2017年03月17日
サミール・オカーシャ『科学哲学』
今日紹介するのは、たびたびお世話になっている「1冊でわかる」シリーズから。
サミール・オカーシャの『科学哲学』です。
洋書の邦訳であるためなのか、科学哲学の基礎が非常に包括的かつ簡潔にまとめられており、入門書として最適です。
カール・ポパー、デイヴィット・ヒューム、トーマス・クーンといった、科学哲学をやるうえで必須の面々の思考が分かりやすく解説されています。
例えば、「ヒュームの帰納法の問題」
科学は思いっきり帰納法に依存していますが、それを合理的に正当化することはけっしてできない、とヒュームは言うのです。というのも、私たちが帰納的推論をする際に必ず前提にしている「自然の斉一性」が真である事を証明できないからです。
「自然の斉一性」とは、未調査の対象が同種のすでに調査済みの対象と重要な点で類似している、ということ。
例えば、昨日買ってきた鉛筆はいきなり爆発する訳が無い、と信じて疑う人はほぼいないでしょう。その鉛筆も今まで使ってきたたくさんの鉛筆と似たものであって、鉛筆が爆発したことなどこれまでに一度もないのだから、(帰納法的には)当然の事です。
ヒュームの言っていることは一見ばかげた主張に見えるかもしれません。みなさんの中には、
「そんなこと疑ってもしょうがない。今まで科学は帰納法を用いて数々の確実な成果(月面に人を送ったり、コンピューターを作ったり)をあげてきたじゃないか。だから帰納法は正当なものに決まってる。」
と思った方もいるでしょう。
しかしヒュームの懐疑論はなかなか厄介な代物で、上記のような反論自体が、「帰納法は今まで正しかったのだから、帰納法は正しい」といった帰納法を用いていることを指摘しているのです!
いわば帰納法の斉一性を前提としています。
しかし帰納法の斉一性自体が、帰納法でしか証明できないことをヒュームは主張しています。
これはなかなか難しい問題ですね。
当ブログではいずれこの問題への反論も載せたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いします!
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