未読の方は、ネタバレを含みますので、先に作品をお読みください。
「さよなら絵梨」藤本タツキ 2022年4月 ジャンプ+にて公開 200頁 |
「チェンソーマン」や「ルックバック」などの作品で知られる漫画家の藤本タツキがジャンププラスで発表した新作が「さよなら絵梨」です。
公開された翌日に読ませていただきました。
うん、面白いね。でも人を選ぶかもしれない。
中学生である主人公が、母親から買ってもらったスマホで映画を作るお話です。
マンガと映画が好きな人にはバッチリでしょう。
TVやSNSが好きな人にはちょっと受けないかもしれない。良い悪いじゃ無くてね。
読んだら即座に分かる通り、極めて「映画的」な手法で描かれています。
基本的に1頁を横長の4コマに分割して、シネスコな画面で構成されています。
「映画」なんですよ、このマンガ。
また、この作品は、3本の映画によって構成されています。
一本目は物語の冒頭で描かれる、主人公が初めて撮った映画で、文化祭で上映されて「糞映画」の評価を受けるヤツ。タイトルは「デッドエクスプローションマザー」
二本目はヒロインである絵梨の協力を得て、1作目のリベンジとして作り上げた映画。タイトルは不明ですが、たぶん「さよなら絵梨」。
三本目が一番のキモです。
これが分かるとこの作品が腑に落ちて、「スゲエ」となります。
三本目はこのマンガ自体です。「さよなら絵梨」というタイトルの、「マンガ」であり且つ「映画」です。
一本目と二本目で完成しなかった作品が、三本目で完成する、という仕掛けです。やったね。
作品内の虚構と現実が入り混じる部分があるので、一回読んだだけだと意味が分からん、と言う感想もあるかと思います。管理人も混乱しました。
あらためて読み直すと、わりと分かりやすく出来ています。
映画をマンガに落とし込む作品は過去にも有りますが、これほど上手く見せたのは記憶に無い。
さすが藤本センセイです。
ちなみに、作品内で虚構というか、ファンタジーなのは、やはり爆発シーンです。
あそこは「合成」です。
でもアレが無いと、この主人公の映画では無いのです。パパも絵梨さんも言ってるしね。
終盤の、家族をいきなり事故でなくしたり、絵梨の正体が明らかになる部分は「事実」です。
歳をとった主人公は、パパが演じているのではという説もありますが、管理人的には「違うよ」と思います。
作画的に、眉の形を親子でわざわざ変えているのをご確認ください。
それじゃあ、最後のシーンは誰が撮っているのかというと、それは間違いなく「作者」だと思います。
いきなりメタ的な話になっちゃいますが、この作品は「映画」であること以前に、やはり「マンガ」なのです。
藤本、天才かよ。
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