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2024年10月10日

仕事に行きたくない@短編小説




朝のアラームが鳴る。
いつもの音、聞き慣れたメロディー。
それが今は地獄の鐘のように響いていた。目を開けるのが嫌だった。
天井を見る気力すら湧かない。
布団の中で、ただ現実を拒否していた。

「今日も行かなきゃいけないんだよな…」

頭の中で繰り返す。
仕事に行く理由なんて、もはやわからなくなっていた。
お金?生活のため?それがどうした。
どれだけ働いても、得るものはストレスと疲労だけだ。
自分を押し潰すような重圧が、毎朝確実に襲ってくる。

携帯を手に取り、時間を確認する。
もう出なきゃいけない時間が迫っていた。
無意識のうちに、SNSを開く。
そこには友達や知らない人たちの楽しそうな写真や投稿が並んでいた。
みんなキラキラしていて、輝いている。
仕事が楽しいなんて、冗談だろう。
それとも、自分が間違っているのか?

「なんで俺だけ、こんなに苦しいんだ?」

疑問が頭を巡る。
学生時代は将来のことなんて考えなかった。適当にやってれば、なんとかなるって思っていた。
だけど、現実は違った。
社会に出た瞬間から、自分の無力さを痛感した。
毎日が同じ、どんよりとした灰色の日々。
やる気が湧かない。
それどころか、もう何も感じたくなかった。

布団から出る気力がないまま、また携帯を見つめる。
どうせ遅刻するのなら、いっそのこと休んでしまおうかという考えが頭を過る。
言い訳のメールを送るか?
体調が悪いとか、電車が止まったとか、そんな適当な理由を並べて。
でも、結局は一日先延ばしにしたところで、次の日にまた同じことが待っているだけだ。

「逃げたい…」

その言葉が、心の中で反響する。
逃げられるものなら、どこか遠くへ消えたい。
誰にも知られない場所で、一人で過ごしたい。
それなら少しは楽になるだろうか?いや、そんな甘い話はないことは分かっている。
どこへ行っても、結局は同じ。
現実は追いかけてくる。
心の奥底に深く突き刺さった重い感情は、どこへ行っても自分を引きずり降ろす。

布団からようやく体を起こす。
窓の外を見ても、曇り空が広がっていた。
まるで自分の心を映し出すかのような、重く暗い景色。
窓の外を見るのも、もう疲れた。

「今日も行くのか…」

一人つぶやく。
結局、逃げる勇気なんて自分にはない。ここで止まってしまったら、もう何もかもが終わる気がする。
それでも足が前に進まない。
カバンに手を伸ばしても、重く感じる。
歩くたびに、体がどんどん沈んでいくような感覚。

「これが俺の人生か…」

絶望が胸を満たす。
会社に向かう電車の中でも、人々はみな無表情だ。
彼らも同じように感じているのだろうか。
それとも、自分だけがこんなにも弱いのだろうか。
答えなんて出ない。

会社に着いても、いつもの風景が広がっている。
同僚たちは無言でパソコンに向かい、上司は苛立ったような顔で指示を出す。
何かを成し遂げた感覚も、やりがいも感じられない。
時計を見ても、時間が進むのがやけに遅い。

「帰りたい…」

その言葉が、何度も頭の中で繰り返される。終わりの見えない日々。
何のために働いているのか。
何のために生きているのか。
考えれば考えるほど、答えが遠ざかる。

昼休み、会社の外に出て、ぼんやりと街を歩く。
人々は忙しそうに行き交い、自分だけが止まっているかのような感覚に陥る。
このままどこかへ消えてしまいたいと、思わずにはいられない。

仕事に戻る足取りは、さらに重い。
午後も同じだ。
無駄に過ぎていく時間、何も変わらない風景。
自分はここにいて、何かをしているはずなのに、何もしていないような気がする。

結局、今日も同じ。
明日も同じ。
そんなことが、もう限界なのかもしれない。

posted by こーら at 07:41 | Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説
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