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高坂圭
フリーランスの放送作家・脚本家、コピーライター として活動し、33年目を迎えました。 最近は、物語プランナーとして、ストーリーの力で ビジネスをアップするクリエイターとしても活動しています。
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2023年05月17日

将棋小説の傑作。 「覇王の譜」 橋本長道

いやー、面白かった。
将棋小説は数あるけど、これは
トップクラスです。

僕は麻雀を知らない。でも、
阿佐田哲也の「麻雀放浪記」は
楽しめる。
同じように、将棋を知らない人でも
この小説は、十二分に面白い。

なかでも特筆すべきは、対局のシーン。
棋士たちが闘いのときにどんなことを
考えているのか、その心理と
いかに対局がスリリングですごいものかを
教えてくれる。
さすが、元奨励会会員、プロを目指した
作家ならではだ。
いくつかひきますね。

「先を見通すことができない闇の世界が
長く続けば続くほど、ゲームとしての将棋を
離れ、人間や人生が立ち現れてくる」

「ぶるっと背を身震いが走り抜けた。
恐れではなく、武者震いのようなものだ。
本能を忘れた身体が、危うさを喜んでいるのである。
頭脳だけをいたずらに働かせて、身体を動かす
ことは少ない競技だ。
死闘を繰り広げているはずなのに、身体は傷ついて
いない。そのギャップを埋めようとする働きが
震えとして現れるのである」

「将棋というゲームは、残り時間が少なくなれば
なるほどに、頭脳競技という性格が薄れていき、
格闘技や持久走のような性質を帯びてくる」

「直江先生、残り一分です」
もう滅多なことでは席を立つことはできない。
共に息を荒らげ、時に呻きやぼやきを吐き、
身体を揺らし、扇子で自身に鞭を入れながら
将棋盤に齧り付いている。
すまし顔の礼節は傍らで死体になって転がっている。
そこには着物を剥げば裸の源次的な人間がいる
だけだった。
木の板を動かし続ける二匹の猿である。」

……ねぇ、すごいでしょ。
数年前かな、雑誌アエラと文春の仕事で、
藤井聡太さんにインタビューしたことがある。
恥ずかしがり屋で淡々と小声で喋る彼に
僕は「すいません。もう少し大きい声で」と
お願いした。
でもこんなすごい世界でトップに君臨してた
人だったんだなぁ。
天才おそるべし。



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