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2024年09月14日

『話す』 日本語の会話や作文からやさしい翻訳へ6

1.4 中国人に日本語を教授する

 目標分析票を見ながら、時間毎の教案を書いていく。書きながら、何を教えるのか(導入としての教材研究)、どのぐらい教えるのか(展開のための目標設定)、どのように教えるのか(整理のための授業計画)といったことを考えていく。教材の研究は、主に担当教師が行う作業である。クラスの始めに挨拶をして、ウォーミングアップで学習者の気持ちをほぐしていく。前回の質問事項にもこの段階で回答しておけばよい。復習をかねることにもなるためである。教材からの提示については、漢字系の学習者の場合、母国語と全く同じ単語または推測がきく語彙を使用して、定義文(ある語を定義する文のこと)を交えて話を進めるようにする。黒板に書くと、反応が違う。
 目標の設定では、スキルの獲得と応用を目指す。最初は教師の指示の下で日本語を表現する。その後、教師から離れて自由に日本語を作る作業に入る。ヒアリング指導の場合、言語的知識(音素識別力、語彙力、文法力)と思考活動(予測、記憶、判断、照合)の両面を発達させることが重要である。例えば、スキミング(全体の大意を捉えて、だいたいどんな事を言っているかを聞き取る)とかスキャニング(自分がほしい情報だけを求めて聞き、後は聞き流す)あるいはマッチング(ある特定の情報だけに限定して聞き取る方法で、スキャニングよりも限定的)といったヒアリングのタイプは、どちらかというと言語的知識を活用している。一方、ハイポセシス・テスティング(自分の予想が当たっているかどうか確かめながら聞く)は、どちらかと言えば、思考活動のトレーニングになる。

花村嘉英著(2017)「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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