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2023年05月31日

川端康成の『雪国』から見えてくるシナジーのメタファーとは3

3 共生の読み

 「無と創造」という購読脳の出力は、情報の認知のための入力となって横にスライドしていく。このプロセスでは、非専門の系列(社会、情報、バイオ、メディカル)がブラックボックスにならないように、実務や資格などで実績を調節していく必要がある。(花村2015、2017)確かに文化科学や社会科学には、文化と栄養や法律とエネルギーなどLの研究フォーマットが存在する。しかし、人文科学には存在しない。あるいはなくてもよい。
 そもそも存在しないことについて考える場合でも、解を出せる分析法があれば、それは存在してもいいはずである。そこで、縦軸を言語の認知とし、その出力が入力となり、共生の読みのために横に滑って情報の認知を経てLの出力が出るフォーマットを考える。このLのモデルは、購読脳と執筆脳をマージするときに役に立つ。作家が執筆中に伝えようと思っていたことが理解できるのは、ことばの理解のみならず購読脳が執筆脳に近づいて行くためである。
 縦の柱の研究フォーマットであれば、Tの逆さの認知の定規をスライドさせながら、人文や文化の柱とその他の副専攻の柱を調節するだけである。
 共生の読みのゴールは、「無と創造」という購読脳の出力が入力となり、リレーショナルなデータベースを作成しながら、一文一文をLに読むと次第に見えてくる。人工知能の世界でいう何がしとか健常者の脳の活動でいう何がしということがつかめればよい。イメージとして、まだ知識のない人工知能が特定の目的を意識して次第に育っていく感じがよい。そう考えると、人間に見たてて川端と組みが作れそうである。
 なお、小説のデータベースは、既存の文学分析や様々な理系の研究と照合ができる文理のリレーショナルな研究ツールであり、コーパス、パーザー、翻訳メモリーさらには計量言語学と並んで、人文科学の人たちが取り組むべき人文と情報の組み合わせである。

花村(2018)「川端康成の『雪国』から見えてくるシナジーのメタファーとは」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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