2019年03月02日
ハーメルン / クラッシャー
「さあ、行きましょう。美しさの種を持つ者達よ」
男が吹く笛の音に釣られて、子供達はふらふらと歩きだした。
その数は一人二人と増えていき、町から子供は消失した。
消えた子供達に気付いた大人達は慌てて周囲を探したが、人っ子一人見つからない。子の名を呼ぶ父親と泣き喚く母親、そして――その陰には歪な笑みを浮かべた老人達がいた。
「良かった。これで食い扶持が減ったなぁ」
「子供達が消えなければ、私達が捨てられるところだった」
「なぁに、子供など機会を見て、また作ればいいだろう」
己の命が助かったことに老人達は安堵したが――
勝手な言い分に憤った若い夫婦達は、老人達を溺死させた。その話を遠くの地で聞いた子供達は「なんて醜いんだ」と眉をひそめ、町から連れ出してくれた笛吹男に感謝したという。
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