2017年03月17日
レイコフ&ジョンソン『レトリックと人生』
どんどん行きましょう〜
みなさんはアメリカ認知科学の最強コンビ、ジョージ・レイコフ&マーク・ジョンソンをご存知でしょうか。
彼らの原点的かつ記念碑的著作こそがこの『レトリックと人生』
原題『Metaphors We Live By』
メタファー?「たとえ話」のこと?それがどうしたの?
そんな声が聞こえてきそうですがどっこい、その「たとえ話」こそが私たちの概念体系の本質を根本的に形成している、というのが彼らの主張なのです。
つまり、人は天国に昇り、地獄に堕ちるのです!
は?何言ってんの?とおっしゃる前に、どうかもう少し読み進めて下さい(笑)
これは人が死んだらどうなるか、という話ではなく、なぜ天国に「昇り(UP)」地獄に「堕ちる(DOWN)」という表現が使われるか、ということが問題なのです。
天国に「堕ちて」地獄に「昇る」のではなぜダメなのか?と
この答えを彼らは、人間の直接的な身体経験に求めています。
つまり、人間は「重力場」というフィールドで直立二足歩行をしている、ということです。健康で理想的な人の状態は背筋を伸ばして立っていることであるから、「上」が「良い」とされ、逆に病気で寝たきりの人の状態は「良い」とは言えないから、「下」にいくほど「悪い」という概念が形成された、というわけです。
このように、身体経験に基づくメタファー(たとえ話)こそが人間特有の概念体系を形成した、というのが彼らの革新的な主張なのです。
確かに牛や馬にもし言葉があったら、「天国に進む」とか「地獄に戻る」とか言うかもしれないですね〜
頭が「前」についているのだから!
もう一つ本文から彼らの例証の傑作を引用しましょう。
ARGUMENT IS WAR
<議論は戦争である>
Your claims are indefensible.
<君の主張は守りようがない(=弁護の余地がない)。>
He attacked every weak point in my argument.
<彼は私の議論の弱点をことごとく攻撃した。>
His criticisms were right on target.
<彼の批判は正しく的を射ていた。>
I demolished his argument.
<私は彼の議論を粉砕した。>
I've never won an argument.
<私は彼との議論に一度も勝ったことがない。>
You disagree? Okay, shoot!
<異論があるだと?よし、撃って(=言って)みろよ!>
If you use that strategy, he will wipe you out.
<そんな戦法じゃ、彼にやられてしまうぞ。>
He shot down all of my arguments.
<彼は私の議論をすべて撃破(=論破)した。>
G・レイコフ、M・ジョンソン『レトリックと人生』渡部昇一、楠瀬淳三、下谷和幸訳 大修館書店 p4〜p5
英語と日本語で同じように「議論」を「戦い」にたとえ、これほどまでに一致して暴力的な表現を使っていようとは!
これでは与党と野党が仲良くできないのも当然ですね…。
レイコフとジョンソンは次のように提案しています。
議論をダンスのように考える文化を想像してみなさい、と。
価格:2,484円 |
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