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2021年09月20日

三浦綾子の「道ありき」でうつ病から病跡学を考える6

表1 対処行動の分析2

分類 「道ありき」から抽出した場面の病跡状況 + 対処行動

B その後、入院を繰り返す綾子は、婚約者の西中一郎の死後、幼馴染の前川正という北海道大学医学部の学生に惹かれていく。このままでは死んでしまうとする綾子への愛は、信じなければならない。D

B 綾子は、酒もたばこもやめる。前川正は、教会所属のクリスチャンである。綾子も教会へ通い始め、前川に薦められて伝道の書(旧約聖書)に目を通す。何もかも空なりとあり、綾子の心は引き込まれた。当初は虚無的な見方があっても、キリスト教と仏教に共通する姿を発見したことが転機となり、綾子の求道生活は、次第に真面目になっていく。D

B 昭和二十五年、綾子と前川正は、以前に比べて親しくなる。旭川の保健所で週一回気胸療法を受けた。肋膜が癒着しない限り、結核患者の胸にゴム管がついた針を刺し、気胸器から空気を送り、空気が肋膜腔に入り胸を圧迫し、肺の病巣は、空気で潰される。(トーマス・マンの「魔の山」でもスイスのダボスにあるサナトリウムのベーレンス院長が気胸病の患者に同じ方法で治療をしている。)D

B 馴れた医師には注意が必要である。うっかりして針を血管に刺すと、空気が血管に入り空気栓塞が起こる。また、肋膜腔内に入れる針が、肺に達することがある。呼吸する度に空気が腔内に洩れて肺を縮めやがて死んでしまう自然気胸もある。A

B 死にたいと思っても死ねず、生きるために自分の意思を奮い立たせても、それ以外に何かが綾子の身体に加わっている。C

B 何か計画を立てても自分の思い通りには事が進まない。西中一郎との結納の日に綾子は倒れ発病し、結婚の予定を変更した。綾子は、人間の計画を何者かが修正してくれていると考える。無論、神である。D

B 昭和26年に札幌の病院に転院したころ、前川正は、綾子に生きることが人間の権利ではなく義務であると叱るように励ました。A

花村嘉英(2021)「三浦綾子の「道ありき」でうつ病から病跡学を考える」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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