剣な目で、私たちの方を見ていました。
「ええか、Aはもうおらんと思え。
Cのことも絶対今から忘れろ。
アレは目が見えんけん。
自分の事を知らん奴のところには憑きには来ん。
アレのことを覚えとる奴がおったら、
何年かかってもアレはそいつのところに来る。
来たら憑かれて死ぬんぞ。
それと、後ろ髪は伸ばすなよ。
もしアレに会って逃げた時、
アレは最初に髪を引っ張るけんな」
それだけ聞かされると、
私たちは重い気持ちで進路室を出ました。
あの時、神主さんは私の伸ばしていた
後ろ毛をハサミで切ったのです。
何かのまじない程度に思っていましたが、
まじないどころではありませんでした。
帰るその足で床屋に行き、丸坊主にしてもらいました。
卒業して家業を継ぐという話は、
その時から諦めなければいけませんでした。
その後、
私たちはバラバラの県で進路につき、
絶対に顔を合わせないようにしよう、
もし会っても他人のふりをすることに
しなければなりませんでした。
私は1年遅れて隣県の高校に入ることができ、
過去を忘れて自分の生活に没頭しました。
髪は短く刈りました。
しかし、
床屋で「坊主」を頼むたび、
私は神主さんの話を思い出していました。
今日来るか、明日来るかと思いながら、
長い3年が過ぎました。
その後、さらに浪人して、
他県の大学に入ることが出来ました。
しかし、
少し気を許して盆に帰省したのがいけませんでした。
もともと私はお爺ちゃん子で、
祖父はその年の正月に亡くなっていました。
急のことだったのですが、
せめて初盆くらいは帰って来んかと、
電話で両親も言っていました。
それがいけませんでした。
駅の売店で新聞を買おうと寄ったのですが、
中学時代の彼女が売り子でした。
彼女は、私を見るなりボロボロと泣き出して、
BとDがそれぞれ死んだことを捲くし立てました。
Bは卒業後まもなく、
下宿の自室に閉じこもって首を括ったそうです。
部屋は雨戸とカーテンが閉められ、
部屋中の扉という扉を封印し、
さらに自分の髪の毛をその上から一本一本、
几帳面に貼り付けていたということでした。
鑞(金属用のロウ)で
自分の耳と瞼に封をしようとした痕があったが、
最後までそれをやらずに自害したという話でした。
Dは、17の夏に四国まで逃げたそうですが、
松山の近郊の町で、パンツ一枚でケタケタ笑いながら
歩いているのを見つかったそうです。
Dの後頭部は烏がむしったように、
髪の毛が抜かれていました。
Dの瞼は閉じるのではなく、絶対に閉じないようにと、
自らナイフで切り取ろうとした痕があったそうです。
この時ほど中学時代の人間関係を呪ったことはありません。
BとDの末路など、今の私にはどうでもいい話でした。
つまり、
アレを覚えているのは私一人しか残っていない、
と気づかされてしまったのです。
胸が強く締め付けられるような感覚で家に帰り着くと、
誰もいませんでした。
後で知ったことですが、
私の地方は忌廻しと云って、特に強い忌み事のあった家は、
本家であっても初盆を奈良の寺で行うという
風習があったのです。
私は連れて来られたのでした。
それから3日、私は39度以上の熱が続き、
実家で寝込まなければなりませんでした。
この時、私は死を覚悟しました。
仏間に布団を敷き、なるだけ白い服を着て、
水を飲みながら寝ていました。
3日目の夜明けの晩、夢にAが立ちました。
Aは骨と皮の姿になり、黒ずんでいて白目でした。
「お前一人やな」
「うん」
「お前もこっち来てくれよ」
「いやじゃ」
「Cが会いたがっとるぞ」
「いやじゃ」
「おまえ来んと、Cは毎日リンチじゃ。
逆さ吊りで口に靴下詰めて蹴り上げられよるぞ。
かわいそうやろ」
「うそつけ。地獄がそんな甘いわけないやろ」
「ははは、地獄か、地獄ちゅうのはなぁ」
そこで目を覚ましました。
自分の息の音で、喉がヒイヒイ音を立てていました。
枕元を見ると、祖父の位牌にヒビが入っていました。
私は考えました。
アレの話を私と同じように多くの人に話せば、
アレが私を探し当て、私が憑依される確率は
下がるのではないか。
ここまでの長文たいへん失礼しましたが、
大雑把な書き方では読んだ方の記憶に残らないと
思ったのです。
読んだ方には申し訳ないのですが、
犬に噛まれたとでも思ってください。
ご自分の生存確率を上げたければ、
この話を少しでも多くの方へ
伝えることをおすすめします。
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