2021年03月17日
3月17日のFX自動売買ソフト M と W
【全世界100台限定】ゴードン・マレーT50
マクラーレンF1の論理的後継モデル
text:Steve Cropley(スティーブ・クロップリー)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
ゴードン・マレーが1992年に発表したマクラーレンF1の「論理的な後継モデル」であるV12エンジン搭載の新型スーパーカー「T50」が、来年生産を開始する施設に近いサリー州のダンスフォールド飛行場でテストされた。
最初のドライブではマレー自身がステアリングを握り、次のように語っている。「XP2プロトタイプは現在、上限回転数である1万2100rpmよりもかなり低い回転数で走行していますが、最初のドライブで素晴らしい感触を得ました。レスポンスが良く、俊敏で、運転しがいのあるクルマでした」
「また、クルマの中央に座り、全方位の視界を確保するという素晴らしい体験をしました。もちろん、まだ多くの開発マイルが残っており、多くのプロトタイプを作らなければなりません。しかし、T50の開発の軌跡は、わたし達が望んでいるところにあるのです」
マレーが「最も純粋で、最も軽く、最もドライバーにフォーカスしたスーパーカー」と呼ぶこの新型車は、超軽量、ミドエンジン、オール・カーボンファイバー製の3シーターで、半世紀以上のキャリアを持つマレーにとって50台目のカーデザインであることから、T50と呼ばれている。
100台限定、価格は3億円以上
T50には、マレーが1978年のF1シーズンにブラバムBT46Bで初めてグランプリレースに導入した、地面効果を利用した「ファンカー」技術を改良したものが採用されている。
最高出力660psのコスワース自然吸気4.0L V12エンジン(レッドライン1万2100rpm)を搭載し、ゴードン・マレー・オートモーティブが全数を製造する。ゴードン・マレー・オートモーティブは、マレーが2017年にT50の計画を明らかにした際に、既存のデザイン事業の傍らに立ち上げた会社だ。
T50はわずか100台しか製造されず、英国での価格は280万ポンド(約4億2000万円)ほど。ほとんどが米国や日本をはじめとする世界の自動車愛好家たちに購入されており、みな60万ポンド(約9060万円)の手付金を支払っている。さらに75万ポンド(約1億1000万円)を支払い、残額は納車時に支払うことになっている。
最初の1台は2022年1月にオーナーの手元に届き、同年中に全数が完成する予定だ。生産終了後は、25台のハードコアなサーキット専用モデルが生産されることになっている。
マレーは、このクルマがレースに出場するのを見てみたいと言っているが、ロードカーに集中したいことと、2022年以降のスポーツカーやGTレースのレギュレーションがまだはっきりしていないことから、現時点では参戦には消極的である。
マレーが手がける空力デザイン
後輪駆動のT50は、マクラーレンの先代モデルと同様、ジェット戦闘機のようにドライバーをキャビンの中央に配置している。サイズはミニ・カントリーマンに似ており(ポルシェ911より小さく、アルピーヌ110より軽い)、1.85mのボディ幅を増やさないようデジタルサイドミラーを採用しているため、狭い場所でも高い操作性を発揮するはずだ。
スタイリングは、マレー自身がデザインチームのリーダーとなり、すべて社内で行われた。コンパクトなサイズ、アローヘッドのフロントパネル、ルーフに取り付けられたエアスクープ、二面体のドア、サイドガラスに採用された「チケットウィンドウ」など、その形状は明らかにF1を参考にしているが、さらに小柄に見せるための努力がなされている。
優美なフロントエンドとは対照的に、リアエンドには大型のエキゾースト、エンジンルーム冷却用のメッシュ、巨大なアンダーボディ・ディフューザー、400mmのファンなど極端な機能性が備わっている。このファンは48Vの電気システムで駆動し、ボディ下の空気の流れを急激に加速させることでダウンフォースを発生させる役割を担う。マレーは、これが「ロードカーのエアロダイナミクスのルールブックを書き換えるもの」だと言う。
ファン、ディフューザー、そしてボディ上部後縁のダイナミックなエアロフォイルを組み合わせることで、自然界のシステムよりもはるかに大きなダウンフォースを発生させ、これまでのスーパーカーでは考えられなかったレベルのコーナリンググリップを実現している。
空力モードは6つあり、そのうち「オート」と「ブレーキ」は車速とドライバー操作に応じて動作する。その他のモード(ハイダウンフォース、Vマックス、ストリームライン、テスト)は、コックピットから選択できる。
ハイダウンフォースはその名の通りだが、ストリートラインはファンをフル回転させ、上面と下面のアクティブフラップを格納することで「仮想ロングテール」を構築する。Vマックスは、V12にクランクマウントされた30psのスタータージェネレーターをフル回転させ、3分間のバーストでパワーを追加する。
240km/hを超えると、ルーフに取り付けられたインダクション・エアスクープにより、エンジンの最大出力は約710psにまで引き上げられる。
スイス時計のように精緻なインテリア
圧倒的な室内空間もT50のテーマの1つだ。マクラーレンF1はもちろん、現代のライバルよりも広く、フロアがフラットになったことでセンターシートへのアクセスも容易になっている。ジェット戦闘機をイメージしたアナログスイッチや計器類は比較的シンプルだが、スイス時計のような品質を誇る。
サイドに設置された2つのラゲッジは、F1と同様に広々としており、トップロードも可能だ。200万ポンド(3億円)を超えるコレクターズカーとなるが、日常的に使えるものであるとマレーは確信している。
「T50は完全なロードカーとなります。だからこそ、パッケージングとラゲッジスペースの新たな基準を打ち立てたのです。乗降性、荷物の積載性、耐久性、整備性、サスペンションのセットアップなど、あらゆる面でF1を凌駕しています。また、選択可能なエンジンマッピングにより、あらゆる状況に応じたドライビングモードを実現しています」
開発中、チームが最も多くベンチマークしたスーパーカーは、実は28年前のF1だったとマレーは言う。それは、自然吸気のV12エンジンとマニュアル・トランスミッションスを搭載した、超軽量でセンターシートのスーパーカーという同じ条件のクルマを、これまで誰も作ろうとしなかったからである。
車両重量はわずか986kgと言われており、これはマレーが「平均的なスーパーカー」と呼ぶクルマの約3分の2の重量である。重量をコントロールするためには、単に新しい素材を使うだけではなく、意識を変えていく必要があるとマレーは考え、設計チームは毎週のようにミーティングを行っていた。
カーボンファイバー製チューブシャシーの重量は、全パネルを含めても150kgに満たない。ナット、ボルト、ブラケット、ファスナーなど、約900個の部品が軽量化のために個別に精査されている。
エクストラック社製の横置き6速MTは、新しい薄壁鋳造技術を用いて設計されており、F1のトランスミッションよりも10kg軽量となっている。一方、コスワース製V12は、F1に搭載されていたBMW由来のエンジンよりも60kg軽量化されており、フェラーリのものと比較しても大幅に軽い。カーボン製のドライバーシートで7kg、助手席でも3kgの軽量化が図られている。
速度記録には「興味がない」
なぜそのような手間をかけるのか。重いクルマでは、軽いクルマのメリットを発揮できないからだとマレーは語る。
T50はV12エンジンの軽さとポテンシャルにより、従来のスーパーカーのほとんどが950ps近い出力を必要としたパワー・ウェイト・レシオを、660psで実現している。当初、3890ccとされていた排気量は、現在では3994ccとなることが確認されている。
こうした驚異的な数値を並べているにもかかわらず、マレーはニュルブルクリンクのラップレコードを破ったり、驚異的な加速タイムを記録したりすることは目指していない。
「そのようなことには全く興味がありません。わたし達は、これまでに製造されたどのスーパーカーよりも価値のあるドライビング・エクスペリエンスを提供することに集中しています」
「でも、安心してください。速いですよ」
マレーは、パンデミックが始まったときにT50がまだ生産に入っていなかったことは幸運だったと述べている。開発スケジュールの遅れは、サプライヤーの協力のおかげですでに取り戻されているという。
「コスワースやエクストラックなど、英国の優秀な部品メーカーを使っています。T50は、英国が世界に誇るクルマの1つになると確信しています」
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ゴードン・マレーが1992年に発表したマクラーレンF1の「論理的な後継モデル」であるV12エンジン搭載の新型スーパーカー「T50」が、来年生産を開始する施設に近いサリー州のダンスフォールド飛行場でテストされた。
最初のドライブではマレー自身がステアリングを握り、次のように語っている。「XP2プロトタイプは現在、上限回転数である1万2100rpmよりもかなり低い回転数で走行していますが、最初のドライブで素晴らしい感触を得ました。レスポンスが良く、俊敏で、運転しがいのあるクルマでした」
「また、クルマの中央に座り、全方位の視界を確保するという素晴らしい体験をしました。もちろん、まだ多くの開発マイルが残っており、多くのプロトタイプを作らなければなりません。しかし、T50の開発の軌跡は、わたし達が望んでいるところにあるのです」
マレーが「最も純粋で、最も軽く、最もドライバーにフォーカスしたスーパーカー」と呼ぶこの新型車は、超軽量、ミドエンジン、オール・カーボンファイバー製の3シーターで、半世紀以上のキャリアを持つマレーにとって50台目のカーデザインであることから、T50と呼ばれている。
100台限定、価格は3億円以上
T50には、マレーが1978年のF1シーズンにブラバムBT46Bで初めてグランプリレースに導入した、地面効果を利用した「ファンカー」技術を改良したものが採用されている。
最高出力660psのコスワース自然吸気4.0L V12エンジン(レッドライン1万2100rpm)を搭載し、ゴードン・マレー・オートモーティブが全数を製造する。ゴードン・マレー・オートモーティブは、マレーが2017年にT50の計画を明らかにした際に、既存のデザイン事業の傍らに立ち上げた会社だ。
T50はわずか100台しか製造されず、英国での価格は280万ポンド(約4億2000万円)ほど。ほとんどが米国や日本をはじめとする世界の自動車愛好家たちに購入されており、みな60万ポンド(約9060万円)の手付金を支払っている。さらに75万ポンド(約1億1000万円)を支払い、残額は納車時に支払うことになっている。
最初の1台は2022年1月にオーナーの手元に届き、同年中に全数が完成する予定だ。生産終了後は、25台のハードコアなサーキット専用モデルが生産されることになっている。
マレーは、このクルマがレースに出場するのを見てみたいと言っているが、ロードカーに集中したいことと、2022年以降のスポーツカーやGTレースのレギュレーションがまだはっきりしていないことから、現時点では参戦には消極的である。
マレーが手がける空力デザイン
後輪駆動のT50は、マクラーレンの先代モデルと同様、ジェット戦闘機のようにドライバーをキャビンの中央に配置している。サイズはミニ・カントリーマンに似ており(ポルシェ911より小さく、アルピーヌ110より軽い)、1.85mのボディ幅を増やさないようデジタルサイドミラーを採用しているため、狭い場所でも高い操作性を発揮するはずだ。
スタイリングは、マレー自身がデザインチームのリーダーとなり、すべて社内で行われた。コンパクトなサイズ、アローヘッドのフロントパネル、ルーフに取り付けられたエアスクープ、二面体のドア、サイドガラスに採用された「チケットウィンドウ」など、その形状は明らかにF1を参考にしているが、さらに小柄に見せるための努力がなされている。
優美なフロントエンドとは対照的に、リアエンドには大型のエキゾースト、エンジンルーム冷却用のメッシュ、巨大なアンダーボディ・ディフューザー、400mmのファンなど極端な機能性が備わっている。このファンは48Vの電気システムで駆動し、ボディ下の空気の流れを急激に加速させることでダウンフォースを発生させる役割を担う。マレーは、これが「ロードカーのエアロダイナミクスのルールブックを書き換えるもの」だと言う。
ファン、ディフューザー、そしてボディ上部後縁のダイナミックなエアロフォイルを組み合わせることで、自然界のシステムよりもはるかに大きなダウンフォースを発生させ、これまでのスーパーカーでは考えられなかったレベルのコーナリンググリップを実現している。
空力モードは6つあり、そのうち「オート」と「ブレーキ」は車速とドライバー操作に応じて動作する。その他のモード(ハイダウンフォース、Vマックス、ストリームライン、テスト)は、コックピットから選択できる。
ハイダウンフォースはその名の通りだが、ストリートラインはファンをフル回転させ、上面と下面のアクティブフラップを格納することで「仮想ロングテール」を構築する。Vマックスは、V12にクランクマウントされた30psのスタータージェネレーターをフル回転させ、3分間のバーストでパワーを追加する。
240km/hを超えると、ルーフに取り付けられたインダクション・エアスクープにより、エンジンの最大出力は約710psにまで引き上げられる。
スイス時計のように精緻なインテリア
圧倒的な室内空間もT50のテーマの1つだ。マクラーレンF1はもちろん、現代のライバルよりも広く、フロアがフラットになったことでセンターシートへのアクセスも容易になっている。ジェット戦闘機をイメージしたアナログスイッチや計器類は比較的シンプルだが、スイス時計のような品質を誇る。
サイドに設置された2つのラゲッジは、F1と同様に広々としており、トップロードも可能だ。200万ポンド(3億円)を超えるコレクターズカーとなるが、日常的に使えるものであるとマレーは確信している。
「T50は完全なロードカーとなります。だからこそ、パッケージングとラゲッジスペースの新たな基準を打ち立てたのです。乗降性、荷物の積載性、耐久性、整備性、サスペンションのセットアップなど、あらゆる面でF1を凌駕しています。また、選択可能なエンジンマッピングにより、あらゆる状況に応じたドライビングモードを実現しています」
開発中、チームが最も多くベンチマークしたスーパーカーは、実は28年前のF1だったとマレーは言う。それは、自然吸気のV12エンジンとマニュアル・トランスミッションスを搭載した、超軽量でセンターシートのスーパーカーという同じ条件のクルマを、これまで誰も作ろうとしなかったからである。
車両重量はわずか986kgと言われており、これはマレーが「平均的なスーパーカー」と呼ぶクルマの約3分の2の重量である。重量をコントロールするためには、単に新しい素材を使うだけではなく、意識を変えていく必要があるとマレーは考え、設計チームは毎週のようにミーティングを行っていた。
カーボンファイバー製チューブシャシーの重量は、全パネルを含めても150kgに満たない。ナット、ボルト、ブラケット、ファスナーなど、約900個の部品が軽量化のために個別に精査されている。
エクストラック社製の横置き6速MTは、新しい薄壁鋳造技術を用いて設計されており、F1のトランスミッションよりも10kg軽量となっている。一方、コスワース製V12は、F1に搭載されていたBMW由来のエンジンよりも60kg軽量化されており、フェラーリのものと比較しても大幅に軽い。カーボン製のドライバーシートで7kg、助手席でも3kgの軽量化が図られている。
速度記録には「興味がない」
なぜそのような手間をかけるのか。重いクルマでは、軽いクルマのメリットを発揮できないからだとマレーは語る。
T50はV12エンジンの軽さとポテンシャルにより、従来のスーパーカーのほとんどが950ps近い出力を必要としたパワー・ウェイト・レシオを、660psで実現している。当初、3890ccとされていた排気量は、現在では3994ccとなることが確認されている。
こうした驚異的な数値を並べているにもかかわらず、マレーはニュルブルクリンクのラップレコードを破ったり、驚異的な加速タイムを記録したりすることは目指していない。
「そのようなことには全く興味がありません。わたし達は、これまでに製造されたどのスーパーカーよりも価値のあるドライビング・エクスペリエンスを提供することに集中しています」
「でも、安心してください。速いですよ」
マレーは、パンデミックが始まったときにT50がまだ生産に入っていなかったことは幸運だったと述べている。開発スケジュールの遅れは、サプライヤーの協力のおかげですでに取り戻されているという。
「コスワースやエクストラックなど、英国の優秀な部品メーカーを使っています。T50は、英国が世界に誇るクルマの1つになると確信しています」
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