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2020年02月09日

アウディS3プロトタイプ

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迫るジュネーブ・モーターショーでの発表text:Rachel Burgess(レイチェル・バージェス 氏)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治 氏)

成功の方程式というものがある。それは、プレミアムを作る時にも存在すると思う。快適性と高級さ、実用性の最適な掛け合わせという意味で。
フォルクスワーゲン・ゴルフ以上のプレミアムが欲しいなら、その答えはアウディA3といえる。新しい8代目ゴルフが発表となり、同じプラットフォームを持つセアト・レオンの姿も目にするようになったが、アウディA3は沈黙のままだった。


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アウディS3プロトタイプそんなアウディA3に動きがあった。一番初めに現れたのは、ホットハッチと呼ばれるクルマ。場所は大西洋に浮かぶ、ポルトガル領のアゾレス諸島。試乗するのは、最新のS3プロトタイプだ。
3代目となる現行型は登場から年数が経過しているものの、今も一定の人気を保っている。新しくなったBMW 1シリーズやメルセデス・ベンツAクラスと比較しても、ドライビングの質や販売台数で、大きな差は開けられていない。
新しい4代目のA3は、EVのeトロンに属するモデル開発に伴い、遅れていたようだ。数週間後に迫ったスイス・ジュネーブ・モーターショーで発表される予定となっている。アウディとしては、互角に戦ってきたドイツ製ライバルに対し、新型で差をつけたいと考えているだろう。
新しいA3は、2022年までに11種類のバリエーションが提供されると考えられる。若いビジネスマンや中国市場に適したA3サルーンや、5ドアのハッチバックは登場するが、2017年まで存在した3ドアのハッチバックはない。今回試乗するのは、その中の1つ、S3となる。
プラットフォームもエンジンも先代を継承高性能モデルをイメージリーダーとする戦略は、現代のコンパクトカーでは常套手段。アウディA3も例外ではない。少なくとも、アゾレス・ラリーというラリーステージもあるから、クワトロを装備するS3にとって、アゾレス諸島の選択は良いように思える。
20年前に初代S3が登場した時、プレミハム・ホットハッチという市場を上手に引っ張った。プジョー306GTiやルノー・クリオ・ウィリアムズなど、ホットハッチ人気が今より高く、多くのブランドがしのぎを削っていた頃だ。


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アウディS3プロトタイプそれ以降、多くのプレミハム・ブランドが追従している。もちろんフォルクスワーゲン・グループ内には強力なゴルフRという存在もあるが、BMW M135iやメルセデス・ベンツA35など、競争は激しい。さらにヒュンダイi30Nといった新参者も現れた。
スペックを見る限り、新しいS3は現行モデルに近い。同じMQBプラットフォームを用い、ゴルフRと同じ2.0Lの4気筒ガソリン・ターボエンジンを搭載する。最高出力は310psで最大トルクは40.7kg-mだ。
高性能モデルの場合、モデルチェンジの度にパワーアップするものだが、アウディは違う。他メーカーと同様に、環境規制対策に対応させながらパワーを維持すること自体が、難しい課題となっているのだろう。
試乗したのはプロトタイプで、0-100km/hなどの性能に関する数字は明らかになっていない。だが、おそらく現行の4.7秒を短くすることは難しい。
ステアリングホイールを握ると、S3らしさを感じる。ホットハッチとして並み以上の、充分な直線加速性能。馬鹿げていると感じるほどではない、バランスにある。RS3が登場すれば、それ以上の部分は補完してくれるはず。
統合してダイナミクスを管理プロトタイプとして、アウディはS3で強く強調したい部分が4つある。クワトロと呼ばれる4輪駆動システムとプログレッシブ・ステアリング、ダンパー、アウディのドライビング・セレクトモード。
これらの機能はS3に装備されるだけでなく、間もなく登場するA3の幅広いグレードでもオプションとして選べるという。ただし、これらの機能は現行のS3にも存在していた。


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アウディS3プロトタイプ新しい部分をエンジニアのセバスチャン・ストラッサーに聞いてみたところ、すべてを統合させる技術だという。「ダンパーとクワトロ、ブレーキによるトルクベクタリング機能などを含めた、ダイナミック・コントロールの中央機能は今も存在しています。今回、すべてが同じ情報で管理されるようになりました」
「例えば、クルマがアンダーステア状態にあるとき、カウンターを当てるように同調して機能します。分散されたシステムでは、お互いにどんな状態へ持ち込みたいのか、わかっていませんでした」
さらに、新しいダンパー・システムへ細かな調整を与えることで、目標の達成につなげたいとのこと。「予測可能な振る舞いを保ちつつ、より機敏に反応させることで、運動性能を向上させたいと考えました。また快適性とダイナミズムとの、より幅広い両立も目指しています」
「加えて、動的性能に影響を与えることなく、燃費効率も高めたいと考えています」 とストラッサーは説明する。簡単ではない内容に聞こえる。
すべての領域ですでに好印象S3の車内は、アウディとして見慣れた光景。風変わりな部分もない。筆者の考えでは、ホットハッチの大切な要素として、どれだけ短時間に理解し合える友人になれるか、がある。スーパーカーの圧倒するような走りとは、別の楽しみ方だといえる。
アウディS3ほど、すぐ親友になれるクルマは少ない。走り慣れない、風の強いアゾレス諸島のワインディングでも、限界領域に迫った走りを安心感を残したまま楽しめた。このプロトタイプは量産モデルにかなり近いらしいが、S3のすべての領域での好印象ぶりに、高い訴求力を感じた。


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アウディS3プロトタイプただし、挙動の読みに関しては、万人受けする設定ではないかもしれない。もっとエッジの立ったフィーリングがお好みなら、ホンダ・シビック・タイプRやヒュンダイi30Nの方が、満足感は高いはず。
プログレッシブ・ステアリングは、フィードバックが改善しているが、それ以外の大きな変化は感じられない。だが、操舵時の入力がより直感的になった。タイトコーナーでステアリングを切った際、修正の必要がほとんどない。
ステアリングには3つのモードが用意されており、腕試しのようなルートであっても、切り初めから重み付けの良い「バランスド」が最も筆者の好みだった。「ダイナミック」モードはやや人工的な印象がある。
乗り心地の上質さは、従来からS3のストロングポイント。新しいS3となっても、がっかりすることはないだろう。
市街地には予想外に長い石畳の道や、ツギハギも多かったが、サスペンションを「コンフォート」モードにしておけば上手になだめてくれる。「ダイナミック」を選択しても、予想よりも乗り心地は良かった。
熟成の効いたホットハッチ2.0Lのエンジンは基本的に不変。組み合わされるパドルシフト付きの7速デュアルクラッチATとの相性も良い。次世代のS3に電動化技術が盛り込まれないとは考えられないから、新しいS3に搭載される純粋なターボエンジンを、今味わう価値は充分にある。
車内の写真は、ジュネーブ・モーターショーでの発表まで掲載できない。文章で説明するなら、アウディに期待通りのプレミアム感あるデザインが施され、物理的なボタンはかなり少ない。今どきの流れだ。


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アウディS3プロトタイプインテリアの「S」ならではの違いは、随所に散りばめられたロゴと、スポーツシートに限定される。だがボディでは、主張の強いフロントグリルや、大型化されたフロントスポイラーとサイドスカート、専用のヘッドライトなどが高性能をアピールしている。
実際の仕上がりは、クルマの見た目通り、予測できるものとなりそうだ。S3は、熟成の効いたホットハッチ。控えめな価格でスリリングなドライビングに興じるだけでなく、日常的な利便性と快適性もちゃんと両立できるだろう。
ライバルほどドライバーを興奮させることは、ないかもしれない。だが、同カテゴリーのトップとして、相応しいバランスに仕上がる可能性はかなり高い。
アウディS3プロトタイプのスペック価格:3万7000ポンド(529万円・予想)
全長:−
全幅:−
全高:−
最高速度:249km/h(予想)
0-100km/h加速:4.7秒(予想)
燃費:−
CO2排出量:−
乾燥重量:−
パワートレイン:直列4気筒1984ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:310ps
最大トルク:40.7kg-m
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

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