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高坂圭
フリーランスの放送作家・脚本家、コピーライター として活動し、33年目を迎えました。 最近は、物語プランナーとして、ストーリーの力で ビジネスをアップするクリエイターとしても活動しています。
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2023年05月19日

実のある小説 。「花は咲けども噺せども −神様がくれた高座」  立川談慶



これまで著者の作品を読んできて、
僕は師匠のことを「知の人」だと
思ってきた。
ロジカルで世の中を斜めに見ながら
シニカルな笑いを発信する。
慶応大学、ワコールという華麗な経歴も
加味して、イメージが増幅したのかもしれない。

けれどこの小説を読んで、「情の人」と
いう魅力が加わった。
もちろんフィクションなので、主人公=著者
ではないが、出てくるエピソードの選び方、
時折著者の声ではないかと思う、生の言葉が
とても優しく、真面目で、しかもセンチメンタルなのだ。

帯の談春師の「不器用をすねらせたような男が芸人に
なった」という意味が読後、よくわかった。
それから、もうひとつ「努力の人」なんだとも
思った。
第一章より、二章、三章と回が進むごとに
筆が洗練され、読みやすくなっていくのだ。

うまい小説はあまたあるが、
この作品には、著者のこれまで流した涙や
悔しさ、喜び、哀しさなど
人生で支払ったすべてが反映され、とても実のある作品に
なっている。

ぐっとくるフレーズも多い。
僕が印象に残ったのは、

「下から目線ってさ、なんだかすべてが自分より
上にいるから、すべてがすげえんだなって思える
目線なのかもな。謙虚とかとは、違うよね、それは」
「上から目線だと相手の顔しか見えないけど、下から
目線だとさ、相手のすべてが見えるんだよ。人生、
下から目線」

「仕事って、迷い込んできた子犬みたいなものだな
って俺なんかは近頃思うんだよな。キツイ、厳しい
仕事でもさ、自分を頼りにクンクンと尻尾振って
やってきたやつだと思うとさ、かわいく思えて
くるような気がしてさ」

こんな台詞、なかなか書けない。
作家が全体重をかけた作品。
人生の元手がかかった一冊。
780円(税別)は安い。



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