2018年02月17日
スノウホワイト / 淫蠍のクレリック
暗闇の中に佇む蠍。それが私である。私は思い出していた。砂漠に囲まれた王宮の奥深く、この後宮に集う女達のことを。私の持ち主は後宮の女官長だが、彼女は私を様々な女に与えた。
たとえば正妃。私の毒は人間にとって媚薬となる。正妃は媚薬を用いて王を籠絡した。愛人に傾いた王の心を繋ぎとめるため、誇り高い彼女も必死だった。次に愛人の寵姫の話だ。
寵姫は野心家で強か。私を利用し正妃を陥れた手腕は見事の一言に尽きる。奴隷上がりとは言え、さり気ない仕草や癖からも窺い知れる。元は異国の貴族か、王族だった、の……だろう。
……意識が薄れてきた。女官長が私を箱にしまったまま死亡し、何日、経過しただろう。誰も私の居場所を知らない。小さな箱の暗闇の中で私は……惜しむ。もっと観察……した、か……
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