2018年04月02日
グレーテル / クラッシャー
「あの子達を捨てましょう」隣部屋から聞こえる母の声。そこに感情はなかった。恐らく、父は黙って頷いたのだろう。堪え切れずに小さな嗚咽を上げる私を、兄様は優しく抱きしめた。
「僕が全て悪いんだ。だから、お前だけは必ず助けるよ」暗い森の中、兄様は私の手を引いて進む。「大丈夫よ兄様。私も兄様を助けるから」そう答えると、兄様は悲しそうに微笑んだ。
お菓子の家に住む、少しおかしくなった老女が足元に横たわっている。「ここのものを持ち帰れば父さん達の暮らしも楽になるね」笑う私の横で、兄様は血だらけの手を拭いていた。
私は兄様と幸せに暮らせる道を選ぶ。それを邪魔する者がいるならば、例え親でも許さない。「やめるんだ!」兄様が叫んで私を止める。――兄様、あなたも私の邪魔をするの?
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