「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」
「この世界の片隅に」が公開されたのが2016年で、管理人はあえて原作を読まずに封印した状態で映画を先に鑑賞し、その出来映えに圧倒されました。
興行成績も異例な伸びを見せ、超ロングランの結果、210万人以上の観客を動員し、興行収入も27億円を超えました。
それを受けて、当初の絵コンテから尺の関係で削られていたシーン・カットを追加して、新たに創り出されたのが「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」です。
原作のこうの史代さんのマンガで描かれている、娼館で働く「りん」さんのエピソードが大幅に追加され、その他にも細かなカットやシーンが加わり、前作を鑑賞した人にこそ見ていただきたい一作に仕上がっています。
いくつかの欠けていた、隠れていたピースが現れることで、全体の印象が新しく生まれ変わる体験が実感できます。
作品はご承知の通り、ある女性とその家族を通じて、戦前から戦時下、終戦後までの「日常」を描いたものですが、今回の補完版により、「愛」を巡る物語でもあることが明らかになります。
上映時間が168分という、アニメ映画史上最長の作品ではありますが、ぜひ劇場でご鑑賞いただければと思います。
余談ですが、この映画の監督である片淵須直氏は、過去に「BLACK LAGOON」というアニメを監督しています。
個人的な私見ですが、「この世界の片隅に」は、「BLACK LAGOON」の中の、あるエピソード、というか、キャラクタへの鎮魂の願いが込められているのかなあと思っています。そのキャラクタというのは、「ヘンゼルとグレーテル」という双子です。悪徳の町ロアナプラを血に染めた果てに、狩り立てられて殺されます。
人として扱われることなく「怪物」と成り果て、この世界のどこにも居場所を得ることができず、命を散らした双子を思うとき、この映画でりんさんが語った台詞が心に沁みます。
「この世界に居場所はそうそうのうなりゃせんよ」
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