監督が湯浅政明で、制作がマッドハウス、音楽は大島ミチルという強力な布陣で、なかなかの出来栄えでした。
「四畳半タイムマシンブルース」は、その続編というか番外編というか、10年ぶりのアニメ化です。
じつはこの作品は、ある舞台劇とのコラボ作品です。
「四畳半神話大系」をアニメ化したときにシリーズ構成をした、劇団ヨーロッパ企画の上田誠氏の戯曲「サマータイムマシン・ブルース」がそれです。
基本的なプロットはそのままで、舞台とキャラクタを「四畳半・・・」の世界に押し込めたのですが、まったく違和感が無いというか、奇跡のフルマッチです。
「四畳半タイムマシンブルース」 2022年公開 原作 森見登美彦 監督 夏目真悟 脚本 上田誠 アニメーション制作 サイエンスSARU |
あらすじはこんなかんじ。
「八月、灼熱の京都、左京区。おんぼろアパート「下鴨幽水荘」で唯一のエアコンが動かなくなった。悪友の小津が昨夜リモコンを水没させたためである。「私」がひそかに想いを寄せる後輩の明石さんと対策を協議しているところに、見知らぬ青年が現れた。
彼は25年後の未来からタイムマシンに乗ってやってきたという。そこで「私」は、彼のタイムマシンで昨日に戻り、壊れる前のリモコンを持ってくることを思いつく。ところが、タイムマシンに乗り込んだ小津たちが、リモコンを持ってくるだけにとどまらず勝手気ままに過去を改変しようとするに至り、「私」は世界消滅の危機を予感する。」
「四畳半神話大系」も大学生の主人公「私」がいくつかの「並行世界」で異なるサークルや組織に所属し、右往左往する話ですが、その1パターンと言えなくもない。
タイムマシンが登場すると、必ずタイムパラドックスが発生するのですが、この話もその轍を踏みます。
タイムパラドックスは「親殺しのパラドックス」が有名ですが、もうひとつの「存在の輪」の方が密かに描かれます。あらすじでお気づきのとおり、エアコンのリモコンがそれに相当します。特に気が付かなくても普通に映画は楽しめますので、心配はご無用です。
映画の見どころは、なんといってもヒロインの「明石さん」。
「四畳半神話大系」から引き続いての登場で、この作品のメインヒロインです。
じつは森見先生は、当初は「明石さん」をそれほど重要なキャラとしていなかったそうです。書いていくうちに可愛くなり、TVアニメになったらさらに可愛くなり、「タイムマシンブルース」でもう一度書いたらどんどん可愛くなり、この劇場版で可愛さが臨界値を超えてしまいました。
映画サークルに所属しており、ポンコツな映画を量産し、見た目の端正さとは裏腹に何かしらの重要なネジが抜け落ちているような女性です。乗り物酔いもひどいタイプです。
この映画の管理人的評価値は95点。
マイナス点は、エンディングをやくしまるえつこに歌わせなかったこと。
「四畳半神話大系」のエンディングテーマ「神様のいうとおり」は、EDの映像と相俟って、神がかり的な傑作です。やくしまるえつこを使わない「四畳半」は、未完成と言っても過言ではない。
四畳半タイムマシンブルース (角川文庫) [ 森見 登美彦 ] 価格:704円 |
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