2024年09月15日
『訳す』 中日翻訳の高速化−比較言語学からの考察7
4 中日翻訳の高速化−段落の場合
次に、作業単位を段落に広げて、中国語の語順のまま和訳するという上述した方法を試してみよう。その際、注意したいのは、述語の位置とか専門用語そしてテーマ・レーマの関係である。なお、日本語の新聞の場合、文体は常体の「である」を使用する。
(17)宫内厅说,行宫无法接纳住宿,但是将用大巴接送灾民前来洗浴,并设置专门的医疗点和休息场所为灾民们问诊。这一项活动将从本月26 日起到4 月底期间进行。(人民日報)
(18)宮内庁は、御用邸に宿泊することはできないが、大型バスを使って被災者を浴場まで送迎し、さらに専門の診療所と休憩所を設けて被災者を診察すると述べた。この活動は、今月26日から4月の末まで行われる。
(17)と(18)を見る限り、中国語の語順に沿って和訳ができそうだ。但し、述語の位置については注意が必要である。上述したように、中国語の述語は主語のすぐ後に来るが、日本語は最後に来る。また、専門用語としては、行宮を単に別荘と訳すよりも御用邸と訳したほうが皇室用の別荘というニュアンスが伝わると思う。
テーマとレーマについて見てみよう。テーマとは主題のことであり、文において伝達の対象を表す既知の情報のことをいう。また、レーマとは述題のことであり、文において伝達の内容を表す新しい情報のことをいう。(17)の場合、最初の文のテーマは「行宮」で、それに続く「无法接纳住宿」以下がレーマになる。次の文は、このレーマを受けた「这一项活动」がテーマになる。つまり、段落の中では、旧と新の情報が連鎖をなして流れている。テーマとレーマの関係を把握して、述語の位置や専門用語に注意すれば、とりあえず中国語の語順に沿ってニュース記事を和訳することができると思う。
付加的なものだが、覚えておくと便利なテクニックがある。それは、外来語のために使用するカタカナ表記である。日本語の新聞記事には、英語のみならず多くの言語からの外来語が氾濫している。そのため、外国語の新聞を和訳する際にカタカナ表記が入ると、より日本語らしい訳になる。
花村嘉英著(2017)「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで」より
次に、作業単位を段落に広げて、中国語の語順のまま和訳するという上述した方法を試してみよう。その際、注意したいのは、述語の位置とか専門用語そしてテーマ・レーマの関係である。なお、日本語の新聞の場合、文体は常体の「である」を使用する。
(17)宫内厅说,行宫无法接纳住宿,但是将用大巴接送灾民前来洗浴,并设置专门的医疗点和休息场所为灾民们问诊。这一项活动将从本月26 日起到4 月底期间进行。(人民日報)
(18)宮内庁は、御用邸に宿泊することはできないが、大型バスを使って被災者を浴場まで送迎し、さらに専門の診療所と休憩所を設けて被災者を診察すると述べた。この活動は、今月26日から4月の末まで行われる。
(17)と(18)を見る限り、中国語の語順に沿って和訳ができそうだ。但し、述語の位置については注意が必要である。上述したように、中国語の述語は主語のすぐ後に来るが、日本語は最後に来る。また、専門用語としては、行宮を単に別荘と訳すよりも御用邸と訳したほうが皇室用の別荘というニュアンスが伝わると思う。
テーマとレーマについて見てみよう。テーマとは主題のことであり、文において伝達の対象を表す既知の情報のことをいう。また、レーマとは述題のことであり、文において伝達の内容を表す新しい情報のことをいう。(17)の場合、最初の文のテーマは「行宮」で、それに続く「无法接纳住宿」以下がレーマになる。次の文は、このレーマを受けた「这一项活动」がテーマになる。つまり、段落の中では、旧と新の情報が連鎖をなして流れている。テーマとレーマの関係を把握して、述語の位置や専門用語に注意すれば、とりあえず中国語の語順に沿ってニュース記事を和訳することができると思う。
付加的なものだが、覚えておくと便利なテクニックがある。それは、外来語のために使用するカタカナ表記である。日本語の新聞記事には、英語のみならず多くの言語からの外来語が氾濫している。そのため、外国語の新聞を和訳する際にカタカナ表記が入ると、より日本語らしい訳になる。
花村嘉英著(2017)「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで」より
【このカテゴリーの最新記事】
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/12705880
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック