2016年12月16日
改正年金法が可決成立しました。
ご承知の通り、昨日、年金制度改革法案が可決成立しました。改正の主な内容は、
@これまでは、原則として、物価の変動に連動して年金の受給額を決定していたのを、を賃金の変動に連動して決定する仕組みに見直す。例えば、「賃金」の下落が「物価」のそれより大きい場合、これまでは物価に合わせて減額していたのを、賃金の下落幅に合わせて減額する。「物価」が上昇して「賃金」が下落した場合、これまでは受給額は据え置かれていたのを、賃金の下落幅に合わせて減額するといったことになる。
A受給額が増加する際に伸び率を抑制する仕組みとして2004年から導入された「マクロ経済スライド」をより強力に進める。具体的には、マクロ経済スライドを適用できなかった場合に、本来であれば下落させるはずであった幅を記録しておき、翌年度以降に物価や賃金が上昇して支給額を増やせるときに前の下落分を反映させる、いわばキャリーオーバー的な仕組みを導入する。
Bこの10月から被保険者となるべき従業員が常時500人を超える企業においては、いわゆる短時間労働者(週所定労働時間が20時間以上の者)にも社会保険(健康保険、厚生年金保険)を適用することが義務付けられましたが、これ以下の企業においても、労使の同意があれば社会保険に加入できる。
といったものです。
前にも書きましたが、このような小手先だけの改正では今の仕組みを維持できなくなっているのは、明らかです。
現在の「世代間扶養」の仕組みを採り続ける以上、支え手である若年者の数が減少し、受け手である高齢者の数が増加する現象が続いている限り、いずれは壁にぶち当たることになるでしょう。
ある大学教授の試算では、社会保障全体の世代別損得勘定を見てみると、1960年生を境に以後の世代は全体としてマイナスとなってしまうそうです。
だからといって、「年金保険料なんてバカらしいから払うのよそう」とは考えないでくださいね。理由は以前このブログに記述した通りです。
なお、Bについては実効性があるのでしょうか?「労使の同意」となっていますから、いくら労働者の方が社会保険を適用してもらいたくても、会社側の負担が発生するのですから、企業側が首を縦に振ってくれるのは相当難しいのではないでしょうか。
最後に、先に損得勘定について試算をされた大学教授の見解をお示しし、この度の締めくくりとさせていただきます。
【保険の5つの原則】
@保険の掛け金は掛け捨てである。事後的に、保険を使った人も使わない人も、事前的には、両者ともリスクに備えられたので、そこに損得は存在しない。
A保険は加入者の間で「公平」でなければならない(公平でなければ成立しない)。
B保険は、同質のリスクを抱える集団の間にかけられる必要がある(異なるリスクを持つ人には、異なる保険料を徴収する)。
CBの条件のもと、事前的な所得再分配は、「世代内」であれ、「世間」であれ、正当化されない。
D保険の運営は保険料で行うべきであり、その運営に公費を投入することは正当化されない。
(鈴木亘著「だまされないための年金・医療・介護入門」)
@これまでは、原則として、物価の変動に連動して年金の受給額を決定していたのを、を賃金の変動に連動して決定する仕組みに見直す。例えば、「賃金」の下落が「物価」のそれより大きい場合、これまでは物価に合わせて減額していたのを、賃金の下落幅に合わせて減額する。「物価」が上昇して「賃金」が下落した場合、これまでは受給額は据え置かれていたのを、賃金の下落幅に合わせて減額するといったことになる。
A受給額が増加する際に伸び率を抑制する仕組みとして2004年から導入された「マクロ経済スライド」をより強力に進める。具体的には、マクロ経済スライドを適用できなかった場合に、本来であれば下落させるはずであった幅を記録しておき、翌年度以降に物価や賃金が上昇して支給額を増やせるときに前の下落分を反映させる、いわばキャリーオーバー的な仕組みを導入する。
Bこの10月から被保険者となるべき従業員が常時500人を超える企業においては、いわゆる短時間労働者(週所定労働時間が20時間以上の者)にも社会保険(健康保険、厚生年金保険)を適用することが義務付けられましたが、これ以下の企業においても、労使の同意があれば社会保険に加入できる。
といったものです。
前にも書きましたが、このような小手先だけの改正では今の仕組みを維持できなくなっているのは、明らかです。
現在の「世代間扶養」の仕組みを採り続ける以上、支え手である若年者の数が減少し、受け手である高齢者の数が増加する現象が続いている限り、いずれは壁にぶち当たることになるでしょう。
ある大学教授の試算では、社会保障全体の世代別損得勘定を見てみると、1960年生を境に以後の世代は全体としてマイナスとなってしまうそうです。
だからといって、「年金保険料なんてバカらしいから払うのよそう」とは考えないでくださいね。理由は以前このブログに記述した通りです。
なお、Bについては実効性があるのでしょうか?「労使の同意」となっていますから、いくら労働者の方が社会保険を適用してもらいたくても、会社側の負担が発生するのですから、企業側が首を縦に振ってくれるのは相当難しいのではないでしょうか。
最後に、先に損得勘定について試算をされた大学教授の見解をお示しし、この度の締めくくりとさせていただきます。
【保険の5つの原則】
@保険の掛け金は掛け捨てである。事後的に、保険を使った人も使わない人も、事前的には、両者ともリスクに備えられたので、そこに損得は存在しない。
A保険は加入者の間で「公平」でなければならない(公平でなければ成立しない)。
B保険は、同質のリスクを抱える集団の間にかけられる必要がある(異なるリスクを持つ人には、異なる保険料を徴収する)。
CBの条件のもと、事前的な所得再分配は、「世代内」であれ、「世間」であれ、正当化されない。
D保険の運営は保険料で行うべきであり、その運営に公費を投入することは正当化されない。
(鈴木亘著「だまされないための年金・医療・介護入門」)
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