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高坂圭
フリーランスの放送作家・脚本家、コピーライター として活動し、33年目を迎えました。 最近は、物語プランナーとして、ストーリーの力で ビジネスをアップするクリエイターとしても活動しています。
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2023年11月03日

プライムビデオ  「グーグーだって猫である」


むかーし映画館で観たので二度目。

原作は大島弓子の漫画で、小泉の役は

吉祥寺に住む天才漫画家。

残念ながら、吉祥寺の風景と彼女の佇まい以外、

あまり印象に残らない作品だったが、

スクリーンにふんだんに出て来る大島弓子(この映画の

原作)の絵は、とても懐かしく、

いろんなことを思い出した。



中学2年の時だった。

妹が読んでる「りぼん」を通して僕は

少女漫画を知った。

可愛い絵とお話、悪人がほとんど出ない

優しい世界に夢中になった。

小学校の頃から、「どうして男はランドセルも

傘も黒なんだろう、もっと華やかな色にしたい」

などと思ってた僕だから、少女漫画のキレイな絵

に魅かれたんだろう。

とくに陸奥A子や太刀掛秀子の作品が好きだった。

あの漫画に出て来る少年に憧れた。

サラサラの髪、細いジーンズ、チェックのシャツ、

ダッフルコート。

恥ずかしい話だが、今の僕のファッションセンスは

あの頃の少年がベースとなっている。



恥ずかしいついでにいえば、その頃ひとりの

少女に恋した。

彼女とは小さな学習塾で出会った。

白いモヘアのセーターと大きな目が印象的な人だった。

でも思春期のまっただなか、意識しすぎて

話も出来なかった。

ましてや告白など。

だけどなんとか自分を印象づけたい。

そこでよせばいいのに、思い出したのが

陸奥A子的アプローチだった。

それも勝手に自分の中でアレンジしたバージョン

だけに始末が悪かった。



まず塾には必ず遅れて入る。

みんなが一斉に玄関を見る。

もちろん彼女も。

その時くっきりとした印象を残すように、

僕は小道具として真っ白なセーターに

真っ赤なガーナチョコレートを選んだ。

これを何度も繰り返せば、彼女の頭の中に

白と赤のキレイなコントラストを身にまとった

少年が、少しうつむき加減で入ってくる絵が

インプットされるはず。

……はい、どうしようもないバカです。



チョコレートがリンゴに変わることは時々

あったが、僕は白赤コントラスト、うつむき加減

を一週間続けた。

一週間後、いつものように遅れて入って来る

僕の側に彼女がやってきた。

やった、努力は報われる。

俺にも始まるぞ、少女漫画的ラブストーリーが。

そう思った瞬間、彼女がいった。

「高坂さん、いっつも同じもん着てるけど、

他のセーター持っとらんと」



以来僕は、「ロマンチック」な気分になった時、

「ひとりよがり、ひとりよがり」と

自分に言い聞かせるようにしている。

グー、グー。




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