ソニーは昔、ホームビデオVHSとベーター方式戦争で大敗、放送用VTRもかなり立ち後れており、VTR事業撤退かと言われたが、ひかるの出現で一気に逆転、なお独占体制。
開発担当部長だったM氏は後に副社長まで掛け上っていったのである。
そこでまたまたひかるのズッコケが出てしまうのである。
ひかるは何時も会社の近く、すぐ戻れる一キロ圏内の焼鳥屋で後輩達と番組談義をしていた。
ソニーM氏から夜食をしたい、との連絡。夕方営業マンが迎えに来、連れていかれたのがホテルニューオータニ最上階の、当時最高級のフランスレストランだった。
髭の剃り後が青く、格闘技家風のがっしりした体格、ニタリ顔が似合わない、チョコンと乗った白い帽子がこれまた似合わない男がうやうやしく迎え入れた。
ひかるが主賓だと分かっているのだろう。横でメニューをさかんに進める。
これがまた訳の分からない言葉である。
焼鳥屋に指定席を持っているひかる、これ程上品な店、ひょんな外人に完璧に舞い上がってしまったのである。
とりあえず雰囲気を察したM氏が注文。目の前に訳の分からない食べ物が並べられたのであるが、ひかるは一度もホークを使った事がない。
使い方を知らず手が出ないのである。
野蛮ではしたないなーと思ったが、M氏がパンを手でチギッテいるので真似をした。ビールだけは通じるので、パンをちぎり、ガボガボとビールを飲む。
泡盛で鍛え、横綱を自認するひかるは雰囲気とひょんな外人に酔いつぶれてしまったのである。
たかがビールごときだが、雰囲気が人を酔わせる初体験をしみじみと味わった。おそらくこの店で豪勢なフランス料理を注文し、パンだけで終わらせた客はひかるだけではないだろうか。
あの青顎男は店員とこちらを指さしニタリニタリしている。おまえフランス料理を食べる資格のない田舎者が、と言っているように見え、愛嬌なのだろうが、空きっ腹にニタリは腹が立つ。
しゃくなので方言で、ウワ バポーンティピーピスカフォ〜ン ファ〜ナカ バフォ〜ン と方言で言ってやった。
それにしてもひかるは食べ物でよくズッコケる。
ソニーの社員がこのブログ見ていたら、社長に伝えてくれ。
ひかるがニューオータニでのリベンジマッチ待っている、と・・
当時、ソニーはアメリカナイズナンバーワンと言われた企業で、他のメーカー営業マンは飲み屋の接待、場合によってはゴルフ接待など常識だったが、ソニー営業マンは喫茶店のコーヒー代とて、必ず宛名にソニー名がないと認められない、とぼやいていた。
接待がタブーな企業が名もなきひかるを日本で一番高級なレストランでもてなす、どれだけ利益をもたらしたのか計り知れないだろう。