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2024年08月23日

終焉の孤島@短編小説

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ムームーサーバー



雨は止まなかった。
数週間も、数ヶ月も、いや、もっと長い間、降り続いているかのように感じた。
彼はその雨の音に耳を傾けながら、海を見つめていた。
どこまでも続く荒れ狂う波の向こうに、何かがあるような気がしていたが、それが何なのか、彼にはわからなかった。
この孤島に一人きりでいることは、彼にとって地獄そのものだった。
過去の過ちが繰り返し彼の頭の中で蘇り、それが消え去ることはなかった。
彼は何度も自問した。
「なぜあの時、別の選択をしなかったのか?」と。
だが、その問いに答えられるものなど、どこにもいなかった。
すべてが、彼自身の過ちの積み重ねだった。
彼はもう、疲れ果てていた。
食糧は底をつき、水も限界に近づいていた。だが、それよりも彼を追い詰めたのは、終わりのない孤独だった。
人々の声や笑い声が、頭の中で響き渡るたびに、それが幻であることに気づく瞬間の絶望は、彼の心をえぐり続けた。
誰もいない。
誰も助けに来ない。
その事実だけが、彼の中で現実となり、すべてを飲み込んでいた。
夜になると、彼は小さな炎を見つめた。
燃え尽きる前の最後の輝きを放つその炎が、彼自身の姿に重なった。
彼の中で何かが切れたのは、その瞬間だった。
無理にでも明日を迎える意味など、もはやどこにも見つからなかった。
すべての感情が、冷たく、鋭く彼の心を貫いた。
彼は立ち上がり、島の端へと歩みを進めた。潮の香りが、彼の鼻腔を刺激する。
波が岩に打ち寄せる音が、彼の耳に響いた。自然の猛威の中に身を投じることが、唯一彼に残された選択肢だったのだろうか?
それとも、ただすべてを投げ出したかったのだろうか?その答えは彼自身にもわからなかった。
彼は崖の端に立ち、海を見下ろした。
真っ暗な夜空と同じく、海もまた暗く深い。その深みが、彼を誘っているように感じた。
彼は静かに目を閉じた。
雨が彼の顔を冷たく濡らし、風が彼の体を凍えさせた。
だが、それさえももう感じなくなっていた。一歩踏み出すだけで、すべてが終わる。
それがどれほどの解放であるかを考えると、彼の心は一瞬、安堵した。
だが、次の瞬間、その安堵すらも消え去った。彼の中に残されたものは、ただの空虚だった。
「ここで終わるんだ…」 
その言葉が、彼の口から漏れた。その瞬間、彼は足を前に踏み出した。
そして、そのまま闇の中へと落ちていった。風が彼の耳元を掠め、冷たい水が彼の体を包み込む。
海は彼を受け入れた。
彼の体は重く、無力に感じられたが、それでも彼は何かを感じた。
それは絶望の中での唯一の感覚だった。
彼が感じた最後のものは、深い闇と無音の世界だった。
光はもう見えない。
すべてが静かで、冷たく、そして終わりのない空虚が広がっていた。
彼の心は、ついに静寂の中に溶け込んでいった。
posted by こーら at 08:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説
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