2023年11月03日
サバイバルを学ぶ。 「37日間漂流船長」 石川拓治
本作は、2001年の夏にたった1人で太平洋で遭難し、
37日間漂流し、救助された
長崎県の漁師、武智三繁(50歳)のノンフィクション。
’
エンジンが故障し船は漂流、程なく携帯電話に
「圏外」の表示が出ます。
水、次いで食料が底を尽いても武智さんは
焦らず腐らず、「できることは、とりあえずやる」
という鉄則を貫く。
体力も衰えるなかで、キーホルダーで作った
ルアーで魚を釣り、海水をやかんで蒸留して
水滴をなめ、果ては小便まで飲みます。
そんな悲惨な状況の中、武智さんはこう考えます。
’
「…小便をちょっと。舐めているだけなのに。
まだ死なない。人間って、案外死なないもんだ。
いやまったく。今日も元気だ、
小便が旨い。いや、旨くないか。元気でもない。
ちっとも、元気なんかじゃない。
でも生きてる。生きてる。俺はまだ生きているんだぞ」
’
彼がどうして食料も水も尽いても生きられたか、
著書の質問に彼はこう答えます。
少し長くなりますが、とても感動したので
引用します。
’
「あきらめたから、俺は生きられたんだと
思うよ。
あの37日間、俺はずーと何かをあきらめ
続けたんだ。
まず、エンジンをあきらめた。
救助されることをあきらめた。
食べ物をあきらめた。
そして、水をあきらめた。
どんどん、どんどん、自分に必要なものを、
あきらめて
いかくなくちゃならなかった。
’
言ってみれば、あきらめるための漂流だったんだ。
結局は、自分の命までもあきらめたんだから。
あきらめるって、悪いことのように思われてるけど、
俺はそうは思わないんだ。
ひとつ、あきらめるたびに、俺はなんか
軽くなっていった。
それまでぎゅっと守ってたものが、すーっと抜けて、
力が抜けて
なんていうか自分が楽に、そう、自由になっていくような
気がしたんだ(中略)
’
ある人がいうには、あきらめるって仏教の言葉らしいんだ。
あきらかにする、あきらかに見るっていうことだって。
漂流してるとなるほどその通りだなって思ったよ。
(中略)
あきらめて、あきらめて、とりあえず何かやって、あの
37日間を生き抜いたんだもの。
頑張って必死になってたら、俺はきっといまここには
いられないだろうと思う。
頑張り続けることは、しんどいもの。
’
だから俺は、辛い目にあってる人に言ってやりたい。
頑張らなくっていいんだよ。
力を抜いていいんだよって。
それでとりあえず自分にやれることをやったらいい。
疲れたら休みながら、とりあえず、できることだけやって
みようって。それでいいんだよって」
’
……高僧のような武智さんの話に僕は感動しました。
僕はこういう正味の人に弱いのです。
やっぱり頭ではなく身体から出てきた言葉って
いいですね。
’
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