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2018年08月13日

ヴァイスゲルバーから日本語教育を再考する2

2 ヴァイスゲルバーの母国語教育の立場
 
2.1 言語分析のための4つのアプローチ

 ヴァイスゲルバーは、言語の分析、特に母国語を考察する際に、音、意味、文法及びことばの運用の問題を取り上げ、例えば、文法に関して考察するとき、単体としてではなく、他の3つの要素も関連づけて考えることを目指した。(Weisgerber 1963、33)つまり、ドイツ民族が母国語を習得する際、音、意味、文法を関連づけて学習しながら、外界の存在と人間の意識の間に位置する母国語の世界像を使用していると考えた。
 私も母国語教育を考えるとき、日本語の音や意味、そして文法の面だけではなく、生活や文化なども含めた日本語の運用について考えることが多い。これにより言語共同体が考察の対象となって世界を言語化するプロセスとしての母国語が特徴づけられる。
 母国語全体の分析対象をまず二つに分ける。一つは、すでにできている静的なもの(エルゴン)、また一つは人の心に働きかけ自らを変革していく動的なもの(エネルゲイア)である。前者には、例えば、音と意味が属し、後者には文法やことばの運用が入る。言語学史の流れで見ると、1960年代はまだ脳科学からの考察が少なかったため、精神や言語による中間世界という概念を用いて母国語の世界像を説明していた。

花村嘉英(2018)「ヴァイスゲルバーから日本語教育を再考する」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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