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2020年07月07日
有吉佐和子の「華岡青州の妻」で執筆脳を考える5
分析例
1 加恵が毒薬で失明するも懐妊もする場面。
2 この小論では、「華岡青州の妻」の購読脳を「女心の葛藤と外科医術の開拓」と考えているため、意味3の思考の流れ、葛藤のありなしに注目する。
3 意味1@視覚A聴覚B味覚C嗅覚D触覚 、意味2 @喜A怒B哀C楽、意味3葛藤@ありAなし、意味4振舞い @直示A隠喩B記事なし
4 人工知能 @衝突、A達成
テキスト共生の公式
ステップ1:意味1、2、3、4を合わせて解析の組「女心の葛藤と外科医術の開拓」を作る。
ステップ2:女心の葛藤と麻酔剤の開発から「衝突と達成」という組を作り、解析の組と合わせる。
A:@視覚+B哀+@葛藤あり+@直示という解析の組を、A衝突なしA達成なしという組と合わせる。
B:@視覚+B哀+@葛藤あり+A隠喩という解析の組を、A衝突なしA達成なしという組と合わせる。
C:@視覚+B哀+@葛藤あり+A隠喩という解析の組を、A衝突なしA達成なしという組と合わせる。
D:@視覚+B哀+@葛藤あり+@直示という解析の組を、A衝突なし@達成ありという組と合わせる。
E:@視覚+@喜+A葛藤なし+@直示という解析の組を、@衝突あり@達成ありという組と合わせる。
結果 表2については、テキスト共生の公式が適用される。
花村嘉英(2020)「有吉佐和子の『華岡青州の妻』の執筆脳について」より
1 加恵が毒薬で失明するも懐妊もする場面。
2 この小論では、「華岡青州の妻」の購読脳を「女心の葛藤と外科医術の開拓」と考えているため、意味3の思考の流れ、葛藤のありなしに注目する。
3 意味1@視覚A聴覚B味覚C嗅覚D触覚 、意味2 @喜A怒B哀C楽、意味3葛藤@ありAなし、意味4振舞い @直示A隠喩B記事なし
4 人工知能 @衝突、A達成
テキスト共生の公式
ステップ1:意味1、2、3、4を合わせて解析の組「女心の葛藤と外科医術の開拓」を作る。
ステップ2:女心の葛藤と麻酔剤の開発から「衝突と達成」という組を作り、解析の組と合わせる。
A:@視覚+B哀+@葛藤あり+@直示という解析の組を、A衝突なしA達成なしという組と合わせる。
B:@視覚+B哀+@葛藤あり+A隠喩という解析の組を、A衝突なしA達成なしという組と合わせる。
C:@視覚+B哀+@葛藤あり+A隠喩という解析の組を、A衝突なしA達成なしという組と合わせる。
D:@視覚+B哀+@葛藤あり+@直示という解析の組を、A衝突なし@達成ありという組と合わせる。
E:@視覚+@喜+A葛藤なし+@直示という解析の組を、@衝突あり@達成ありという組と合わせる。
結果 表2については、テキスト共生の公式が適用される。
花村嘉英(2020)「有吉佐和子の『華岡青州の妻』の執筆脳について」より
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有吉佐和子の「華岡青州の妻」で執筆脳を考える4
【連想分析1】
表2 受容と共生のイメージ合わせ
加恵の失明と懐妊
A 青洲の大きな目が剥き出したようになって妻の目を凝視していた。潤んだ眼をしばたたきながら加恵は真昼の明るい部屋の中で、青洲の顔も見えないようであった。「加恵」青洲は妻を抱くと、静かに蒲団に横たえた。「痛むか」「いいえ、先刻ほどには」「そうか」
意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、衝突2、達成2
B 青洲は加恵の瞼に指をあててなんの反応も見せない瞳孔を仔細にあらため見ながら、次第に表情を曇らせていった。麻酔薬の実験成果の喜びは萎えて、彼の心はよやく医者から夫に戻ろうとしていた。加恵にはもう見えなかったが、青洲の喉仏の横にある例の大きな黒子は、懸命に何かをこらえている内心を示すように激しく揺れ動いていた。 意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 2、衝突2、達成2
C 目の奥の痛みは日がたつにつれて薄れていったが、目やにも止まった頃には、加恵は完全に盲目になっていた。青洲のそれを見つめている悲嘆は誰の目にも痛々しかった。そして於継が朽木の倒れるような斃れかたをしたときも、彼の心を瞬間も加恵から離すことはなかった。
意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 2、衝突2、達成2
D 盲目の加恵はもはや姑の看病はできなかったし、魂がぬけたように甚だしく老いた於継の姿もみることはなかった。薬草畠も霜で凍るような夜、於継が息をひきとったとき、加恵は米次郎に手をひかれて姑の臨終に侍したが、静かに合掌しながらも、しきりにと胸から喉へ突き上げてくる不快なおく気の方に気をとられていた。 意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、衝突2、達成1
E 十幾年ぶりかで加恵は妊っていたのであったが、於継はそれを知らずに死んだ。彼女が青洲の養子にするようにといっていた良平は京都に遊学中であったから、枕元には青洲夫婦と小陸がいたばかりである。
意味1 1、意味2 1、意味3 2、意味4 1、衝突1、達成1
花村嘉英(2020)「有吉佐和子の『華岡青州の妻』の執筆脳について」より
表2 受容と共生のイメージ合わせ
加恵の失明と懐妊
A 青洲の大きな目が剥き出したようになって妻の目を凝視していた。潤んだ眼をしばたたきながら加恵は真昼の明るい部屋の中で、青洲の顔も見えないようであった。「加恵」青洲は妻を抱くと、静かに蒲団に横たえた。「痛むか」「いいえ、先刻ほどには」「そうか」
意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、衝突2、達成2
B 青洲は加恵の瞼に指をあててなんの反応も見せない瞳孔を仔細にあらため見ながら、次第に表情を曇らせていった。麻酔薬の実験成果の喜びは萎えて、彼の心はよやく医者から夫に戻ろうとしていた。加恵にはもう見えなかったが、青洲の喉仏の横にある例の大きな黒子は、懸命に何かをこらえている内心を示すように激しく揺れ動いていた。 意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 2、衝突2、達成2
C 目の奥の痛みは日がたつにつれて薄れていったが、目やにも止まった頃には、加恵は完全に盲目になっていた。青洲のそれを見つめている悲嘆は誰の目にも痛々しかった。そして於継が朽木の倒れるような斃れかたをしたときも、彼の心を瞬間も加恵から離すことはなかった。
意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 2、衝突2、達成2
D 盲目の加恵はもはや姑の看病はできなかったし、魂がぬけたように甚だしく老いた於継の姿もみることはなかった。薬草畠も霜で凍るような夜、於継が息をひきとったとき、加恵は米次郎に手をひかれて姑の臨終に侍したが、静かに合掌しながらも、しきりにと胸から喉へ突き上げてくる不快なおく気の方に気をとられていた。 意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、衝突2、達成1
E 十幾年ぶりかで加恵は妊っていたのであったが、於継はそれを知らずに死んだ。彼女が青洲の養子にするようにといっていた良平は京都に遊学中であったから、枕元には青洲夫婦と小陸がいたばかりである。
意味1 1、意味2 1、意味3 2、意味4 1、衝突1、達成1
花村嘉英(2020)「有吉佐和子の『華岡青州の妻』の執筆脳について」より
有吉佐和子の「華岡青州の妻」で執筆脳を考える3
3 データベースの作成・分析
データベースの作成法について説明する。エクセルのデータについては、列の前半(文法1から意味5)が構文や意味の解析データ、後半(医学情報から人工知能)が理系に寄せる生成のデータである。一応、L(受容と共生)を反映している。データベースの数字は、登場人物を動かしながら考えている。
こうしたデータベースを作る場合、共生のカラムの設定が難しい。受容は、それぞれの言語ごとに構文と意味を解析し、何かの組を作ればよい。しかし、共生は、作家の知的財産に基づいた脳の活動が問題になるため、作家ごとにカラムが変わる。
【データベースの作成】
表1 「華岡青州の妻」のデータベースのカラム
文法1 名詞の格 有吉佐和子の助詞の使い方を考える。
文法2 ヴォイス 能動、受動、使役。
文法3 テンス、アスペクト 現在、過去、未来、進行形、完了形。
文法4 モダリティ 可能、推量、義務、必然。
意味1 五感 視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。
意味2 喜怒哀楽 喜びや怒り。
意味3 葛藤 精神内部で異なる方向の力同士が衝突する。
意味4 振舞い ジェスチャー、身振り。直示と隠喩を考える。
医学情報 病跡学との接点 受容と共生の共有点。構文や意味の解析から得た組「女心の葛藤と外科医術の開拓」と病跡学でリンクを張るためにメディカル情報を入れる。
記憶 短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述) 作品から読み取れる記憶を拾う。長期記憶は陳述と非陳述に分類される。
情報の認知1 感覚情報の捉え方 感覚器官からの情報に注目するため、対象の捉え方が問題になる。例えば、ベースとプロファイルやグループ化または条件反射。
情報の認知2 記憶と学習 外部からの情報を既存の知識構造に組み込む。その際、未知の情報についてはカテゴリー化する。学習につながるため。記憶の型として、短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述)を考える。
情報の認知3 計画、問題解決、推論 受け取った情報は、計画を立てるときにも役に立つ。目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。獲得した情報が完全でない場合、推論が必要になる。
人工知能 衝突 エキスパートシステム 主張や意見が対立すること。反目すること。
人工知能 達成 エキスパートシステム 目的に達し成功すること。
花村嘉英(2020)「有吉佐和子の『華岡青州の妻』の執筆脳について」より
データベースの作成法について説明する。エクセルのデータについては、列の前半(文法1から意味5)が構文や意味の解析データ、後半(医学情報から人工知能)が理系に寄せる生成のデータである。一応、L(受容と共生)を反映している。データベースの数字は、登場人物を動かしながら考えている。
こうしたデータベースを作る場合、共生のカラムの設定が難しい。受容は、それぞれの言語ごとに構文と意味を解析し、何かの組を作ればよい。しかし、共生は、作家の知的財産に基づいた脳の活動が問題になるため、作家ごとにカラムが変わる。
【データベースの作成】
表1 「華岡青州の妻」のデータベースのカラム
文法1 名詞の格 有吉佐和子の助詞の使い方を考える。
文法2 ヴォイス 能動、受動、使役。
文法3 テンス、アスペクト 現在、過去、未来、進行形、完了形。
文法4 モダリティ 可能、推量、義務、必然。
意味1 五感 視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。
意味2 喜怒哀楽 喜びや怒り。
意味3 葛藤 精神内部で異なる方向の力同士が衝突する。
意味4 振舞い ジェスチャー、身振り。直示と隠喩を考える。
医学情報 病跡学との接点 受容と共生の共有点。構文や意味の解析から得た組「女心の葛藤と外科医術の開拓」と病跡学でリンクを張るためにメディカル情報を入れる。
記憶 短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述) 作品から読み取れる記憶を拾う。長期記憶は陳述と非陳述に分類される。
情報の認知1 感覚情報の捉え方 感覚器官からの情報に注目するため、対象の捉え方が問題になる。例えば、ベースとプロファイルやグループ化または条件反射。
情報の認知2 記憶と学習 外部からの情報を既存の知識構造に組み込む。その際、未知の情報についてはカテゴリー化する。学習につながるため。記憶の型として、短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述)を考える。
情報の認知3 計画、問題解決、推論 受け取った情報は、計画を立てるときにも役に立つ。目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。獲得した情報が完全でない場合、推論が必要になる。
人工知能 衝突 エキスパートシステム 主張や意見が対立すること。反目すること。
人工知能 達成 エキスパートシステム 目的に達し成功すること。
花村嘉英(2020)「有吉佐和子の『華岡青州の妻』の執筆脳について」より
有吉佐和子の「華岡青州の妻」で執筆脳を考える2
2 「華岡青州の妻」のLのストーリー
世界初の全身麻酔による乳癌手術の成功者華岡青洲(1760−1835)は、当時でいう先端を行く外科医として乳癌の手術の方法を探していた。京都帰りの25歳のときには、曼荼羅華を主成分とする麻酔剤が研究テーマであった。
青洲の妻加恵は、封建社会の家を重んずる姑と敵対関係にあり、和歌森(2010)にいわせると、家と女の関わりは、今も昔も特別といえる。歴史に名高い医者の家でも女心の葛藤は、有吉佐和子(1931−1984)をして小説の題材になった。そのため、購読脳は、「女心の葛藤と外科医術の開拓」にする。
作品の中では、精神内部で異なる方向の力同士が衝突している。衝突しながらも、小姑お勝が乳癌になってから、青洲の麻酔薬作りは人体実験の段階に入り、姑と嫁の争いが頂点に達する。青州は、最初母に麻酔剤を試してみる。しかし、母は、薬の完成を早呑み込みしたため、青洲も内心忸怩たるものがあった。
加恵の献身は、自身を実験台として麻酔剤を生産させたことである。青洲は、曼荼羅華の花や種を多量にし、猛毒の草烏頭も調合した。於継に飲ませた量とは比べものにならない。加恵の場合、三日二晩寝続け、目が覚めてから健康状態に戻るまで半月かかった。しかし、辛いとは思わなかった。そして通仙散が誕生した。無論、青州の達成感も格別であった。
息子も出産し、麻酔剤も成就させ、加恵は、盲目になるも達成感のある晩年を過ごす。そこで、執筆脳は「衝突と達成」にする。また、購読脳と執筆脳をマージしたシナジーのメタファーは、「有吉佐和子と葛藤」である。
花村嘉英(2020)「有吉佐和子の『華岡青州の妻』の執筆脳について」より
世界初の全身麻酔による乳癌手術の成功者華岡青洲(1760−1835)は、当時でいう先端を行く外科医として乳癌の手術の方法を探していた。京都帰りの25歳のときには、曼荼羅華を主成分とする麻酔剤が研究テーマであった。
青洲の妻加恵は、封建社会の家を重んずる姑と敵対関係にあり、和歌森(2010)にいわせると、家と女の関わりは、今も昔も特別といえる。歴史に名高い医者の家でも女心の葛藤は、有吉佐和子(1931−1984)をして小説の題材になった。そのため、購読脳は、「女心の葛藤と外科医術の開拓」にする。
作品の中では、精神内部で異なる方向の力同士が衝突している。衝突しながらも、小姑お勝が乳癌になってから、青洲の麻酔薬作りは人体実験の段階に入り、姑と嫁の争いが頂点に達する。青州は、最初母に麻酔剤を試してみる。しかし、母は、薬の完成を早呑み込みしたため、青洲も内心忸怩たるものがあった。
加恵の献身は、自身を実験台として麻酔剤を生産させたことである。青洲は、曼荼羅華の花や種を多量にし、猛毒の草烏頭も調合した。於継に飲ませた量とは比べものにならない。加恵の場合、三日二晩寝続け、目が覚めてから健康状態に戻るまで半月かかった。しかし、辛いとは思わなかった。そして通仙散が誕生した。無論、青州の達成感も格別であった。
息子も出産し、麻酔剤も成就させ、加恵は、盲目になるも達成感のある晩年を過ごす。そこで、執筆脳は「衝突と達成」にする。また、購読脳と執筆脳をマージしたシナジーのメタファーは、「有吉佐和子と葛藤」である。
花村嘉英(2020)「有吉佐和子の『華岡青州の妻』の執筆脳について」より
有吉佐和子の「華岡青州の妻」で執筆脳を考える1
1 先行研究
文学分析は、通常、読者による購読脳が問題になる。一方、シナジーのメタファーは、作家の執筆脳を研究するためのマクロに通じる分析方法である。基本のパターンは、まず縦が購読脳で横が執筆脳になるLのイメージを作り、次に、各場面をLに読みながらデータベースを作成し、全体を組の集合体にする。そして最後に、双方の脳の活動をマージするために、脳内の信号のパスを探す、若しくは、脳のエリアの機能を探す。これがミクロとマクロの中間にあるメゾのデータとなり、狭義の意味でシナジーのメタファーが作られる。この段階では、副専攻を増やすことが重要である。
執筆脳は、作者が自身で書いているという事実及び作者がメインで伝えようと思っていることに対する定番の読み及びそれに対する共生の読みと定義する。そのため、この小論では、トーマス・マン(1875−1955)、魯迅(1881−1936)、森鴎外(1862−1922)の執筆脳に関する私の著作を先行研究にする。また、これらの著作の中では、それぞれの作家の執筆脳として文体を取り上げ、とりわけ問題解決の場面を分析の対象にしている。さらに、マクロの分析について地球規模とフォーマットのシフトを意識してナディン・ゴーディマ(1923−2014)を加えると、“The Late Bourgeois World”執筆時の脳の活動が意欲と組になることを先行研究に入れておく。
筆者の持ち場が言語学のため、購読脳の分析の際に、何かしらの言語分析を試みている。例えば、トーマス・マンには構文分析があり、魯迅にはことばの比較がある。そのため、全集の分析に拘る文学の研究者とは、分析のストーリーに違いがある。文学の研究者であれば、全集の中から一つだけシナジーのメタファーのために作品を選び、その理由を述べればよい。なお、Lのストーリーについては、人文と理系が交差するため、機械翻訳などで文体の違いを調節するトレーニングが推奨される。
メゾのデータを束ねて何やら観察で予測が立てば、言語分析や翻訳そして資格に基づくミクロと医学も含めたリスクや観察の社会論からなるマクロとを合わせて、広義の意味でシナジーのメタファーが作られる。
花村嘉英(2020)「有吉佐和子の『華岡青州の妻』の執筆脳について」より
文学分析は、通常、読者による購読脳が問題になる。一方、シナジーのメタファーは、作家の執筆脳を研究するためのマクロに通じる分析方法である。基本のパターンは、まず縦が購読脳で横が執筆脳になるLのイメージを作り、次に、各場面をLに読みながらデータベースを作成し、全体を組の集合体にする。そして最後に、双方の脳の活動をマージするために、脳内の信号のパスを探す、若しくは、脳のエリアの機能を探す。これがミクロとマクロの中間にあるメゾのデータとなり、狭義の意味でシナジーのメタファーが作られる。この段階では、副専攻を増やすことが重要である。
執筆脳は、作者が自身で書いているという事実及び作者がメインで伝えようと思っていることに対する定番の読み及びそれに対する共生の読みと定義する。そのため、この小論では、トーマス・マン(1875−1955)、魯迅(1881−1936)、森鴎外(1862−1922)の執筆脳に関する私の著作を先行研究にする。また、これらの著作の中では、それぞれの作家の執筆脳として文体を取り上げ、とりわけ問題解決の場面を分析の対象にしている。さらに、マクロの分析について地球規模とフォーマットのシフトを意識してナディン・ゴーディマ(1923−2014)を加えると、“The Late Bourgeois World”執筆時の脳の活動が意欲と組になることを先行研究に入れておく。
筆者の持ち場が言語学のため、購読脳の分析の際に、何かしらの言語分析を試みている。例えば、トーマス・マンには構文分析があり、魯迅にはことばの比較がある。そのため、全集の分析に拘る文学の研究者とは、分析のストーリーに違いがある。文学の研究者であれば、全集の中から一つだけシナジーのメタファーのために作品を選び、その理由を述べればよい。なお、Lのストーリーについては、人文と理系が交差するため、機械翻訳などで文体の違いを調節するトレーニングが推奨される。
メゾのデータを束ねて何やら観察で予測が立てば、言語分析や翻訳そして資格に基づくミクロと医学も含めたリスクや観察の社会論からなるマクロとを合わせて、広義の意味でシナジーのメタファーが作られる。
花村嘉英(2020)「有吉佐和子の『華岡青州の妻』の執筆脳について」より
2020年06月08日
幸田文の「父」の執筆脳について−臨終8
4 まとめ
幸田文の執筆時の脳の活動を調べるために、まず受容と共生からなるLのストーリーを文献により組み立てた。次に、「父」のLのストーリーをデータベース化して、最後に特定したところを実験で確認した。そのため、テキスト共生によるシナジーのメタファーについては、一応の研究成果が得られている。
この種の実験をおよそ100人の作家で試みている。その際、日本人と外国人60人対40人、男女比4対1、ノーベル賞作家30人を目安に対照言語が独日であることから非英語の比較を意識してできるだけ日本語以外で英語が突出しないように心掛けている。
参考文献
日本成人病予防協会 健康管理士一般指導員受験対策講座テキスト3 ヘルスケア出版 2014
花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風社 2005
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社2015
花村嘉英 日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
花村嘉英 シナジーのメタファーの作り方−トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖 中国日語教学研究会上海分会論文集 2018
花村嘉英 川端康成の「雪国」に見る執筆脳について-「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ 中国日語教学研究会上海分会論文集 2019
花村嘉英 社会学の観点からマクロの文学を考察する−危機管理者としての作家について 中国日語教学研究会上海分会論文集 2020
幸田文 父(解説 塩屋賛) 新潮文庫 2012
幸田文の執筆時の脳の活動を調べるために、まず受容と共生からなるLのストーリーを文献により組み立てた。次に、「父」のLのストーリーをデータベース化して、最後に特定したところを実験で確認した。そのため、テキスト共生によるシナジーのメタファーについては、一応の研究成果が得られている。
この種の実験をおよそ100人の作家で試みている。その際、日本人と外国人60人対40人、男女比4対1、ノーベル賞作家30人を目安に対照言語が独日であることから非英語の比較を意識してできるだけ日本語以外で英語が突出しないように心掛けている。
参考文献
日本成人病予防協会 健康管理士一般指導員受験対策講座テキスト3 ヘルスケア出版 2014
花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風社 2005
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社2015
花村嘉英 日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
花村嘉英 シナジーのメタファーの作り方−トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖 中国日語教学研究会上海分会論文集 2018
花村嘉英 川端康成の「雪国」に見る執筆脳について-「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ 中国日語教学研究会上海分会論文集 2019
花村嘉英 社会学の観点からマクロの文学を考察する−危機管理者としての作家について 中国日語教学研究会上海分会論文集 2020
幸田文 父(解説 塩屋賛) 新潮文庫 2012
幸田文の「父」の執筆脳について−臨終7
表3 情報の認知
A 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2
B 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2
C 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2
D 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2
E 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 1
A:情報の認知1はB条件反射、情報の認知2はA新情報、情報の認知3はA問題未解決から推論へである。
B:情報の認知1はB条件反射、情報の認知2はA新情報、情報の認知3はA問題未解決から推論へである。
C:情報の認知1はB条件反射、情報の認知2はA新情報、情報の認知3はA問題未解決から推論へである。
D:情報の認知1はB条件反射、情報の認知2はA新情報、情報の認知3はA問題未解決から推論へである。
E:情報の認知1はB条件反射、情報の認知2はA新情報、情報の認知3は@計画から問題解決へである。
結果
幸田文は、この場面で臨終間際の露伴を看病しながら、父の死を宣告される瞬間が来たことを伝えている。そして、山場を経過してから美醜愛憎の中にも父への恩を説明しているため、「誠実と心の記録」と「偽りない心と誠意」という組が相互に作用する。
花村嘉英(2020)「幸田文の『父』の執筆脳について」より
A 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2
B 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2
C 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2
D 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2
E 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 1
A:情報の認知1はB条件反射、情報の認知2はA新情報、情報の認知3はA問題未解決から推論へである。
B:情報の認知1はB条件反射、情報の認知2はA新情報、情報の認知3はA問題未解決から推論へである。
C:情報の認知1はB条件反射、情報の認知2はA新情報、情報の認知3はA問題未解決から推論へである。
D:情報の認知1はB条件反射、情報の認知2はA新情報、情報の認知3はA問題未解決から推論へである。
E:情報の認知1はB条件反射、情報の認知2はA新情報、情報の認知3は@計画から問題解決へである。
結果
幸田文は、この場面で臨終間際の露伴を看病しながら、父の死を宣告される瞬間が来たことを伝えている。そして、山場を経過してから美醜愛憎の中にも父への恩を説明しているため、「誠実と心の記録」と「偽りない心と誠意」という組が相互に作用する。
花村嘉英(2020)「幸田文の『父』の執筆脳について」より
幸田文の「父」の執筆脳について−臨終6
【連想分析2】
情報の認知1(感覚情報)
感覚器官からの情報に注目することから、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。このプロセルのカラムの特徴は、@ベースとプロファイル、Aグループ化、B条件反射である。
情報の認知2(記憶と学習)
外部からの情報を既存の知識構造へ組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。未知の情報は、またカテゴリー化される。このプロセスは、経験を通した学習になる。このプロセルのカラムの特徴は、@旧情報、A新情報である。
情報の認知3(計画、問題解決、推論)
受け取った情報は、計画を立てるプロセスでも役に立つ。その際、目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。しかし、獲得した情報が完全でない場合は、推論が必要になる。このプロセルのカラムの特徴は、@計画から問題解決へ、A問題未解決から推論へである。
花村嘉英(2020)「幸田文の『父』の執筆脳について」より
情報の認知1(感覚情報)
感覚器官からの情報に注目することから、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。このプロセルのカラムの特徴は、@ベースとプロファイル、Aグループ化、B条件反射である。
情報の認知2(記憶と学習)
外部からの情報を既存の知識構造へ組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。未知の情報は、またカテゴリー化される。このプロセスは、経験を通した学習になる。このプロセルのカラムの特徴は、@旧情報、A新情報である。
情報の認知3(計画、問題解決、推論)
受け取った情報は、計画を立てるプロセスでも役に立つ。その際、目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。しかし、獲得した情報が完全でない場合は、推論が必要になる。このプロセルのカラムの特徴は、@計画から問題解決へ、A問題未解決から推論へである。
花村嘉英(2020)「幸田文の『父』の執筆脳について」より
幸田文の「父」の執筆脳について−臨終5
分析例
1 父露伴の臨終の場面。
2 この小論では、「父」の購読脳を「誠実と心の記録」と考えているため、意味3の思考の流れ、性格の創造からその表現へに注目する。
3 意味1@視覚A聴覚B味覚C嗅覚D触覚 、意味2 @喜A怒B哀C楽、意味3@性格の創造からAその表現へ、意味4振舞い @直示A隠喩B記事なし
4 人工知能 @創造、A認知発達
テキスト共生の公式
ステップ1:意味1、2、3、4を合わせて解析の組「誠実と心の記録」を作る。
ステップ2:性格の創造とその表現の精神状態から「偽りない記録と誠意」という組を作り、解析の組と合わせる。
A:@視覚+B哀+@誠実あり+@直示という解析の組を、@創造+A認知発達という組と合わせる。
B:A聴覚+B哀+@誠実あり+@直示という解析の組を、@創造+A認知発達という組と合わせる。
C:A聴覚+B哀+@誠実あり+@直示という解析の組を、@創造+A認知発達という組と合わせる。
D:A聴覚+B哀+@誠実あり+@直示という解析の組を、@創造+A認知発達という組と合わせる。
E:A聴覚+B哀+@誠実あり+@直示という解析の組を、@創造+A認知発達という組と合わせる。
結果 表2については、テキスト共生の公式が適用される。
花村嘉英(2020)「幸田文の『父』の執筆脳について」より
1 父露伴の臨終の場面。
2 この小論では、「父」の購読脳を「誠実と心の記録」と考えているため、意味3の思考の流れ、性格の創造からその表現へに注目する。
3 意味1@視覚A聴覚B味覚C嗅覚D触覚 、意味2 @喜A怒B哀C楽、意味3@性格の創造からAその表現へ、意味4振舞い @直示A隠喩B記事なし
4 人工知能 @創造、A認知発達
テキスト共生の公式
ステップ1:意味1、2、3、4を合わせて解析の組「誠実と心の記録」を作る。
ステップ2:性格の創造とその表現の精神状態から「偽りない記録と誠意」という組を作り、解析の組と合わせる。
A:@視覚+B哀+@誠実あり+@直示という解析の組を、@創造+A認知発達という組と合わせる。
B:A聴覚+B哀+@誠実あり+@直示という解析の組を、@創造+A認知発達という組と合わせる。
C:A聴覚+B哀+@誠実あり+@直示という解析の組を、@創造+A認知発達という組と合わせる。
D:A聴覚+B哀+@誠実あり+@直示という解析の組を、@創造+A認知発達という組と合わせる。
E:A聴覚+B哀+@誠実あり+@直示という解析の組を、@創造+A認知発達という組と合わせる。
結果 表2については、テキスト共生の公式が適用される。
花村嘉英(2020)「幸田文の『父』の執筆脳について」より
幸田文の「父」の執筆脳について−臨終4
【連想分析1】
表2 受容と共生のイメージ合わせ
A 「こわかないですよ。あれが痙攣てものなんです。」小林さんは微笑して私をほごそうとしている。「だって私あの顔こわい。」「あなたがこわいくらいな先生の顔なら、なるべく誰にも見せない方がいいんじゃないですか。」 意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能1
B 私はぐっとつまった。十五分して又発作があった。顔は右が余計ひきつれてゆがんだ。それはおばあさん、父の母の晩年の顔そっくりだった。もう怖くもなんともなかった。また十五分して発作があった。
意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能1
C 三十日朝、柳田泉さんが来た。ついで武見さんが来た。先生が見ていてくれるところで安心して父の甲虫を掃除したかった。しろうとのそんなことが一気に死の直原因になってはと恐れて、し得なくていたのだった。 意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能2
D 「おとうさん、先生が見ていらしてくださるうちに綾子がお口を洗ってあげましょう。それでないと心配ですからね。さ、綺麗なお水をあがってくだあい。」割箸のさきに脱脂綿をつけ氷の水を含ませた。ごくりと喉仏が動いて通って行った。診察を済ませ、先生は小林さんやほかの人との話をしてい、私も送り出ていた。
意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能2
E 「色が変わった!」柳田さんの声だった。たちまち強いろが顔から奪って行った。武見さんが調音器をあてたまま、ややしばらく、「そう、心臓がとまりました」と云った。父は死んで、終わった。
意味1 1+2、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能1
花村嘉英(2020)「幸田文の『父』の執筆脳について」より
表2 受容と共生のイメージ合わせ
A 「こわかないですよ。あれが痙攣てものなんです。」小林さんは微笑して私をほごそうとしている。「だって私あの顔こわい。」「あなたがこわいくらいな先生の顔なら、なるべく誰にも見せない方がいいんじゃないですか。」 意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能1
B 私はぐっとつまった。十五分して又発作があった。顔は右が余計ひきつれてゆがんだ。それはおばあさん、父の母の晩年の顔そっくりだった。もう怖くもなんともなかった。また十五分して発作があった。
意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能1
C 三十日朝、柳田泉さんが来た。ついで武見さんが来た。先生が見ていてくれるところで安心して父の甲虫を掃除したかった。しろうとのそんなことが一気に死の直原因になってはと恐れて、し得なくていたのだった。 意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能2
D 「おとうさん、先生が見ていらしてくださるうちに綾子がお口を洗ってあげましょう。それでないと心配ですからね。さ、綺麗なお水をあがってくだあい。」割箸のさきに脱脂綿をつけ氷の水を含ませた。ごくりと喉仏が動いて通って行った。診察を済ませ、先生は小林さんやほかの人との話をしてい、私も送り出ていた。
意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能2
E 「色が変わった!」柳田さんの声だった。たちまち強いろが顔から奪って行った。武見さんが調音器をあてたまま、ややしばらく、「そう、心臓がとまりました」と云った。父は死んで、終わった。
意味1 1+2、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能1
花村嘉英(2020)「幸田文の『父』の執筆脳について」より