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2020年02月12日
今話題のサブスクって何?そんなあなたにお勧めしたい。書籍紹介:サブスクリプション2.0
感想
サブスク。耳にしたことがない方はもういないでしょう。それほどまで市民権を得た言葉です。
正式にはサブスクリプションという単語ですが、定額制サービスといった方が我々に馴染みがあるでしょう。
しかし、ではそれが何を意味するのか。実際、私もあまり詳しくはありませんでした。そのような状況で、本書の題名には”2.0”という単語が入っているではありませんか!
サブスクとは何なのか、サブスク1.0と2.0の違いは何なのか。この記事で書いていきたいと思います。
サブスク1.0
サブスク(サブスクリプション)は、実生活では定額サービスという言葉で言い換えられています。
「そもそもサブスクとは、新聞雑誌などの定期(予約)購入を意味し、製品やサービスなどの一定期間の利用に対して代金を支払う方式」である(三省堂”大辞林”より)。
本書にはこのような文章が書かれています。
新聞や雑誌、消耗品の定期購入はもちろんのこと、例えば月極めの駐車場、更にはスマホの定額掛け放題でさえもサブスクなんです。
どうでしょう?知らず知らずの内に、皆さんサブスクを利用しているのですよ。
そして、これがサブスク1.0と定義しているのが本書の著書なのです。
サブスク2.0
では、サブスク1.0と2.0はどう違うのでしょうか。
本書では大きく3つのポイントがあるとしています。
@メーカーの参入
Aシェアの概念
B個別カスタマイズ化
メーカーの参入
ポイントの1つ目は、メーカーの参入だそうです。これは非常にわかりやすい違いですね!
というのも、これまでサブスク型のビジネスを運営していたのは主に小売りやサービス業でした。
それが2.0ではメーカー本体が自社製品をサブスク型で提供しているのです。
代表的な例としては、自社の製品を自社本体が定額制で提供しているパターンですね。
トヨタが行っている、自社の新車を月額料金で乗れるサービスを始め、その他さまざまな事例が本書では書かれています。
シェアの概念
2つ目はシェアの概念が入ってきたことです。ここから若干難しくなります。
一言でいうと、”使い回しが可能”という事です。著者は交換可能型とも言えると付け加えています。言い換えるだけで、理解が進みますね。
本書では、月額制で高級バックの借り放題サービスがあげられていました。なお、日用品や消耗品の定期購入は売り切り型ですので、使い回しや交換はできません。
昨今の”所有から利用”への移行に合致した考えですね。
もちろん、本書では様々な事例が紹介されています。
個別カスタマイズ化
3つ目は、個別カスタマイズ化という考えです。これは、説明されると非常に頷ける内容でした。
利用者の趣味・趣向にあった物を個別に送る・選べるパーソラナイズドサービスとなった。
流し読みで読むと、少しわかりにくい文言ですね。簡単に言うと、これまでは会員に対して一律に同じ商品を送るのが普通でした。
それが、2.0では一人一人に合った商品が贈られるのです。例えば、服のサブスクが紹介されていました。
自分が好きな色や、利用シーンを登録しておくとそれに合った服が送られてくる仕組みだそうです。
なんだか、グーグルアドセンスの自動広告みたいな感じがしますね。
なぜサブスクをするのか
さて、ではなぜ企業がサブスクに新たに参入したのでしょうか。そもそも、サブスクのメリットは何なのでしょうか。
所有から利用へ:顧客関係の維持としてのサブスク
戦後の貧し良い時代、人々にはありとあらゆる”もの”が全く足りませんでした。だからこそ、いわゆる三種の神器と呼ばれた製品を人々は求め、所有してきたのです。
では、現在はどうでしょうか。ものは溢れ、ほとんどの所有欲は満たされました。家に5個も洗濯機を置きたいという方は少ないでしょう。冷蔵庫や車、テレビなども同じことが言えますね。
この結果何が生じるのか。企業は新規購入の需要を得られず競争は激化、減少していく限られたパイのためにレッドオーシャンの中血みどろの戦いを繰り広げていくのです。
つまり、新規顧客の獲得から既存顧客の維持ヘシフトチェンジしたのです。そして、サブスクはその戦略に非常に合致した考えでもありました。
もちろん、サブスクは新規顧客の獲得にも効果を有しています。本書の中では、若者を対象に月額制で自社の自動車を貸し付け、自動車需要を掘り起こそうという事例が紹介されました。
安定収入源としてのサブスク:人は解約をしたがらない
上記が企業のサブスクへの新規参入の理由だとすると、以下はサブスクのメリットと言えるでしょう。
最大のメリットは安定した収入を得られる点にあります。これは、例えるなら不動産投資のようなものと言えます。
自社が有する賃貸マンションが契約を得られるとすると、契約者が一度も使わなくても家賃収入を得られますね。サブスクも同じことで、一度契約するとたとえサービスを使わなくても収入が入ります。
そして、もう1つのメリットはそれに付随するサービスで利益を上げられる点があります。代表的なのは月額〜円で毎日ビール1杯無料という居酒屋のサービスでしょうか。
本当にビールだけで帰る方は少数派です。恐らくほとんどの方は別の料理を注文するでしょう。
そして、実は人は契約したサービスを解約したがらない傾向にあるそうです!
なので、サブスクは安定収入として非常に優秀な戦略なのです。
もう競争激化しているサブスク業界
独自のサービスを提供しているサブスク業界ですが、すでに撤退を行った企業も多く、必ずしもノーリスクというわけではありません。
そりゃそうですよね。手元に製品さえあれば参入できるのですから。特に激しいのはファッション業界でしょうね。
スーツで有名なAOKIは、サブスクからの撤退を決めました。利益はあったのですが、その利用者が新規顧客ではなく、既存顧客のボリューム層だったのです。経営用語でいう、カニバライゼーション(共食い)ですね。
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/casestudy/00012/00107/
サブスクで本業をつぶしては元も子もありません。撤退を決めたのは正解だと思います。
おわりに
さてここで話した内容は本書の極わずかでしかありません。書籍では序章以外のすべてが事例といえるような、事例集となってます。
残念ながら、本書を読んだからといって明日からサブスクを完璧に使える人材にはなれません。そんな本が存在したら100万でも買うでしょう(笑)
しかし、サブスクは今後の未来において重要な要素となると私は考えます。というのも、これまでの社会は、所持欲がない人に所持を強制するシステムだからです。
所有のメリットデメリットはもちろんあります。そこは個々人の考えによるでしょうが、私はわざわざ持つ必要性を感じません。おそらく、多くの若者はこういう考えに進むことになるかと思います。
読んで損はありません。内容も簡潔にわかりやすく書かれているので2時間もかかりません。
ぜひ一度手に取ってみてください!それでは
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2020年01月15日
書籍紹介:『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 』
今回はこちら、世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」を紹介します。一見難しそうな題名ですが、その内容はとても分かりやすく、昨今の経営学における教育体制についての限界を中心に物語っております。
読み終えた感想
まるで、ホラー映画を見終えたかのような感覚。
経営学部、経営系大学院に進んだからこそ、私はそう思いました。その内容は間違いなく正しく、だからこそ恐ろしく感じました。
資本主義による正しさの遂行、あるいは企業利益追求のための戦略。それは正しいことです。そして、それは正しくないことなのです……。
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今治造船とJMUを比較してみた
2020年01月07日
新年あいさつとyoutube投稿について
あけましておめでとうございます。今年も何卒よろしくお願い申し上げます。
あいさつ
さて、独自ドメインを取得しエックスサーバーと契約したのが7月。もう半年も続いているのですね。
これも読者の皆様のおかげです。本当にありがとうございました(^^♪
これからもよろしくお願いします!
youtube投稿について
本ブログではhoi2dhという戦略ゲームのレポートを投稿してきました。今回、それを動画化する運びとなりました。
動画化といっても、アニメーションやMMDなどを使用したものではなく、単純にyoutuberに様な地声での投稿です。画面キャプチャーも無料のものですし、音声録画はスマホです。
それでもよろしければ、どうぞご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=BuxDwbVx1ds
おわりに
昨年は造船産業で大きな変化がありました。今治造船とJMUの提携、三菱重工香焼工場の売却、三井E&S千葉工場の売却など、まさに革命とも言えました。
このような大変革の時代において、働き方もまた大きく変化してきました。終身雇用の崩壊と副業の解放、過労死神聖化の廃止など、私たちの身のまわりもまた変化し続けております。
この1年をどう生きていくのか、じっくりと考え過ごしていきたいと思います。それでは。
2019年12月16日
鳥取、島根1泊2日コースを旅行会社勤務の私が紹介します!!
前回は長野県1泊2日を実施後に記事にしました。今回は計画段階ですが、鳥取砂丘と出雲大社を回るコースを作成いたしました。
旅行会社に相談に行かずにコースと見積りを入手できる、お得な記事ですよ(笑)
ぜひご覧ください。
旅程と予算
1泊2日でレンタカー、男5人という華のあるメンバーで計画しております。さっそく見ていきましょう!
私はだいたい1人あたり22,000円になるように作成しております。高速道路はETC割引で最終的にマイナス1,000円なります。おつまみなども不要な方もおられるでしょう。ガソリンや駐車代は概算ですので大幅に変更となるでしょう。
1日目について
前回の長野と比べると、今回は非常にゆったりとした時間配分が可能です。やはり長野、大阪からは遠い。
今回の鳥取県における観光地ですが、鳥取砂丘と砂の美術館、かにっこ館、仁風閣・宝扇庵は車で近い位置にあります。旅程では砂の美術館にて昼食となっておりますが、例えば仁風閣観光後かにっこ館にて昼食、その後砂丘と美術館というコースでも問題なく楽しめます。
宿泊先
今回は料金の都合で皆生温泉に宿泊することを予定しております。
宿泊先は皆生グランドホテル天水です。お手軽な値段で和食バイキングを楽しむ事が出来ます。また、境港にほど近い場所にありますので、2日目の 出雲大社へ行くのもそう時間がかからないでしょう!
もちろん、これ以外にも良い場所は多くあります。例えば松乃湯はいかがでしょうか?少し値段は上がりますが、玉造温泉の中心地に建つ老舗旅館です。
ホテル料金比較『トリバゴ』などで、料金を調べるのが非常に楽になりました。
ぜひ一度見ていただけたらと思います。
2日目について
さて、2日目は出雲大社です。島根といえば出雲大社。日本人でこの名を知らない方はいないでしょう。それほど有名な神社です。稲佐の浜へもぜひ立ち寄りましょうね。
その後は昼食を近くで取り、そのまま帰宅するもよし、あるいは境港でお土産を購入するもよしです。水木しげるロードや江島大橋など、観光地も多くあります。
レンタカーの都合があるので、遅れることが無いように帰りましょう。特に、夜8時以降梅田のガソリンスタンドはほとんど閉まります。前回はトヨタにて支払いを行いました。それほど高くはなりませんよ意外と(笑)
今回はまだ計画段階ですので、実際に行かないとどうなるのかわかりません。前回のオルゴール館やplumなど予定外の地へ行くかもしれませんし、あるいは別のコース、別の都道府県へ向かうかもしれません。
その都度変えていくのが我々旅行業に身を置く者の務めですので、ぜひやってやろうと思います。
それでは〜。
2019年12月14日
護衛艦って、どの会社が作っているの?
護衛艦。一口に言ってもその種類は多岐にわたります。
海外では巡洋艦や駆逐艦、更にはヘリコプター空母などに分類されるものも、国内では”護衛艦”とされております。もちろん、書類上では甲型、乙型に分けられてますが、世間一般ではすべて護衛艦だと認識されてますね。
今回は、それら護衛艦はどの造船会社で建造されているのかを書きたいと思います!
護衛艦にも種類がある?
国内では海上戦闘艦すべて護衛艦と一括りにしてますが、英語表記で見るとわかりやすくなります。
例えば、駆逐艦は海外ではDDと表記されており、国内の護衛艦にもすべてDDが割り振られております。なので、極論を言うと海上自衛隊の海上戦闘艦艇はすべて駆逐艦とも言えますね。
ただ、護衛艦を見るとDDのほかDDGやDDH、DEなども存在します。次期護衛艦に至っては、DEXからFFMに変更されましたね。
簡単にまとめてみましょう。
DD
DDは駆逐艦のことで、海自におけるはつゆき型やあきづき型です。一般の方が護衛艦と聞いて思い浮かべるのはだいたいこれだと思います。
艦隊防衛用の長距離ミサイルを搭載していない駆逐艦のことで、各国の海軍も有してますね。
DE
護衛駆逐艦と呼ばれる、小型の駆逐艦です。海自のあぶくま型が該当します。
日本近海での活動が主で、乗組員の数も少なく、砲や設備なども小ぶりです。DEX(FFM)は、このDE型の後継となりますね。
DEやFF、コルベットなど、駆逐艦よりも小さい大きさのものは種類が多くて大変ですが、実は決まった分け方はありません。
大きさ的にも異なる場合はございますが、だいたい大きい順にDE>FF>コルベットでしょうか。
DDG
ターターミサイルやイージスシステムなどの艦隊防空用ミサイルあるいはシステムを持つ、艦隊の盾としての駆逐艦です。より強力な駆逐艦といえます。
現状、国内ではイージスシステム搭載艦を意味し、こんごう型などが該当します。ちなみに、アメリカの全駆逐艦はDDGです。チートですね。
ちなみに、先日進水したイージス艦”はぐろ”は基準排水量が8,200トンで、これは日本海軍の阿賀野型軽巡よりも大きく(基準排水量6,651トン)、妙高型重巡よりも小さい(同10,902トン)規模です。
DDH
ヘリコプター搭載型護衛艦という、日本独自の分類名です。海外ではCVHで、ヘリ空母と訳されます。海自のいずも型が該当します。
世界的にヘリ空母はメジャーではないので、ニッチな面が大きいですね。そもそも大規模な海軍ヘリを持っている国自体が少なく、空母や揚陸艦を持っている国はそれで代替可能ですし。
ちなみに、現在の海自は各護衛艦に最低1機以上のヘリを搭載してます。しかし、ヘリの集中運用や整備の面からはヘリ空母が優れていることは言うまでもありませんね。
造船と海軍の関係
海軍力を支えるために造船業が必要なのはもちろんのことです。日本も海軍の最初期は英仏などから購入しており、日本海海戦で有名な戦艦三笠もイギリス製でしたね。
さて、軍艦建造の歴史において主役となった造船所は、実は民間の造船業ではありませんでした。いわゆる、海軍工廠と呼ばれる造船所です。
※民間造船所でも多々軍艦が建造されました。代表的なものは藤永田造船所などでしょうか。
海軍工廠。今現在は名前は残っておりませんが、造船所そのものはしっかりと残ってます。
ちなみに、昨今では艦船をアニメ化やゲーム化した作品が多数あり、鎮守府という言葉を耳にした方も多いと思います。鎮守府内に作られた造船所が海軍工廠として後に組織化された歴史がありますので、この鎮守府と海軍工廠は非常に密接な関係にあります。興味がある方はぜひ調べてみてください!!
さて、日本において有名な海軍工廠は4か所あります。
横須賀海軍工廠:現、米海軍横須賀基地
恐らく国内ではもっとも有名だと思います。神奈川県の横須賀にかつて存在した横須賀鎮守府内に作られのが横須賀海軍工廠です。現在は米海軍の横須賀基地とし日本政府から割譲されており、空母の整備も可能な前線基地として大いに役立っております。
江戸幕府⇒明治政府と官営で運営されてきたことから、海軍との関係は最も強いものでした。そのため、他の海軍工廠と比べても非常に長い歴史があります。
江戸幕府以降も軍艦建造の主役でしたが、呉など他の工廠が完成するにつれ旧式化してきたのもまた事実です。それでもなお、帝都の守護者としてその力を大いに発揮いたしました。
現在は米軍が接収してますので、海自護衛艦や商戦などの建造はありません。また、主に艦船の修繕やメンテナンスが目的ですので、新造船もありません。
呉海軍工廠:現、ジャパンマリンユナイテッド呉事業所
戦艦大和で有名な呉海軍工廠は、その規模と設備力で国内最大の海軍工廠でした。
戦後は米国の海運会社NBC社(ナショナルバルクキャリア)と播磨造船所(現IHI)が設備を引き継ぎました。実は、戦後の日本造船業に多大な影響を与えたのがこのNBC社です。NBC呉と一般的には言われてますが、詳細が知りたい方にお勧めの書籍があります。
『戦艦大和の遺産』という名前でも出版されてますが、ハードブックと文庫化の違いですので、どちらでも大丈夫です。
ちなみに、日本は世界最大の船を常に更新するように建造していきましたが、その主役はこの呉海軍工廠の設備によるものが大きかったです。出光興産の”日章丸”もこの呉で建造されました。国内最大の海軍工廠だったこともあり、その設備もまた広大なものだったことがうかがえますね。
佐世保海軍工廠:現、名村造船所子会社佐世保重工業
横須賀、呉と来て、次は佐世保です。大国である清や朝鮮半島からの侵攻に対応するのが大きな目的でした。そのため、新造よりも修繕を目的としている面が強くありました。
大和型戦艦の修繕も可能なドックも後に作られることとなり、まさに西方の一大拠点としてその存在感を大いに与えました。
戦後は連合軍が接収し、のちに佐世保重工業(当時は佐世保船舶工業)として再出発を果たします。一時は現在の新来島ドックの子会社にもなりますが、ここに興味がある方は、高杉良著の『太陽をつかむ男』という文庫本をお勧めします。
現在は名村造船所の完全子会社となり、米軍と自衛隊に提供しているどっくを除き、全期が修繕に利用されてます。もともと修繕が目的だった佐世保海軍工廠と同じ流れを維持しているのは、非常に面白いですね。
舞鶴海軍工廠:現、ジャパンマリンユナイテッド舞鶴事業所
さて、横須賀は太平洋に面した帝都の守りとしてその意味を有しておりました。呉は関西など関東より西南方面に対する防衛の拠点として存在してました。佐世保は対清や朝鮮半島からの侵攻に対する守りとして活躍しました。
舞鶴は対ロシアのために新たに設置された鎮守府、海軍工廠です。日清戦争による賠償金が使われるなど、他3拠点と比べて一番歴史は浅いものとなっております。
対ロシアのための設備であり、日本海唯一の拠点です。規模も小さく、主に修繕が行われましたが、駆逐艦などの新造も行いました。
この舞鶴でもって、日本近海の全方向ににらみを利かせるという結果を生み出しました。
護衛艦を建造している会社
さて、ここまでくるのにかなり遠回りをしました。
しかし、旧海軍の艦艇が海軍工廠や民間指定会社で建造されていたことをぜひ知っていただきたく少し遠回りをしました。
では、現在はどうなのか。それを書いていきたいと思います。
造船業はほかの記事にも書いているように、オイルショックにより大規模な統廃合と再編、合併などが行われました。それでも数は多いのですが、艦艇を建造している会社は限られてます。
特に、護衛艦に関しましては3社しかありません。
三菱重工
スリーダイヤの名前を聞いたことがない方はおそらくいないと思います。三菱重工の軍艦建造の歴史は、通報艦”最上”から始まり、世界最大の戦艦である大和型戦艦の2番艦”武蔵”を完成させるに至りました。
戦後はVLCCクラスの大型タンカーに注力し、オイルショック後は国内で数少ない客船建造の道へ進みました。特に、長崎県の香焼に作られた造船所は別名100万トンドックと呼ばれるほど強大な施設で、オイルショックが無ければ間違いなくVLCC建造において最強の存在となっていたことでしょう。
護衛艦に限ると、ほとんどの艦艇の1番艦を建造した歴史があります。特にDDGとイージス艦はその基礎から作り上げたといっても過言ではなく、まさに最高の技術力を誇っているといえます。
しかし、ヘリコプター搭載型護衛艦4隻すべての受注を得られず、またイージス艦も”まや型”は一切建造に関わっておりません。一部では建造費が異常に高いor他社が異常に低かったそうですが、真相は不明です。
ちなみに、護衛艦と異なりますが潜水艦の場合は三菱と川崎重工で毎年建造しております。このため、両社は安定して受注する関係にあります。
JMU(ジャパンマリンユナイテッド)
さて、艦艇建造においては昨今とてつもない勢いで受注を得ておりますのがこのJUM社です。
JMUは非常にややこしい歴史を持っておりますが、現在日本の建造量ではトップを走る今治造船の次点に位置してます。
このJMUはそもそも大手企業4社の事業合併により誕生しました。
@IHIマリンユナイテッド:IHI(石川島播磨重工)の造船事業(艦艇事業を含む)と住友重機械工業の艦艇事業部が合併して誕生した会社。
Aユニバーサル造船:日立造船と日本鋼管の両社造船事業(艦艇事業を含む)が合併してできた会社。
大手重工3社の造船事業と大手重工の艦艇事業が統一された企業であり、その規模と人員数は間違いなくトップレベルです。さらに、中手企業と異なり大手重工はVLCCを中心に建造していたため、その建造設備も大型なものとなってます。大型コンテナ船のロット受注はおそらく国内ではJMUしかできないでしょう。
誕生したのが2013年なので、まだ艦艇建造は多くはありませんが、イージス艦建造を三菱を退けて受注したのは驚きましたね。さらに、空母型は全隻JMUが建造するなど、技術力も三菱に引けを取らないものとなってます。
三井E&S
三井造船はこの2社とは違いあまり多く建造をしてはおりません。かつては駆逐艦建造に中心的な役割を果たした藤永田造船所を傘下に収めるなど、軍艦建造に力を入れておりましたが、現在は企業規模自体が小さく、あまり主役として存在してはおりません。
最近ではあきづき型を1隻建造したくらいでしょうか。
ただ、DE型の後継であるFFMの建造に際して、三菱重工の下請けとして建造することが示されており、今後も護衛艦の建造は続けていく方針だと伺えます。
おわりに
護衛艦は知っているけど、どこが作っているのかを知っている方は多くはないと思います。
造船所はもちろんのこと、造船業に興味を示してくれる方がこの記事で少しでも増えると幸いに思います。
2019年12月13日
三菱の決断?造船再編
造船再編の波は大きく押し寄せる?
『三菱重工、長崎の主力造船所を売却 業界再編が加速』(2019/12/12 18:00日本経済新聞 電子版)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53272000S9A211C1MM8000/
三井E&S千葉工場の売却にはじまり、今治とJMUの資本提携、そして今回は三菱(MHI)の100万トンドックである香焼工場が売却される運びとなりました。私はオイルショック手前あたりから2014年までの中手造船業を中心に大学院で研究してきましたが、今回ほど動きが激しかった時はそうそうありませんでした。
ちなみに、最も動いたのは2度の設備処理時に行われた造船業界の再編です。
香焼工場とは
造船研究をしている方は必ず一度は耳にするのが、この香焼工場です。実は、三菱重工長崎造船所には3つの工場があります。本工場と香焼工場、そして諫早工場です(諫早は造船とは関係ありませんので本記事の対象としません)。
本工場
本工場は江戸幕府により設立された工場で、明治維新にて三菱重工に払い下げられた歴史があります。かつて戦艦武蔵を建造したのもこの本工場で、いまもなお艦船建造の中心地として国防に大きく貢献してます。
艦艇のほか中型の客船も手掛けております。
特にDDG型護衛艦は最新のまや型とこんごう型4番艦を除き全艦建造しております。スリーダイヤの実力、恐るべきですね。
香焼工場
夢の100万トンドックです。VLCC(超大型石油タンカー)の連続建造を目的に作られた設備で、間違いなく日本最大の造船所といえます。
残念ながら完成からわずか数年でオイルショックが生じ、その力をフルに利用されることはありませんでした。
よもやま話ですが、超大型船建造を目的に作られたため、クレーンなどの設備もまた巨大なものでした。オイルショックでVLCCの受注が得られなくなったため中型のバルク船建造となったのですが、建造に使う鉄板が小さすぎて落下したこともあるそうです。
売却後どうなるの?
売却先としては大島造船所があげられているそうです。
大島造船所:バルクの大島
大島造船所ですが、名前を知らない方もおられることだと思います。こちらは、南一族が経営する造船中手企業で、工場も長崎にしかありません。しかし、国内建造量では今治、JMUに次ぐ第3位で、業界では知らない方はおりません。
創業がオイルショックの翌年という非常に厳しい時であったため、創業当初からコストダウンに力を入れておりました。小史がこちらに記載されておりますので、ぜひご覧ください。
この大島造船所、「バルクの大島」と呼ばれてます。ひたすらバルクキャリアに特化し建造しているめ、建造した船の数は1工場としてはぶっちぎりで国内1位です。設備としてはVLCC建造可能なドック1基(535m*80m)しか有しておりませんが、バルクキャリア4隻を連続生産しております。
2017年にベトナムで操業予定の造船所を計画しておりましたが、造船市況の悪化に伴い造船所は中止、設計部門のみ設立することとなりました。
海事プレス社COMASSという雑誌があり、大島造船所に関する特集が組まれていたことがあります(https://ci.nii.ac.jp/naid/40020238783)。
売却後の三菱と大島
三菱の造船所としては、現在長崎造船所(本工場と香焼工場)、下関造船所が商船建造を担っております。なお、神戸には潜水艦建造専門の工場があります。
香焼を売却すると、長崎本工場にて艦艇、客船を建造。下関にて客船とLNG船の建造というふうに生産分担が可能です。今治との合弁会社MILNGで受注したLNG船も、香焼や下関にて基本的に建造されております。
一方の大島造船所にとっては、県内に国内最大の造船所を取得でき、より一層バルクキャリア建造の隻数を増やせることとなります。問題としては、香焼が大きすぎる事でしょうか?
三菱と大島の提携、MILNGの行方は
実は三菱は今治、名村、大島と提携関係にあります。
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ14HUD_U7A610C1TJ1000/
なので、今回の売却先に大島が選ばれるのは特におかしな話ではありませんでした。ただ、香焼は超大型船やLPG船、LNG船建造の拠点であり、MILNGはどうなるのでしょうかね。
おわりに
三菱はオイルショック後に客船やLNG船、LPG船など高付加価値船に特化する戦略を取りました。日立造船のように造船から撤退したわけでもなく、住友のようにアフラタンカーやパナマックスタンカーに特化するのとは別の戦略です。
しかし、超大型客船で2000億円以上もの損失を出し、重工本体から切り離されたのは記憶に新しいと思います。高コスト体質と政府支援の無さが、逆に低コストかつ違法ともいえる政策支援を得ている韓国に勝てないのは明白ですが、現状その打開策を行ってはおりません。
国内で中〜大型客船を建造しているのは三菱のみといって過言ではありません。客船の技術力維持のためにも、ぜひ三菱にはがんばってほしいとことです。
※本記事において使用している画像はMHIのHPより利用しております。
2019年12月09日
今治造船とJMUが資本提携!?
年の瀬の衝撃ニュースを、私は三井E&Sの大赤字と千葉工場分社化だと信じてました。見事に裏切られました。
『ジャパンマリンユナイテッド株式会社との資本業務提携に関する基本合意書締結について』
http://www.imazo.co.jp/html/comp/news/191129.html
なんと、建造量国内1位の今治造船と2位のジャパンマリンユナイテッド(JMU)が資本提携するそうです。
業界再編はだいたい1位と3位が提携し2位を離すだとか、2位3位が組み1位を落とすなどでしたが、今回は1位2位が手を組むのです。それほどにまで切羽詰まっているのでしょう。
さらに、この今治造船は瀬戸内を中心に形成されたグループで桧垣一族が経営する家族企業です。一方JMUは日立造船、IHI、日本鋼管の造船事業部と住友の艦艇事業部が合併してできた企業で、旧財閥系の国を代表する重工業群です。昔では考えられない様子ですね。
以下、内容を見ていきましょう。
【本提携の概要】
1. 資本提携について
今治造船が、JMUの新たに発行する普通株式を引き受けることについて検討します。
2. 業務提携について
今治造船とJMUは、以下の(1)及び(2)の内容を含め、両社の業務提携について検討します。
(1) LNG運搬船を除く商船分野を対象とする共同営業設計会社の設立
(2) 今治造船とJMUの将来の生産体制の効率化
買収はしない
まず、新発行株式を引き受けるということで、今治造船がJMUを買収するということではなさそうです。今治からしてもJMUを買収したところで、言い方は悪いのですが負債にしかなりません。というのも、今治の最大の強みは瀬戸内を中心にグループが形成されている点にあるからです。JMUは国内に幅広く展開してます。
業務内容
@のLNGを除くというのは、実は三菱と今治がLNG分野において提携関係にあるためです。MILNGカンパニーという会社を合弁で設立しており、LNG船の設計販売を行ってます。このために、JUMとはLNGを除く提携となっているのでしょう。
しかし、今治の主建造船はバルクキャリアですので、あまりLNGを主としては行ってはおりません。
今回の提携ではJMUにとってはコスト削減のノウハウや受注後JMUより人件費が安い今治へ建造を依頼するなど考えられますね。今治にとっては資本の増加や高付加価値船のノウハウの取得などでしょうか。
Aの生産体制の効率化というのは、一言で表すと生産分業です。実は、今治造船はこれまで設備の規模が小さかったのです。今では常石造船から購入した多度津工場と新たに建設した丸亀ドック、広島工場(旧幸陽船渠)など大型工場がありますが、それ以前は西条工場のみといっても過言ではありませんでした。
建造中の船体の8割以上を完成させ、いったん進水させ別の修繕ドックへ移動させ残り2割を船体にくっつけたことも確かあったはずです。もしかしたら別の会社かもしれませんが…。
とにかく、既存設備では対応できないのが当時の今治造船の実情でしたが、現在はそれら新工場などもあるので、いったいどういう内容なのか興味がありますね。
2019年12月03日
12月は福袋の季節?
2019年12月02日
造船再編?
衝撃的なニュースが流れてきました。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52045790R11C19A1TJ2000/
三井E&S(旧三井造船)が600億円に上る赤字を流し、企業再編に乗り出すそうです。約1000人規模のリストラと事業再編を主とし、造船事業にもかなり大きな影響をうけてます。
日本の造船産業:弱小企業の乱立
世界的にみると、日本の造船産業は規模の割に企業が多すぎるといえます。
実は、全世界で建造される船のうち80%は日本、中国、韓国の3か国で建造されてます。しかし、その内訳は中韓で30%ずつ、日本が20%弱で、お世辞にも日本造船業が好況とは言えません。
それは円高によるコスト競争力の少なさと、国際法上違法である政府支援の有無ももちろんありますが、それ以上に大きな問題があります。
それが、業界の企業数です。
詳しくは造船研究にて述べていきますが、実は日本ではオイルショック後に2度、国家主導の下で設備削減がなされました。その目的は「過剰設備の処理と再編」ではなく、「倒産企業を1つでも減らし雇用を最大限維持する」というものでした。
確かに再編の目的もありました。事実、乱立していた企業は最終的に6〜8程度に集約されました。
しかし、その結果、本来倒産するはずだった企業は生き残り、そして規模のあった大手企業は多大な設備を処理しました。簡単に言いましょう。
「多くの弱小企業が乱立される」という最悪の結果が引き起こされたのです。
1企業1船台(ドック)の弱小規模企業が勝てるはずがありません。
第2次設備処理と業界再編
第2次設備処理(1988年)の結果、次の8つのグループに大まかに再編されました。
@三菱・今治、A川重・鋼管、B石播、C日立、D住重、E三井、F常石・尾道、G来島。
ちなみに、三菱・今治はこういう感じでした。
見てもよくわからないと思いますが、参考にどうぞ。
少し解説すると、CGTとは建造能力のことで、これを各グループで20%削減するのが目的でした。三菱の神戸と下関の各1基、新山本などの1基を処理し、20%目標を達成しました。
なお、この時、今治は一切処理しておりません。グループ処理だったので、新山本などの倒産企業を買収し処理したのです。
※かなりグレーではありますが、一方で倒産企業にとっては労働者の解雇費用などを今治が負担することとなったので、決して悪い話ではありませんでした。
中韓と日本の造船企業の違い
今現在の造船業界を見ると日本では今治造船グループが唯一世界的に戦えております。それは、設備処理時に倒産企業を買収し、その設備を処理することにより自社の戦力を維持したからにほかなりません。それでも造船所は瀬戸内を中心に数か所に広がり、最大のシナジー効果を得られてはおりません。
規模では2位の日本のJUMは2010年以降に再編により誕生した企業です。日本鋼管(現JFE)と日立造船の両造船事業が合併して誕生したユニバーサル造船、石川島播磨(現IHI)と住友重機械工業の艦船事業が合併して誕生したIHIマリンユナイテッドの2社がさらに合併して誕生しました。全国的に造船所が広がっておりほとんどシナジー効果は得られてません。
これが日本の現状です。規模のある上記2社でもこの状況です。
一方、中国や韓国の大手企業は設備が広域に広がってはおりません。そもそも誕生した時点で規模が大きく作られましたので、1造船所内に9ドックという企業でさえ存在します。
1社に設備が集中していると、ロット受注にも対応できます。コンテナ船などは一気に12隻発注とかもあり、小規模な設備しか持たない日本企業はそもそも相手にされないのです。
先の三菱のものを見て頂くと神戸や下関、長崎に散らばっているのとは正反対ですよね?
さらに、クレーンなどの設備に関しても日本では昔のまま使いつぶしている一方、中韓は最新の設備を導入して運用しております。
規模も設備も劣位にある中で、むしろよくここまで粘れているなと思いますね正直なところ。
これからどうなる日本企業
実は三井造船と川崎重工は造船事業を統合する計画がありました。実際、MES-KHI由良ドック 株式会社という、船舶修繕を目的とした会社は2社協業です。しかし、新造船を含めた統合には至りませんでした。なんなら、川崎側はクーデターのような手法も選び統合に反対しておりました。
2度の設備処理で確かに国内造船業も再編されました。しかし、それでもまだ企業は乱立しているのです。より一層の再編を行はなければ戦えないでしょう。
もちろん、造船所といっても建造する船の種類は大きく異なります。高付加価値船と低付加価値船です。
実は、オイルショックまでは超大型タンカーなどの高付加価値船を大手企業が、バルクキャリアなどの低付加価値船を中小企業が建造するという、暗黙の線引きがなされてました。しかしオイルショックによりタンカー需要が激減し、大手が中小企業の市場に乱入し市場が破壊されました。
※とある大手企業では造船所設備が大型船建造のためのクレーンであったので、建造するバルクキャリアが小さすぎて鉄板が落ちたそうです(笑)
そして、今現在韓国は高付加価値船を中心に建造し、中国は低付加価値船を中心に建造してます。日本は両方を建造してますが、今治や常石などの力ある企業は低付加価値船を建造してます。高付加船はコストやロット生産に対応できないなどの点から韓国に勝てないのです。
なぜ再編が起きない?
造船所1つあるだけで、数千や数万もの雇用が誕生します。特に造船業は裾の長い産業で、1隻作るだけでも20万点以上の部品が必要です。そしてこれらを作る企業にとって、造船所がなくなることは大打撃なのです。
労働問題や雇用問題などが大きく簡単に閉鎖できないのが造船産業で、どれだけ再編したくてもできない事情もあります。
もし、そういうことを無視できるなら、大いに再編されていたことでしょう。
もし再編されるとなればどうなる
たとえ問題が解消され再編されたとして、これから一気に成長するかといえばそうはならないでしょう。
安い海外労働者を利用し値下げに応じても、コストで勝てないのが現状です。今では中国企業の船でさえ品質は十分なのですから。
それでも日本の造船業が生き残っているのは日本船主という固定客がいる川にほかなりません。
結局のところ、今治造船のように瀬戸内の造船所をグループ化するか、常石造船のように海外に造船所を作るかの2択となると思います。実際、川崎重工は中国に合弁会社を設立し売り上げを伸ばしておりますし、今治造船は常石造船が持っていた工場を買収しています。
仮に再編されたとしたら、@三菱・今治造船グループ、AJMUグループが主体となるでしょう。川重や常石など海外拠点を持つ企業は再編に参加することはないでしょう。する必要性がありませんので。
あるいは日立造船のように造船事業を売却し、海洋やインフラ関係の製造へ移る企業も出てくるでしょう。
どちらにせよ、今回のショッキングなニュースはある意味運命づけられていたものとも言えます。三菱でさえ造船を本体から切り離してますし。
これからどうなるのか、楽しみといえば語弊が生じますが、しっかり見ていきたいですね。