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2019年02月22日

連載小説「平行線の先に」   4章


 一月。私と紗羅は一緒の日に働くことはなくなった。あっと言う間の一カ月間だった。そのかわりに今では定休日に一緒に家でご飯を食べたりDVDを観たりしている。お金のかからない遊び方を色々考えて。
 
私はこれって友情よりボランティア精神に近いと感じている。おかしい?友だちよりボランティアの方がしっくりくるし楽なんて。奉仕したいからしている。ただそれだけ。他人にサービスしている自分に酔ってるだけなのかもしれない。少なくとも紗羅と遊んでいるときは夫のことをうじうじ考えなくて済む。ありがたい。

 私も小説を書いてみようかな。なんて。主人公はシングルマザーの女性で。大ちゃんびっくりするだろうな。

バイトが休みの日。紗羅と宇宙が家に遊びにきた。手土産に自家製ピクルスを持ってきてくれた。

「わお、ピクルス大好き。ありがと」
「こんなものしかなくって。わーあいかわらずキレイな家」
「ゆっくりしてって」
「おじゃまします」

 宇宙は脱いだ靴をキチンとそろえた。ちゃんとしつけされているんだ。

「おりこうさんだね」

 はにかむ宇宙。とてもキュートだ。
 イッタラのマグカップで珈琲を出そうとしたが、

「お酒の方がよければワインあるけど」
「いいね。昼間っから呑んじゃおう」
「そらちゃんはオレンジでいいかな」

 グラスとワイン、そしてジュースを取りに行く。紗羅と宇宙はマフラーとコートを脱いでソファで寛いでいる。



chee1.jpeg



「ダンナさんの小説ってどんなの?」
「いわゆる推理小説ってやつ」
「読んでみようかな」
「一冊あげる」
「いーよ。貸して。必ず返すから」
「わかった」

 宇宙はソファに座って部屋の中をキョロキョロ見ている。

「何か気になる?」
「いい匂い」
「ああ、フレグランスね。ラベンダーの。ルーム用の置いてるから」
「うちにもほしい」
「ダメ。うちは狭いから」

 宇宙はブーとふくれる。さらに可愛い。
 私は書斎から小説を一冊持ってきた。

「これ読んでみて」
「『刑事○○』?あたしこれ見たことある」
「本屋で?」
「ううん。たぶん電車の中。広告見たことある」

 一番長く続いたシリーズ物である。広告を目にしていてもおかしくない。

「ありがとう、覚えていてくれて。うれしい」

 紗羅はうそをつく人間ではない。むしろ正直過ぎるくらいだ。いい意味でも悪い意味でも表裏がない。
 私はワインの栓を抜いた。

「カンパイ」

 宇宙がサイドボードの上の写真立てをジッと見ている。

「ダンナさん?」
「そう」
「優しそう」
「ありがとう。大好きなんだ」
「いいね。あたしはもう忘れた」
「どんな人だったの?」
「基地の男でさ。横須賀で出会って。すぐこの子ができちゃって。報告したらアメリカ帰りやがった」
「ひどいね」
「手紙も仕送りも一切なし」
「訴えようか?」
「そんな金ないよ」
「…仕事かえたら?なんて、私が言うのおかしいけど」
「いいのがあればねえ」
「どんな仕事がやりたいの?」
「…ホテルとか。でも無理だろうな。あたし言葉づかいわるいし」

 宇宙が退屈そうに見えたので外国映画のDVDを流した。宇宙は興味を示した。

「さっきの話だけど、いい仕事あるよ。もしかしたら合ってるかもしれない」
「どこ?」
「京都の旅館なんだけど。仲居さんやってみない?住み込みでまかないつきよ」
「サウンズグッド」
「見学に行ってみる?」
「行きたい。けど金ないし」
「私が車運転する」
「いーよ。悪いから」
「お詫び。いつかの」
「なんかあったっけ?」
「失礼なこと言っちゃって。ごめんなさい」
「忘れた」
「ね、来週京都に行く用事があるから一緒に行かない?一泊で」
「申し訳ないけど、断る。…京都は寒いみたいだし。東京が好きなんだ。ごめん」
「そっか。残念」

 来週久しぶりに実家へ帰省する予定だ。一人では気が重かった。大人しく映画を観ていた宇宙が、

「マミィ、アタシ行ってみたいキョウト。だめ?」

 紗羅は何も言わずに宇宙の顔を撫でている。
羨ましい。真央はもしもこどもを授かることができるならば女の子がいいと思っていた。だってお人形さんみたいなんですもの。女の子のいる母親は、生意気だとか本気で喧嘩するとか言ってるけど。絶対、楽しいと思う。

「ごめん。やっぱり一度、見てみたいわ」
「そうこなくっちゃ」

 私たちはもう一度乾杯をした。



0507image6.jpeg



 火曜日の夜、東京を出発して、水曜日の早朝に京都に着いた。
老舗旅館『万葉』に到着するや否や私たちは小さな露天風呂に入った。宇宙は車の中で寝ていたせいかすごく元気だった。キャーキャー騒ぐので静かにさせるのに苦労した。

「見て、星が見えるよ。いいじゃん、ここ。気に入った!」
「いいでしょ」
「まさかあんたが旅館のお嬢さんとはね」
「継ぎたくなくて東京へ逃げたの」
「そんでダンナと出会った」
「そう」
「明日は面接だよ、早く寝よう」
「うん。はーきもちかったー」

 客室で布団をひいて寝たのが朝の四時ごろだった。九時に電話が鳴って起こされた。母だった。挨拶に来いと。
 慌てて紗羅と宇宙を起こし、事務所へ向かった。母は小柄だが態度はデカイ。

「遅い」
「真央のおっ母さん?」
「おっかさんやて、変わったお人どすなあ」

 母も紗羅もお互いに高圧的な態度をとっている。まずい。

「紹介します。友人の黒田紗羅さん。職場の先輩。接客のプロです」

 母はじろじろ紗羅と宇宙を見ている。

「この子はサラの娘さんでソラちゃん」
「そらです。よろしくお願いします」
「ママよりしっかりしてはるなあ」

 母は笑った。

「京都の人って腹黒いんでしょ?」

 母はきょとんとした後、大きな声で笑った。

「はっはっは。紗羅さん、おもろい。ほんとにここで働きたいんどすか?」
「できれば…」

 母は厳しい顔つきになった。

「お着物一人で着らはりますか?」
「ハイ」
「体力ありますか?」
「体力しかありません」
「掃除は好きですか?」
「ダイスキ」
「…合格どす」

 紗羅がぱあっと顔を赤くして笑った。

「よかったね!」

 私も嬉しくなった。

「いつから来られますのん?」
「なるべく早く働きたい」
「よろしい。こっちへ来なはれ」

 母が紗羅に旅館の中を案内してくれた。
 私と宇宙はロビーでお茶をして待っていた。

「ねえ、そらちゃん。転校するの嫌じゃない?」
「嫌だけど、ガマンする」
「えー、我慢するのお?」
「だって、ママが楽しくお仕事できる方がいいから」
「オトナだね、そらちゃんは」
「ふつう」
「そっか…。後で金閣寺に連れて行ってあげる」
「きんかくじ?」
「うん。金ぴかぴんのお寺だよ」
「金ぴかぴん?それ、もらえるの?」
「ううん。見るだけ」
「な〜んだ。もらえたらいいのに金。金ておカネのことでしょ?」
「お金ではないけど、みたいなものだよね〜」
「あーあ、ママにあげたかったのに」

 子供の発想って面白い。
 宇宙は、出会ってまだ二ヵ月くらいだけどもう初めて会った時と顔つきが違う。少しずつ大人のカラダになっていく。成長のスピードが速い。マミィはついていくのが大変だ。宇宙もいつか大人の女になってしまうんだ。たくさん傷つかないと素敵な大人の女にはなれない。少しだけ切なくなった。そして心から応援したくなった。

 紗羅たちが京都に引っ越したら、毎月遊びに来よう。あれ?なんか友達みたい。ボランティアは卒業か。
 やっぱり友達の方がいい。宇宙の濃くて長いまつ毛をぼんやり見ていたら宇宙がニコッと白い歯を見せて笑った。





おわり

(この物語はフィクションです)









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