2021年05月25日
北海道へ行く前に読んどこう「熊嵐」
コロナの状況がアレなので、今年の夏に北海道旅行を予定にすることはできるのか?できないのか? そんな心配もありますが、例え断念したとしても、北海道を知る上でもちょっと怖い本ですがいかがでしょう?(正確には「羆嵐」と書きます。羆=ヒグマ)
最近、野生の動物たちが民家近くに現れたというニュースをよく耳にします。
元々は動物たちの生息地に人間が入り込んでいることもあるし、気象の変化もかかわっているのかな?と感じたり。できれば上手く共存していかれればいいのですが、野生動物たちの生きるための本能というのは、人間の力を凌駕するものであることは誰もが知るところ・・・のはずなのですが、
そうでもなく、わりとお気楽に考えている方々がいるのも事実。
現に、北海道で野生の熊が見えた!となると、こぞって車から降りて写真を撮りまくる観光客や、その扱いに困っている地域の方や保護団体の方たちの姿を伝えるニュースなども目にします。
一瞬の油断、たった一人の甘い考えが、その後の悲劇を生むこともある。
双方にとっても不幸なことにならないよう、少しでも多くの人が知っておかなければならないことがあると思います。
そんな意味で、「羆嵐(くまあらし)」(吉村昭著)はお勧めです。
この小説は、大正時代に実際に起きた野生の熊による被害を元に書かれていて、その臨場感が凄まじいのです。夜、ひとりで静かな部屋に籠ってこの本を読んでいて、本当に背筋が凍りました。
以前北海道を車で旅した時に、札幌から支笏湖へ向かう道を走ったことがあります。すれ違う車も無く、左右を森に囲まれた山道。昼間で木々の間から光が差す光景は美しくもあり、寂しくもあり。漠然と、ここで車が故障したら嫌だなぁ…と考えたりもしました。
そんな時、道の真ん中にチョコンと座るキタキツネに出会いました。
こちらは車から降りることも窓を開けることもせずに様子を見ているだけでしたが、あれは何かを期待していたのでしょうか。暫くこちらを伺っていたキツネですが、遅れてやってきた後続車のほうに歩き出していったのを見て私たちはその場を離れました。それまでの経験がキタキツネをあのような危険な行動に導いているのかもしれないと思うと、なんとも複雑な思いでした。
あの時のことを、キタキツネではなくヒグマに置き換えてみましょう。
しかも夜。夕方でもいいでしょう。
この本を読んだ後にこの光景を想像すると、もう、ゾワゾワしてしまいます。
以前、海外のパニック映像紹介番組で、車で野生動物の間を回るサファリゾーンにいるにもかかわらず、何故か車から降りてライオンに襲われている人の映像を見たことがあります。恐怖心が正常な判断を狂わせることを見せられた思いでした。
そういえば、再現ドラマと共に過去の事件を振り返る番組が人気のようですが、この獣害事件も何度か取り上げられていたのを見たことがあります。でも、不思議とこの事件は小説のほうが怖いのです。きっと映像では、特に現在のコンプライアンス的にも、忠実な表現は無理なのでしょう。
静かに近寄る見えない恐怖。いつ自分が襲われてもおかしくない切羽詰まった状況。
暗闇の中。雪の積もった静かな自然の世界で、相手は一撃で自分たち人間を打ち負かす力を持っている。
そんな相手におびえる人々の感情が、手に取るように読み取れるからかもしれません。
本の途中、一度自分なりのシミュレーションをしてみたんですよ。
走って逃げる?
人間よりも早く走り、目の前の障害物を物ともしない相手です。
木に登って助けを待つ?
熊は、木にも登れます。
どこかに隠れて…
想像以上に嗅覚が強いそうです。
逃げ場、無いじゃないですか!!
ヒグマ最強!!
この本を読んだ感想は、これに尽きました。
そんな最強の野生動物ヒグマであっても、人間に害を与えるとなれば追い詰められ、殺処分されることになるのです。相手は自分の生活圏を守るだけ、食料を確保するだけ、子供を守るため、生きるためだけの行動だったとしても。
相手の力を知り、相手を敬い、領域を犯さない。
出来る限りの共存の道。
安易な行動を慎むために、まずは「知る」という意味で、未読の方にお勧めです。
最近、野生の動物たちが民家近くに現れたというニュースをよく耳にします。
元々は動物たちの生息地に人間が入り込んでいることもあるし、気象の変化もかかわっているのかな?と感じたり。できれば上手く共存していかれればいいのですが、野生動物たちの生きるための本能というのは、人間の力を凌駕するものであることは誰もが知るところ・・・のはずなのですが、
そうでもなく、わりとお気楽に考えている方々がいるのも事実。
現に、北海道で野生の熊が見えた!となると、こぞって車から降りて写真を撮りまくる観光客や、その扱いに困っている地域の方や保護団体の方たちの姿を伝えるニュースなども目にします。
一瞬の油断、たった一人の甘い考えが、その後の悲劇を生むこともある。
双方にとっても不幸なことにならないよう、少しでも多くの人が知っておかなければならないことがあると思います。
そんな意味で、「羆嵐(くまあらし)」(吉村昭著)はお勧めです。
この小説は、大正時代に実際に起きた野生の熊による被害を元に書かれていて、その臨場感が凄まじいのです。夜、ひとりで静かな部屋に籠ってこの本を読んでいて、本当に背筋が凍りました。
以前北海道を車で旅した時に、札幌から支笏湖へ向かう道を走ったことがあります。すれ違う車も無く、左右を森に囲まれた山道。昼間で木々の間から光が差す光景は美しくもあり、寂しくもあり。漠然と、ここで車が故障したら嫌だなぁ…と考えたりもしました。
そんな時、道の真ん中にチョコンと座るキタキツネに出会いました。
こちらは車から降りることも窓を開けることもせずに様子を見ているだけでしたが、あれは何かを期待していたのでしょうか。暫くこちらを伺っていたキツネですが、遅れてやってきた後続車のほうに歩き出していったのを見て私たちはその場を離れました。それまでの経験がキタキツネをあのような危険な行動に導いているのかもしれないと思うと、なんとも複雑な思いでした。
あの時のことを、キタキツネではなくヒグマに置き換えてみましょう。
しかも夜。夕方でもいいでしょう。
この本を読んだ後にこの光景を想像すると、もう、ゾワゾワしてしまいます。
以前、海外のパニック映像紹介番組で、車で野生動物の間を回るサファリゾーンにいるにもかかわらず、何故か車から降りてライオンに襲われている人の映像を見たことがあります。恐怖心が正常な判断を狂わせることを見せられた思いでした。
そういえば、再現ドラマと共に過去の事件を振り返る番組が人気のようですが、この獣害事件も何度か取り上げられていたのを見たことがあります。でも、不思議とこの事件は小説のほうが怖いのです。きっと映像では、特に現在のコンプライアンス的にも、忠実な表現は無理なのでしょう。
静かに近寄る見えない恐怖。いつ自分が襲われてもおかしくない切羽詰まった状況。
暗闇の中。雪の積もった静かな自然の世界で、相手は一撃で自分たち人間を打ち負かす力を持っている。
そんな相手におびえる人々の感情が、手に取るように読み取れるからかもしれません。
本の途中、一度自分なりのシミュレーションをしてみたんですよ。
走って逃げる?
人間よりも早く走り、目の前の障害物を物ともしない相手です。
木に登って助けを待つ?
熊は、木にも登れます。
どこかに隠れて…
想像以上に嗅覚が強いそうです。
逃げ場、無いじゃないですか!!
ヒグマ最強!!
この本を読んだ感想は、これに尽きました。
そんな最強の野生動物ヒグマであっても、人間に害を与えるとなれば追い詰められ、殺処分されることになるのです。相手は自分の生活圏を守るだけ、食料を確保するだけ、子供を守るため、生きるためだけの行動だったとしても。
相手の力を知り、相手を敬い、領域を犯さない。
出来る限りの共存の道。
安易な行動を慎むために、まずは「知る」という意味で、未読の方にお勧めです。
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