アフィリエイト広告を利用しています

広告

posted by fanblog

2024年05月23日

アンドレ・ジイドの「田園交響楽」で執筆脳を考える2

2 「田園交響楽」の病跡学

 白痴の子供(une idiote)である。口もきかず人の話もわからず、ほとんど動かない。15歳(une quinzaine d’annees)ぐらい 。めくらの娘は、顔立ちは美しく整っているも意思のない塊で完全に無表情である。牧師が握っていた手を離すと異様な呻き声を出す。(Je fus moi-meme tout decontenance par les bizarres gemissements que commenca de pousser la pauvre infirme sitot que ma main abandonna la sienne.11)人間らしからぬ鳴き声は、子犬のようである。
 牧師夫妻には、4人の子供がいる。妻アメリーは、連れてきためくらの娘をどうするのか問いただす。神の思し召しゆえに無一文のめくらの娘をほっとくわけにはいかない。
 ジェルトリュードの顔は、完全に無表情である(son inexpressivite absolue de son visage.19)。誰かの声が聞こえたり、近づいたりすると、顔つきが硬くなる。無表情でなくなるのは、敵意を示すとき(pour marquer l’hostilite.19)だけで獣のように呻いたり唸ったりした。(Elle commencait a geindre, a grogneromme un animal.19)給仕した皿にも動物のようにガツガツ飛びついた。
 ある日から彼女の表情が世紀を帯びてきた。(Tout à coup ses traits s’animèrent.26)天使のような表情(l’expression angélique)である。彼女の額の上に神に捧げるような接吻をした。盲人にも教育はある。点字のアルファベットを覚える。ジェルトリュードは、色彩の問題で色と明るさを混同した。また、音楽会に行く機会があった。(Je pu lui faire entendre un concert.33)音と色彩に関係があるとわかるや否やある種の恍惚から疑惑の色が消えた。
 散歩に出かけるといつもそうだが、この時も、彼女は、私たちが立ち止まっている場所の景色を説明してくれるように頼んだ。(Elle me demannda, comme à chaque promenade, de lui décrire l’endroit où nous nous arrêtions. 62)
 マルタン医師がジェルトリュードの目を検眼鏡で調べた。手術をすれば見えるようになるという。(Le docteur Martins a longuement examiné les yeus de Fertrude à l’ophtalmoscope. C’est que Gertrude serait opérable.74)ジェルトリュードは、ローザンヌの病院に入院した。20日たたねば退院できない。極度の不安を抱えながら、彼女の帰りを待っている。(Gertrude est entrée hier à la clinique de Lausanne, d’où elle ne doit sortir que dans vingt jours. 91)

花村嘉英(2024)「アンドレ・ジイドの『田園交響楽』で執筆脳を考える」より
この記事へのコメント
コメントを書く

お名前:

メールアドレス:


ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/12561622
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
ファン
検索
<< 2024年09月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
最新記事
写真ギャラリー
最新コメント
タグクラウド
カテゴリーアーカイブ
プロフィール
花村嘉英さんの画像
花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
プロフィール
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。