2019年07月01日
融合篇〈人魚姫〉一章
一節
おはようございます。
朝のニュースをお届けします。
昨日、山手線内で発生した
事故により、
未だダイヤの乱れが続いています。
また各地で電車の事故が
相次いでおり、
朝の通勤通学に大幅な影響が
出るとみられています。
昨夜起きた新宿での
爆発事故の件もあり、
東京都は不要な外出を控えるよう、
都民に広く呼び掛けを行っています。
電車に飛び込んだOLの、その後の話。
乱れたダイヤと謎の爆発事故。
これから語るは、悲劇か喜劇か。
それを決めるのは、読んでいるアナタ。
Normal
- 【 人魚姫 】あら……?私、生きているの?
- 【 人魚姫 】どうして?電車に飛び込んだのに……
- 【 駅 員 】駄目です。ホームに立ち入らないで!
- 【 駅 員 】ただいま電車は全線に渡って使えません!!
- 【 駅 員 】くそっ!あの事故さえなけりゃ……
Hard
二節
駅から追い出されて、ふらふらと道を歩く。
……不思議。
私、自殺したはずなのに。
それとも――これは夢の続き?
三節
……そう、夢。
私、夢の中で変な生き物に襲われていた。
ほら、今もこうして――
四節
「なんだアレ、やべえよ」
「え?なに?コスプレ?」
「その武器、良く出来て−−痛っ!」
「ちょっとマジふざけいやねgfjあ!?」
五節
−−速報です。
台東区の路上で通り魔事件が発生した模様
です。目撃者によると犯人は黒づくめの
服装をしており、複数いたとみられ――
六節
電車に轢かれる瞬間を覚えている。
ガラス越しに見えた、運転手の顔。
ホームにいた人々の、声にならない叫び。
これ以上ない、悲劇の結末だったのに。
七節
「おーい、誰かー!」
「お願い、助けて!」
「痛いよぅ……お母さん……」
「いやだ……死にたくない……」
八節
電車事故の続報です。今度は総武線内
にて脱線事故が起きている模様です。
また、中央線の踏切内でも
電車と動物との接触事故が発生し−−
九節
街の至る所から悲鳴が聞こえてくる。
心を引っ掻くような、痛々しい呻きも。
……私に起きるはずの悲劇が、
街中に広がっている。
十節:前半
「黒い人間のようなもの」
「黒い動物のようなもの」
突然発生した謎の生き物たちにより、
都内は混乱をきたしていた。
様々な悲鳴、呻き、
泣き声、罵声が響く中、
死ぬはずだったOLは、
ふらふらと街中を彷徨っている。
「どうして……?」
問い掛けても答える者はいない。
「どうして……?」
それでもOLは問い続ける。
「私に、悲劇が起きないの!?」
悲劇のヒロインになるはずだったOLは、
悲劇に見放されていた。
それも、ある種の悲劇。
本人が求めるものとは程遠いけれど。
Normal
- 【 人魚姫 】こんなのは違う。私は、私が望んだのは
- 【 人魚姫 】電車に轢かれて……ぐちゃぐちゃになって!
- 【 人魚姫 】みんなから『私が』憐れまれる最期だった!
Hard
十節:後半
お昼のニュースです。
昨夜、山手線で発生した駅構内での
爆発事故の件で、
新たな情報が入りました。
当時、駅にいた目撃者によると、
爆発が起きる直前に
ホームから身投げをした
女性がいるとのことです。
また、他の目撃者からは
「女性と電車が接触した瞬間に
爆発が起きた」との情報も
寄せられています。
これを受け、警視庁ではこの女性が
事件と何らかの関わりがあるとし、
相次ぐ列車事故の件も合わせ、
テロの疑いも含めて
捜査を行うとの事です。
OLが飛び込んで轢かれるはずだった
駅では、何故か爆発事故が起きていた。
そして、それを引き起こしたのは――
彼女だった。
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