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2020年03月30日

今治造船とJMUの提携を優しく解説

まずは日経新聞のこの記事2つをご覧下さい


https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57170850U0A320C2TJ2000/


https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57170150U0A320C2TJ1000/?n_cid=SPTMG002


 


そうです、ついに日本の造船産業が再編されることとなったのです。


日本の造船産業、主役は今治造船が握る


今治造船、私のブログで何度も出てきた会社名ですね!JMUもまた同じく多々見られることと思います。なぜなら、建造量国内1と2位だからにほかなりません。ちなみに、日本の造船企業を軽く知りたい方はこちらの記事を、今治とJMUを比較してみたものはこちらをどうぞ。


世界の建造量は中韓が各30%ずつ、日本が20%のシェアを握っておりますが、参加企業数は大きく異なります。特に、中韓造船業は国内大手企業2~3社が建造量の大部分を占める一方、日本には規模の小さい中小の造船所が乱立し、各社が血みどろの争いを行ってます。


そのため、現状他国の造船企業と戦える国内企業は、多数のドックと子会社を持つ今治造船のみといっても過言ではありません。



発表の内容


さて、今回発表された内容は大きく次のように分けられます。


営業、開発、設計の共同化


まずは、今治とJMUが資本出資して新会社が設立されることとなりました。これは前回発表時にも言われてましたね。


新会社の事業内容は共同での商船の営業・設計・開発。


ばら積み船や大型オイルタンカーなど、商船の営業・設計を手掛ける。


「共同で開発・営業会社を設立する」。


営業力の増加もさることながら、開発、設計人員の規模が拡大することは両社にとってとてつもなく喜ばしいことです。というのも、現在、国内には設計者が不足しており、それを育てる環境も失われつつあります。その点、今回の営業・設計の統合は両社にとってプラスに働くことでしょう。


https://newswitch.jp/p/2474


また、開発に関しても事業内容に含まれております。同じ設計図で同じ船型の船を建造することのメリットはとても大きいです。部品の共通化はもちろんのこと、下請会社などにも経験効果が発揮でき、人員の流動化に大きく貢献できます。


出資比率は今治が51%と実権を握ることとなりました。JMUとしても、日本の造船産業の主体が今治であると認識しているのでしょう。もちろん、JMUの株主がIHIやJFEといった大手重工ですので、JMUが過半数を出資すると彼らにも気を配らなければなりません。社内政治の観点からもこの結果が最適だと思います。


建造船型の共同標準化



先にも書いたように、共同の開発と設計は、共通設計図による標準船戦略(シリーズ船)に他なりません。今現在、両社とも建造船は標準化されたものとなっております。この2社の異なる標準船を同じにしようというのが、恐らく開発を新会社で行う事の意味だと思います。


今となっては、各社顧客個々に合わせて設計するというのはマイナーとなりました。基本は造船会社が設計した標準船を購入し、一部変更を加えるのが主流です。上記画像はJMUの81BCと呼ばれるシリーズ船で、200隻以上の建造実績があります。


http://www.uminoshigoto.com/make/work_to_make.html


標準船と言っても、船舶の長さや幅、大きさなどは国を問わず各社似たり寄ったりとなってます。皆さんはパナマックスという言葉を聞いたことはないでしょうか?ちなみに、パナマックスとはパナマ運河を渡れる最大限の船型を意味します。


例えば、今治造船のパナマックス型は重量トン81、000tで全長224.94m、幅32.26m、深さ19.5mです。JMUの同型船は同じ重量トンでで長さ約229m、幅約32.26m、深さ約20mです。ほとんど同じですね。


このように、船舶の最大規模は各社共通の制限を考慮しなければなりません。その中でいかに他社よりも優位性のある船を開発し、設計し、建造するかというのが造船企業の競争の内容と言えるでしょう。そして、その点においてJMUは極めて優秀な技術者がいることに間違いありません。


一方、今治造船には愛媛船主と呼ばれる、世界でも有名な船舶オーナーたちと強力なつながりを持っております。国内の船舶のうち約3割は彼らが保有しているといわれており、香港やギリシャ船主と肩を並べるとまで言われております。


https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38927490U8A211C1LKA000/


「省エネ化など環境関連の技術力が高いJMUと、国内外の船主などに幅広い販売ネットワークを持つ今治造船の強みを持ち寄る。」というのはそういうことです。


ロット受注と生産分業


私のブログを読んでいる方は何度も目にしたことと思います。そうです。ついにロット受注に対応できるようになるのです。


ちなみに、ロット受注とは一度に同型船を12隻受注するなど、たくさんの数量を受けることを意味します。日本企業の多くは自社の建造能力が少なく、一度に大量受注しても納期を間に合わせるだけの余裕がありませんでした。その為、ロット発注を求める顧客からは相手にされませんでした(国交省によると、17年の世界の船舶発注量の38%が5隻以上の複数発注だった)。



今回はJMU本体の株式の30%を今治が取得するというように、今治とJMUの関係がより一層深くなってます。つまり、新会社でロット受注した同型船を今治とJMUの両方の工場で生産することも視野に入れているという事です。


生産分業の例としては、今治造船が受注したVLCCを三菱に1隻建造を任せたという事例があります。三菱は今治、名村、大島と提携関係にあり、今治がロット受注したうちの1隻を建造する運びとなりました。ちなにみ、このことを三菱がプライドを捨ててまで格下の今治造船から建造委託を願ったという記事が多く見られます。真相は皆さんの判断次第です(笑)


https://this.kiji.is/560673193123038305


これからどうなる日本の造船?


新会社がもたらす恩恵


まずはっきりとしたのは、両社の統合はないということです。提携はあくまでも営業、開発、設計にとどまっており、


 @窓口の一本化


 A共同船型と部品共通化


 Bロット受注と生産分業、が目的と見られます。


今治は船のデパートを目指すとしておりますが、その主要な新造船はバルクキャリアです。もちろんVLCCや2万TEU型コンテナ船のような船舶も建造しておりますが、やはり主体はバルクです。


しかし、その大きさはスモールサイズからケープサイズまで幅広く扱っており、中には1船型のみを建造する特化工場も持っています。


一方、JMUも建造船種は幅広く取り扱ってます。しかし、今治のようにスモールサイズを建造することはあまりありません。今治が小~大型の船を建造する一方で、JMUは中〜大型を主に建造しているといえます。


そして、船舶の規模は海峡や運河により制限がかけられます。今回の新会社により、両社が別々に設計している同程度の船舶を共通化できますね。


建造能力は大幅アップ



国内1位と2位の建造量を誇る2社ですので、生産能力もまた巨大なものとなります。ただし、JMUは艦艇や官公庁船の建造も行っており、例えば横浜工場では商船の建造があまり多くありません。またJMU舞鶴では商船建造から撤退し、艦艇修繕に特化することが以前発表されました。


それでも、両社を合わせての新造船建造能力は他の国内企業と比べると段違いです。数値だけで見るとドック17基に船台2台と、1社1ドックとは比較になりません。



先ほど紹介した2万TEUコンテナ船は6隻が建造され3隻を今治が、残り3隻を韓国の造船企業が建造しました。この船型は長さ400m、幅58.5m、深さ32.9mで、国内の造船所でも建造できる箇所が限られます。


この船型を建造するとなれば、今治造船では西条工場と丸亀工場の2工場ドック2基のみですが、JMUには呉、有明、津と3工場ドック4基が理論上は可能です。つまり、もし納期が許すのならドック6基で同時建造が可能となります。これがロット受注を可能にする最大の功績者です。


なお、下記画像は現代重工の蔚山造船所の写真です。ドックの数は11基で、VLCCや2万TEU型コンテナなど大型船を年間40隻引き渡す。


それでも中韓との戦いは厳しい


今治とJMUの提携や共同、共通化が成されたとしても、なお市況はあまりよくありません。中国では国営2社が合併し、韓国も同様に合併が進んでおります。特に日本がWTOに韓国を起訴したように、違法とも言える政策も行われているのが現状です。


また、造船所は造船事業以外に使う事は不可能に近いです。船台やドックの稼働率を上げることを優先した結果、赤字受注し船価の崩壊が始まる事も多々ある事です。


このようなグローバルな事情の他、JMUは大手企業の事業統合という創立の経緯から工場が各地に散らばってます。これは今治造船とは大きく異なることで、シナジー効果が大きく薄れることとなります。物流コストや人員の流動性も落ちますね。


造船再編へ


さて、いかがだったでしょうか?


産業の再編という歴史的な瞬間に今立ち会っていると考えると、とても素晴らしい経験だといえますね。


再編と言いましたが、そもそも規模の少ない企業が乱立した原因は、オイルショックによる造船不況と国策としての2度の設備処理が重要な影響を与えてます。


大手企業ほど自社設備の処理量が高いなど、その目的は倒産を1社でも少なくし、皆で生き抜こうというものでした。だからこそ1社1船台や1ドックといった弱小企業が乱立することとなりました。


一方の中国や韓国は2~3社に集約されており、だからこそ大規模な造船所が完成しました。韓国造船業が世界最大の建造量を誇るようになったのは2000年で、中国はその後です。1950年代から1位を誇る日本の長い歴史が、同時にこのような結果を生むこととなったのです。


これからの日本造船業を考えると、次のようなグループに分けられると思います。


@今治造船グループ(今治グループ、JMU,三菱、名村、大島)


A海外建造グループ(三井、川重、常石)


Bその他(尾道、内海など独立系)


これがどのようになるのか、興味が尽きません。ただし、確実なのは、造船産業が再編される、という事です。


 

2020年01月15日

今治造船とJMUを比較してみた

さて、今治造船JMUとの衝撃的な提携が発表されてから、少し時間が経ちました。世間では、三菱重工香焼工場の大島造船所への売却でいったん影が薄くなってしまいましたが、それでもなお年の瀬最大のニュースといっても過言ではないでしょう。


そこで、今回は今治とJMUの比較をしたいと思います。比較対象はドック数やその規模、建造船などを考えております。


ニュース記事などでは主に建造量や売り上げなどを中心に比較されており、そういう観点のほうが経済的にも重要です。なので、ここではそれ以外から比較します。


続きを読む...

2019年12月14日

護衛艦って、どの会社が作っているの?

護衛艦。一口に言ってもその種類は多岐にわたります。


海外では巡洋艦や駆逐艦、更にはヘリコプター空母などに分類されるものも、国内では”護衛艦”とされております。もちろん、書類上では甲型、乙型に分けられてますが、世間一般ではすべて護衛艦だと認識されてますね。


今回は、それら護衛艦はどの造船会社で建造されているのかを書きたいと思います!


護衛艦にも種類がある?


国内では海上戦闘艦すべて護衛艦と一括りにしてますが、英語表記で見るとわかりやすくなります。


例えば、駆逐艦は海外ではDDと表記されており、国内の護衛艦にもすべてDDが割り振られております。なので、極論を言うと海上自衛隊の海上戦闘艦艇はすべて駆逐艦とも言えますね。


ただ、護衛艦を見るとDDのほかDDGやDDH、DEなども存在します。次期護衛艦に至っては、DEXからFFMに変更されましたね。


簡単にまとめてみましょう。


DD



DDは駆逐艦のことで、海自におけるはつゆき型やあきづき型です。一般の方が護衛艦と聞いて思い浮かべるのはだいたいこれだと思います。


艦隊防衛用の長距離ミサイルを搭載していない駆逐艦のことで、各国の海軍も有してますね。


DE



護衛駆逐艦と呼ばれる、小型の駆逐艦です。海自のあぶくま型が該当します。


日本近海での活動が主で、乗組員の数も少なく、砲や設備なども小ぶりです。DEX(FFM)は、このDE型の後継となりますね。


DEやFF、コルベットなど、駆逐艦よりも小さい大きさのものは種類が多くて大変ですが、実は決まった分け方はありません。


大きさ的にも異なる場合はございますが、だいたい大きい順にDE>FF>コルベットでしょうか。


DDG



ターターミサイルやイージスシステムなどの艦隊防空用ミサイルあるいはシステムを持つ、艦隊の盾としての駆逐艦です。より強力な駆逐艦といえます。


現状、国内ではイージスシステム搭載艦を意味し、こんごう型などが該当します。ちなみに、アメリカの全駆逐艦はDDGです。チートですね。


ちなみに、先日進水したイージス艦”はぐろ”は基準排水量が8,200トンで、これは日本海軍の阿賀野型軽巡よりも大きく(基準排水量6,651トン)、妙高型重巡よりも小さい(同10,902トン)規模です。


DDH



ヘリコプター搭載型護衛艦という、日本独自の分類名です。海外ではCVHで、ヘリ空母と訳されます。海自のいずも型が該当します。


世界的にヘリ空母はメジャーではないので、ニッチな面が大きいですね。そもそも大規模な海軍ヘリを持っている国自体が少なく、空母や揚陸艦を持っている国はそれで代替可能ですし。


ちなみに、現在の海自は各護衛艦に最低1機以上のヘリを搭載してます。しかし、ヘリの集中運用や整備の面からはヘリ空母が優れていることは言うまでもありませんね。


造船と海軍の関係


海軍力を支えるために造船業が必要なのはもちろんのことです。日本も海軍の最初期は英仏などから購入しており、日本海海戦で有名な戦艦三笠もイギリス製でしたね。


さて、軍艦建造の歴史において主役となった造船所は、実は民間の造船業ではありませんでした。いわゆる、海軍工廠と呼ばれる造船所です。


※民間造船所でも多々軍艦が建造されました。代表的なものは藤永田造船所などでしょうか。


 


海軍工廠。今現在は名前は残っておりませんが、造船所そのものはしっかりと残ってます。


ちなみに、昨今では艦船をアニメ化やゲーム化した作品が多数あり、鎮守府という言葉を耳にした方も多いと思います。鎮守府内に作られた造船所が海軍工廠として後に組織化された歴史がありますので、この鎮守府と海軍工廠は非常に密接な関係にあります。興味がある方はぜひ調べてみてください!!


さて、日本において有名な海軍工廠は4か所あります。


横須賀海軍工廠:現、米海軍横須賀基地


恐らく国内ではもっとも有名だと思います。神奈川県の横須賀にかつて存在した横須賀鎮守府内に作られのが横須賀海軍工廠です。現在は米海軍の横須賀基地とし日本政府から割譲されており、空母の整備も可能な前線基地として大いに役立っております。


江戸幕府⇒明治政府と官営で運営されてきたことから、海軍との関係は最も強いものでした。そのため、他の海軍工廠と比べても非常に長い歴史があります。


 


江戸幕府以降も軍艦建造の主役でしたが、呉など他の工廠が完成するにつれ旧式化してきたのもまた事実です。それでもなお、帝都の守護者としてその力を大いに発揮いたしました。


現在は米軍が接収してますので、海自護衛艦や商戦などの建造はありません。また、主に艦船の修繕やメンテナンスが目的ですので、新造船もありません。


呉海軍工廠:現、ジャパンマリンユナイテッド呉事業所


戦艦大和で有名な呉海軍工廠は、その規模と設備力で国内最大の海軍工廠でした。


戦後は米国の海運会社NBC社(ナショナルバルクキャリア)と播磨造船所(現IHI)が設備を引き継ぎました。実は、戦後の日本造船業に多大な影響を与えたのがこのNBC社です。NBC呉と一般的には言われてますが、詳細が知りたい方にお勧めの書籍があります。


著、前間孝則氏『世界制覇』  という本です。『戦艦大和の遺産』という名前でも出版されてますが、ハードブックと文庫化の違いですので、どちらでも大丈夫です。


 

 


ちなみに、日本は世界最大の船を常に更新するように建造していきましたが、その主役はこの呉海軍工廠の設備によるものが大きかったです。出光興産の”日章丸”もこの呉で建造されました。国内最大の海軍工廠だったこともあり、その設備もまた広大なものだったことがうかがえますね。


佐世保海軍工廠:現、名村造船所子会社佐世保重工業


横須賀、呉と来て、次は佐世保です。大国である清や朝鮮半島からの侵攻に対応するのが大きな目的でした。そのため、新造よりも修繕を目的としている面が強くありました。


大和型戦艦の修繕も可能なドックも後に作られることとなり、まさに西方の一大拠点としてその存在感を大いに与えました。


戦後は連合軍が接収し、のちに佐世保重工業(当時は佐世保船舶工業)として再出発を果たします。一時は現在の新来島ドックの子会社にもなりますが、ここに興味がある方は、高杉良著の『太陽をつかむ男』という文庫本をお勧めします。


現在は名村造船所の完全子会社となり、米軍と自衛隊に提供しているどっくを除き、全期が修繕に利用されてます。もともと修繕が目的だった佐世保海軍工廠と同じ流れを維持しているのは、非常に面白いですね。


舞鶴海軍工廠:現、ジャパンマリンユナイテッド舞鶴事業所


さて、横須賀は太平洋に面した帝都の守りとしてその意味を有しておりました。呉は関西など関東より西南方面に対する防衛の拠点として存在してました。佐世保は対清や朝鮮半島からの侵攻に対する守りとして活躍しました。


舞鶴は対ロシアのために新たに設置された鎮守府、海軍工廠です。日清戦争による賠償金が使われるなど、他3拠点と比べて一番歴史は浅いものとなっております。


対ロシアのための設備であり、日本海唯一の拠点です。規模も小さく、主に修繕が行われましたが、駆逐艦などの新造も行いました。


この舞鶴でもって、日本近海の全方向ににらみを利かせるという結果を生み出しました。


護衛艦を建造している会社


さて、ここまでくるのにかなり遠回りをしました。


しかし、旧海軍の艦艇が海軍工廠や民間指定会社で建造されていたことをぜひ知っていただきたく少し遠回りをしました。


では、現在はどうなのか。それを書いていきたいと思います。


 


造船業はほかの記事にも書いているように、オイルショックにより大規模な統廃合と再編、合併などが行われました。それでも数は多いのですが、艦艇を建造している会社は限られてます。


特に、護衛艦に関しましては3社しかありません。


三菱重工


スリーダイヤの名前を聞いたことがない方はおそらくいないと思います。三菱重工の軍艦建造の歴史は、通報艦”最上”から始まり、世界最大の戦艦である大和型戦艦の2番艦”武蔵”を完成させるに至りました。


戦後はVLCCクラスの大型タンカーに注力し、オイルショック後は国内で数少ない客船建造の道へ進みました。特に、長崎県の香焼に作られた造船所は別名100万トンドックと呼ばれるほど強大な施設で、オイルショックが無ければ間違いなくVLCC建造において最強の存在となっていたことでしょう。


 


護衛艦に限ると、ほとんどの艦艇の1番艦を建造した歴史があります。特にDDGとイージス艦はその基礎から作り上げたといっても過言ではなく、まさに最高の技術力を誇っているといえます。


しかし、ヘリコプター搭載型護衛艦4隻すべての受注を得られず、またイージス艦も”まや型”は一切建造に関わっておりません。一部では建造費が異常に高いor他社が異常に低かったそうですが、真相は不明です。


 


ちなみに、護衛艦と異なりますが潜水艦の場合は三菱と川崎重工で毎年建造しております。このため、両社は安定して受注する関係にあります。


JMU(ジャパンマリンユナイテッド)


さて、艦艇建造においては昨今とてつもない勢いで受注を得ておりますのがこのJUM社です。


JMUは非常にややこしい歴史を持っておりますが、現在日本の建造量ではトップを走る今治造船の次点に位置してます。


このJMUはそもそも大手企業4社の事業合併により誕生しました。


@IHIマリンユナイテッド:IHI(石川島播磨重工)の造船事業(艦艇事業を含む)と住友重機械工業の艦艇事業部が合併して誕生した会社。


Aユニバーサル造船:日立造船と日本鋼管の両社造船事業(艦艇事業を含む)が合併してできた会社。


 


大手重工3社の造船事業と大手重工の艦艇事業が統一された企業であり、その規模と人員数は間違いなくトップレベルです。さらに、中手企業と異なり大手重工はVLCCを中心に建造していたため、その建造設備も大型なものとなってます。大型コンテナ船のロット受注はおそらく国内ではJMUしかできないでしょう。


誕生したのが2013年なので、まだ艦艇建造は多くはありませんが、イージス艦建造を三菱を退けて受注したのは驚きましたね。さらに、空母型は全隻JMUが建造するなど、技術力も三菱に引けを取らないものとなってます。


三井E&S


三井造船はこの2社とは違いあまり多く建造をしてはおりません。かつては駆逐艦建造に中心的な役割を果たした藤永田造船所を傘下に収めるなど、軍艦建造に力を入れておりましたが、現在は企業規模自体が小さく、あまり主役として存在してはおりません。


最近ではあきづき型を1隻建造したくらいでしょうか。


ただ、DE型の後継であるFFMの建造に際して、三菱重工の下請けとして建造することが示されており、今後も護衛艦の建造は続けていく方針だと伺えます。


おわりに


護衛艦は知っているけど、どこが作っているのかを知っている方は多くはないと思います。


造船所はもちろんのこと、造船業に興味を示してくれる方がこの記事で少しでも増えると幸いに思います。

2019年12月13日

三菱の決断?造船再編

造船再編の波は大きく押し寄せる?


『三菱重工、長崎の主力造船所を売却 業界再編が加速』(2019/12/12 18:00日本経済新聞 電子版)


https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53272000S9A211C1MM8000/


 


三井E&S千葉工場の売却にはじまり、今治とJMUの資本提携、そして今回は三菱(MHI)の100万トンドックである香焼工場が売却される運びとなりました。私はオイルショック手前あたりから2014年までの中手造船業を中心に大学院で研究してきましたが、今回ほど動きが激しかった時はそうそうありませんでした。


ちなみに、最も動いたのは2度の設備処理時に行われた造船業界の再編です。


香焼工場とは


造船研究をしている方は必ず一度は耳にするのが、この香焼工場です。実は、三菱重工長崎造船所には3つの工場があります。本工場と香焼工場、そして諫早工場です(諫早は造船とは関係ありませんので本記事の対象としません)。


本工場



本工場は江戸幕府により設立された工場で、明治維新にて三菱重工に払い下げられた歴史があります。かつて戦艦武蔵を建造したのもこの本工場で、いまもなお艦船建造の中心地として国防に大きく貢献してます。


艦艇のほか中型の客船も手掛けております。


特にDDG型護衛艦は最新のまや型とこんごう型4番艦を除き全艦建造しております。スリーダイヤの実力、恐るべきですね。


香焼工場



夢の100万トンドックです。VLCC(超大型石油タンカー)の連続建造を目的に作られた設備で、間違いなく日本最大の造船所といえます。


残念ながら完成からわずか数年でオイルショックが生じ、その力をフルに利用されることはありませんでした。


よもやま話ですが、超大型船建造を目的に作られたため、クレーンなどの設備もまた巨大なものでした。オイルショックでVLCCの受注が得られなくなったため中型のバルク船建造となったのですが、建造に使う鉄板が小さすぎて落下したこともあるそうです。


売却後どうなるの?


売却先としては大島造船所があげられているそうです。


大島造船所:バルクの大島


大島造船所ですが、名前を知らない方もおられることだと思います。こちらは、南一族が経営する造船中手企業で、工場も長崎にしかありません。しかし、国内建造量では今治、JMUに次ぐ第3位で、業界では知らない方はおりません。


創業がオイルショックの翌年という非常に厳しい時であったため、創業当初からコストダウンに力を入れておりました。小史がこちらに記載されておりますので、ぜひご覧ください。


この大島造船所、「バルクの大島」と呼ばれてます。ひたすらバルクキャリアに特化し建造しているめ、建造した船の数は1工場としてはぶっちぎりで国内1位です。設備としてはVLCC建造可能なドック1基(535m*80m)しか有しておりませんが、バルクキャリア4隻を連続生産しております。


2017年にベトナムで操業予定の造船所を計画しておりましたが、造船市況の悪化に伴い造船所は中止、設計部門のみ設立することとなりました。


 


海事プレス社COMASSという雑誌があり、大島造船所に関する特集が組まれていたことがあります(https://ci.nii.ac.jp/naid/40020238783)。


売却後の三菱と大島


三菱の造船所としては、現在長崎造船所(本工場と香焼工場)、下関造船所が商船建造を担っております。なお、神戸には潜水艦建造専門の工場があります。


香焼を売却すると、長崎本工場にて艦艇、客船を建造。下関にて客船とLNG船の建造というふうに生産分担が可能です。今治との合弁会社MILNGで受注したLNG船も、香焼や下関にて基本的に建造されております。


一方の大島造船所にとっては、県内に国内最大の造船所を取得でき、より一層バルクキャリア建造の隻数を増やせることとなります。問題としては、香焼が大きすぎる事でしょうか?


三菱と大島の提携、MILNGの行方は


実は三菱は今治、名村、大島と提携関係にあります。


https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ14HUD_U7A610C1TJ1000/


なので、今回の売却先に大島が選ばれるのは特におかしな話ではありませんでした。ただ、香焼は超大型船やLPG船、LNG船建造の拠点であり、MILNGはどうなるのでしょうかね。


おわりに


三菱はオイルショック後に客船やLNG船、LPG船など高付加価値船に特化する戦略を取りました。日立造船のように造船から撤退したわけでもなく、住友のようにアフラタンカーやパナマックスタンカーに特化するのとは別の戦略です。


しかし、超大型客船で2000億円以上もの損失を出し、重工本体から切り離されたのは記憶に新しいと思います。高コスト体質と政府支援の無さが、逆に低コストかつ違法ともいえる政策支援を得ている韓国に勝てないのは明白ですが、現状その打開策を行ってはおりません。


国内で中〜大型客船を建造しているのは三菱のみといって過言ではありません。客船の技術力維持のためにも、ぜひ三菱にはがんばってほしいとことです。


※本記事において使用している画像はMHIのHPより利用しております。

2019年12月09日

今治造船とJMUが資本提携!?

年の瀬の衝撃ニュースを、私は三井E&Sの大赤字と千葉工場分社化だと信じてました。見事に裏切られました。


 


『ジャパンマリンユナイテッド株式会社との資本業務提携に関する基本合意書締結について』


http://www.imazo.co.jp/html/comp/news/191129.html


なんと、建造量国内1位の今治造船と2位のジャパンマリンユナイテッド(JMU)が資本提携するそうです。


業界再編はだいたい1位と3位が提携し2位を離すだとか、2位3位が組み1位を落とすなどでしたが、今回は1位2位が手を組むのです。それほどにまで切羽詰まっているのでしょう。


さらに、この今治造船は瀬戸内を中心に形成されたグループで桧垣一族が経営する家族企業です。一方JMUは日立造船、IHI、日本鋼管の造船事業部と住友の艦艇事業部が合併してできた企業で、旧財閥系の国を代表する重工業群です。昔では考えられない様子ですね。


以下、内容を見ていきましょう。


 


【本提携の概要】

1. 資本提携について
今治造船が、JMUの新たに発行する普通株式を引き受けることについて検討します。

2. 業務提携について
今治造船とJMUは、以下の(1)及び(2)の内容を含め、両社の業務提携について検討します。
(1) LNG運搬船を除く商船分野を対象とする共同営業設計会社の設立
(2) 今治造船とJMUの将来の生産体制の効率化


 


買収はしない


まず、新発行株式を引き受けるということで、今治造船がJMUを買収するということではなさそうです。今治からしてもJMUを買収したところで、言い方は悪いのですが負債にしかなりません。というのも、今治の最大の強みは瀬戸内を中心にグループが形成されている点にあるからです。JMUは国内に幅広く展開してます。


 


業務内容


@のLNGを除くというのは、実は三菱と今治がLNG分野において提携関係にあるためです。MILNGカンパニーという会社を合弁で設立しており、LNG船の設計販売を行ってます。このために、JUMとはLNGを除く提携となっているのでしょう。


しかし、今治の主建造船はバルクキャリアですので、あまりLNGを主としては行ってはおりません。


今回の提携ではJMUにとってはコスト削減のノウハウや受注後JMUより人件費が安い今治へ建造を依頼するなど考えられますね。今治にとっては資本の増加や高付加価値船のノウハウの取得などでしょうか。


 


Aの生産体制の効率化というのは、一言で表すと生産分業です。実は、今治造船はこれまで設備の規模が小さかったのです。今では常石造船から購入した多度津工場と新たに建設した丸亀ドック、広島工場(旧幸陽船渠)など大型工場がありますが、それ以前は西条工場のみといっても過言ではありませんでした。


建造中の船体の8割以上を完成させ、いったん進水させ別の修繕ドックへ移動させ残り2割を船体にくっつけたことも確かあったはずです。もしかしたら別の会社かもしれませんが…。


とにかく、既存設備では対応できないのが当時の今治造船の実情でしたが、現在はそれら新工場などもあるので、いったいどういう内容なのか興味がありますね。

2019年12月02日

造船再編?

衝撃的なニュースが流れてきました。


https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52045790R11C19A1TJ2000/


 


三井E&S(旧三井造船)が600億円に上る赤字を流し、企業再編に乗り出すそうです。約1000人規模のリストラと事業再編を主とし、造船事業にもかなり大きな影響をうけてます。


日本の造船産業:弱小企業の乱立


世界的にみると、日本の造船産業は規模の割に企業が多すぎるといえます。


実は、全世界で建造される船のうち80%は日本、中国、韓国の3か国で建造されてます。しかし、その内訳は中韓で30%ずつ、日本が20%弱で、お世辞にも日本造船業が好況とは言えません。


それは円高によるコスト競争力の少なさと、国際法上違法である政府支援の有無ももちろんありますが、それ以上に大きな問題があります。


それが、業界の企業数です。


詳しくは造船研究にて述べていきますが、実は日本ではオイルショック後に2度、国家主導の下で設備削減がなされました。その目的は「過剰設備の処理と再編」ではなく、「倒産企業を1つでも減らし雇用を最大限維持する」というものでした。


確かに再編の目的もありました。事実、乱立していた企業は最終的に6〜8程度に集約されました。


しかし、その結果、本来倒産するはずだった企業は生き残り、そして規模のあった大手企業は多大な設備を処理しました。簡単に言いましょう。


「多くの弱小企業が乱立される」という最悪の結果が引き起こされたのです。


1企業1船台(ドック)の弱小規模企業が勝てるはずがありません。


第2次設備処理と業界再編


第2次設備処理(1988年)の結果、次の8つのグループに大まかに再編されました。


@三菱・今治、A川重・鋼管、B石播、C日立、D住重、E三井、F常石・尾道、G来島。


ちなみに、三菱・今治はこういう感じでした。



見てもよくわからないと思いますが、参考にどうぞ。


少し解説すると、CGTとは建造能力のことで、これを各グループで20%削減するのが目的でした。三菱の神戸と下関の各1基、新山本などの1基を処理し、20%目標を達成しました。


なお、この時、今治は一切処理しておりません。グループ処理だったので、新山本などの倒産企業を買収し処理したのです。


※かなりグレーではありますが、一方で倒産企業にとっては労働者の解雇費用などを今治が負担することとなったので、決して悪い話ではありませんでした。


中韓と日本の造船企業の違い


今現在の造船業界を見ると日本では今治造船グループが唯一世界的に戦えております。それは、設備処理時に倒産企業を買収し、その設備を処理することにより自社の戦力を維持したからにほかなりません。それでも造船所は瀬戸内を中心に数か所に広がり、最大のシナジー効果を得られてはおりません。


規模では2位の日本のJUMは2010年以降に再編により誕生した企業です。日本鋼管(現JFE)と日立造船の両造船事業が合併して誕生したユニバーサル造船、石川島播磨(現IHI)と住友重機械工業の艦船事業が合併して誕生したIHIマリンユナイテッドの2社がさらに合併して誕生しました。全国的に造船所が広がっておりほとんどシナジー効果は得られてません


これが日本の現状です。規模のある上記2社でもこの状況です。


 


一方、中国や韓国の大手企業は設備が広域に広がってはおりません。そもそも誕生した時点で規模が大きく作られましたので、1造船所内に9ドックという企業でさえ存在します。


1社に設備が集中していると、ロット受注にも対応できます。コンテナ船などは一気に12隻発注とかもあり、小規模な設備しか持たない日本企業はそもそも相手にされないのです。


先の三菱のものを見て頂くと神戸や下関、長崎に散らばっているのとは正反対ですよね?



 


さらに、クレーンなどの設備に関しても日本では昔のまま使いつぶしている一方、中韓は最新の設備を導入して運用しております。


規模も設備も劣位にある中で、むしろよくここまで粘れているなと思いますね正直なところ。


これからどうなる日本企業


実は三井造船と川崎重工は造船事業を統合する計画がありました。実際、​MES-KHI由良ドック 株式会社という、船舶修繕を目的とした会社は2社協業です。しかし、新造船を含めた統合には至りませんでした。なんなら、川崎側はクーデターのような手法も選び統合に反対しておりました。


2度の設備処理で確かに国内造船業も再編されました。しかし、それでもまだ企業は乱立しているのです。より一層の再編を行はなければ戦えないでしょう。


もちろん、造船所といっても建造する船の種類は大きく異なります。高付加価値船と低付加価値船です。


実は、オイルショックまでは超大型タンカーなどの高付加価値船を大手企業が、バルクキャリアなどの低付加価値船を中小企業が建造するという、暗黙の線引きがなされてました。しかしオイルショックによりタンカー需要が激減し、大手が中小企業の市場に乱入し市場が破壊されました。


※とある大手企業では造船所設備が大型船建造のためのクレーンであったので、建造するバルクキャリアが小さすぎて鉄板が落ちたそうです(笑)


そして、今現在韓国は高付加価値船を中心に建造し、中国は低付加価値船を中心に建造してます。日本は両方を建造してますが、今治や常石などの力ある企業は低付加価値船を建造してます。高付加船はコストやロット生産に対応できないなどの点から韓国に勝てないのです。


なぜ再編が起きない?


造船所1つあるだけで、数千や数万もの雇用が誕生します。特に造船業は裾の長い産業で、1隻作るだけでも20万点以上の部品が必要です。そしてこれらを作る企業にとって、造船所がなくなることは大打撃なのです。


労働問題や雇用問題などが大きく簡単に閉鎖できないのが造船産業で、どれだけ再編したくてもできない事情もあります。


もし、そういうことを無視できるなら、大いに再編されていたことでしょう。


もし再編されるとなればどうなる


たとえ問題が解消され再編されたとして、これから一気に成長するかといえばそうはならないでしょう。


安い海外労働者を利用し値下げに応じても、コストで勝てないのが現状です。今では中国企業の船でさえ品質は十分なのですから。


それでも日本の造船業が生き残っているのは日本船主という固定客がいる川にほかなりません。


 


結局のところ、今治造船のように瀬戸内の造船所をグループ化するか、常石造船のように海外に造船所を作るかの2択となると思います。実際、川崎重工は中国に合弁会社を設立し売り上げを伸ばしておりますし、今治造船は常石造船が持っていた工場を買収しています。


仮に再編されたとしたら、@三菱・今治造船グループ、AJMUグループが主体となるでしょう。川重や常石など海外拠点を持つ企業は再編に参加することはないでしょう。する必要性がありませんので。


あるいは日立造船のように造船事業を売却し、海洋やインフラ関係の製造へ移る企業も出てくるでしょう。


 


どちらにせよ、今回のショッキングなニュースはある意味運命づけられていたものとも言えます。三菱でさえ造船を本体から切り離してますし。


これからどうなるのか、楽しみといえば語弊が生じますが、しっかり見ていきたいですね。


 


 


 


 


 

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