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2024年09月16日

幸田文の「父」の執筆脳について−臨終2

2 Lの分析

 第一回の文化勲章受章者幸田露伴(1867−1947)を父に持つ作家幸田文(1904−1990)の文学の方法は、誠実であることにある。塩谷(1994)によると、誠実が文学の方法になったのは、幸田文にとってそれが生活から引き出せるただ一つの知恵だからである。誠実に愛し、誠実を持って仕え、誠実に反抗した人間である。それが父露伴から受け継いだ遺産でもある。そこで、購読脳を「誠実と心の記録」にする。但し、記録が文学たるためには、視覚的要素と香気が必要である。無論、そのためには正確な表現力がものをいう。 
 「父」の死を見送る記録は、父の死の宣告を受ける瞬間が山場である。7月末に臨終を迎え、その葬式で喪主を務め、強い父の命は、最後まで作者を放すことがなかった。しかし、別れ自体は清々しく、深い思慕の情には力強さなどなかった。
 焼香の際も写真の父が昇っていくようで、露伴の俳句「獅子の児の親を仰げば霞かな」を引いて、美醜愛憎ある中で恩を確かめている。
 誠実が習性であることは、常に便利なわけではない。才能を包み隠すところまで行くと、誠実が強すぎるためである。嘘のない真心ぐらいでよい。フィクションが文学になるには、誠実さが必要不可欠になる。そのため、執筆脳は、「偽りない記録と誠意」にする。この執筆脳を購読脳の「誠実と心の記録」とマージした場合のシナジーのメタファーは、「幸田文と誠実さ」である。 

花村嘉英(2020)「幸田文の『父』の執筆脳について」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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