刑法37条第1項では、次のようになっています。
(緊急避難)
第三十七条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
緊急避難は、危険に瀕している自己又は他人の生命、身体、自由、財産を救うために、特に許された行為ということで、正当防衛に似ています。
しかし、正当防衛は、急迫不正の侵害に対する反撃であるのに対して
緊急避難は、現在の危難の発生原因とは無関係の第三者の正当な利益をやむなく侵害する行為です。
つまり、正当防衛は、「不正対正」であるのに対して、緊急避難は「正対正」の関係にあります。
緊急避難が成立するためには、次の要件が必要です。
.
1.現在の危難であること
現在とは、侵害の状態が現に存在していること、またはまじかに迫っていることが必要です。
危難の原因は、人の行為、自然環境、動物の挙動であってもよいとされています。
たとえば、他の人の飼い犬が突然襲いかかってきたときに、持っていた棒でその飼い犬を殺しても、緊急避難が成立します。
2.やむを得ずにした行為であること
危機に瀕している自己又は他人の生命、身体、自由、財産を救うための唯一の方法で、他に可能な方法がないことです。
したがって、他に避難の方法があった場合は、緊急避難は許されません。
そして、必要最小限の行為であることが、必要です。
3.法律上の利益が、均衡していること
緊急避難は、「正対正」の関係であることから、その行為により生じた害が、避けようとした害の程度を超えないことが必要です。
したがって、価値の小さいものを救うために、価値の大きいものを害する行為は、緊急避難にならず、過剰避難になります。
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