2014年11月10日
柿の色
たわわに実った柿が鮮やかに色づいてきたと事務局から写真が届きました。
その詞書きによりますと、柿色に色づいた柿を見ると、昔、教科書に出ていて小学校で教わった江戸時代の陶工・酒井田柿右衛門の逸話、「柿右衛門は夕陽に染まる柿を見て柿色の赤絵磁器を苦心の末に作ったという」逸話、が思い出されるそうです。
赤絵磁器は、ヨーロッパにも輸出され世界的な名声を誇ることになります。陶工柿右衛門が器に映したいと願った赤色がこの柿の赤さで、特に色々な赤の色の表現には苦心を重ねたといいます。
柿右衛門は柿色の赤があまりに有名ですが、世界的に定評のある柿右衛門の特徴としては、白磁の白を生かすための色絵と言われるくらい空間が多くすっきりとしていることです。 「柿右衛門の世界展」(佐賀・2003)氏)で第十四代柿右衛門氏が語られています。
〈簡単にいうと「余白を尊重せよ」という意味ですね。別の言葉でいうと「絵をかきすぎない」ことですね。柿右衛門の器というと、みなさん華やかな絵に目が行きがちですが、実は形と土の美しさが基本なんですよ。形を無視したり、土の美しさを損なうような絵は、いくら「絵が上手」でもいい絵付けとはいえません。〉
余白を尊重する、余白を生かす、余韻を残す、書き過ぎない、言い過ぎない……、短歌にも書にも通じることですね。肝に銘じたいお話です。では、短歌を二首あげておきます。(参考:『広辞苑』『植物短歌辞典』)
島木 赤彦(『氷魚』)
楢山の窪みくぼみの村落に柿の果(み)しるく色づきにけり
香取 秀真(『天之真榊』)
鈴なりに赤玉つゞる柿のみはけだしことごとく渋きなるべし
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