2014年07月01日
東京一極集中の裏側で
東京一極集中の裏側で、
多くの地方都市が苦しんでいます。
「東京一極集中の裏側で。
日本の将来を考えるうえで、
地方を救う手がかりを見つけなくてはなりません。
2007年に財政破綻し、
再生に向けて動き出している北海道夕張市。
市長の鈴木直道さんに夏野剛さんが再生への取り組みを聞きました。
鈴木直道(すずき・なおみち)氏
1981年生まれ、
33歳。
埼玉県三郷市出身。
東京都職員として働きながら法政大学法学部を卒業。
大学ではボクシング部主将だった。
08年から10年まで、
東京都から財政破綻(はたん)した夕張市に派遣される。
11年に夕張市長選に立候補し当選。
30歳で全国最年少市長(当時)になった。
夏野剛(なつの・たけし)氏
1965年生まれ、
49歳。
慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授。
NTTドコモ時代に、
「iモード」
「おサイフケータイ」
などの多くのサービスを立ち上げた。
ニコニコ動画のドワンゴの取締役もつとめる。
夏野 僕は人口減少社会の行方に、
危機感がものすごくあります。
「均衡ある国土の発展」は
田中角栄さん以降の日本の国策でした。
都市も地方も一緒に発展するということが
前提となっていましたが、
人口減少で前提が変わってしまいます。
2010年から13年までで
日本の人口は75万人減った。
これから20年までにもう300万人減る。
この10年間でおよそ400万人減る。
北海道(540万人)ひとつよりちょっと
少ないぐらいがいなくなる勘定です。
人口減少社会に向けて、
国土開発の計画を根本的に
変えなくてはいけない時代なのに、
均衡ある国土の発展の延長線上に
「国土強靱化(きょうじんか)」が
改めて登場しました。
政府は14日、
今後5年間の防災・減災対策の指針となる
「国土強靱(きょうじん)化基本計画」と
実行計画「アクションプラン」の素案をまとめた。
南海トラフ巨大地震などで津波が想定される地域にある
堤防の整備率を2012年の31%から、
16年にはほぼ2倍の66%に引き上げることが柱。
基本計画は5月末にも閣議決定し、
来年度予算に反映させる。
基本計画は巨大地震や火山噴火などの
大規模災害で考えられる45のリスクについて、
現状の対策の弱点を指摘し、
改善策を示した。
年度ごとにアクションプランを更新し、
数値目標を定めるのが特徴。
今年度は住宅の耐震化率を
79%(08年)から
95%(20年)に高める目標などを掲げた。
地方から見たら、
このままでは生活が成り立たない、
公共事業がなくなれば、
我々の生活はどうなるのか、
という思いがあるのは分かります。
でも日本全体の流れからみれば、
人が住む可能性がないところに
新たに公共事業を実施するには無理がある。
東京だけに集中しろ、
というのではなくて、
地方の中核都市を育てたり、
地方の都市をコンパクトにしたりして、
地方も効率化しなければいけない。
そう思っていたら、
鈴木さんがすでにやっていたんですよ。
鈴木 やらざるを得ないからやっているんです。
おしりに火がついていますから。
夏野 頭の構造をチェンジしない人が多いのに、
どうやって鈴木さんはクリアできたのか。
鈴木 完全にクリアしたのかどうかはわかりません。
しかし、
政治家として方向性を決めたら、
半歩、
一歩ずつでも前へと進んでいかなければならない。
夏野 人口減少について、
やっと国も躍起になり、
何とかしなければいけないという動きが出てきた。
今のタイミングはいいですね。
鈴木 確かにそうです。
しかし、
選挙で選ばれる公選職の首長は、
市民のみなさんからは
「人口を増やせ」と言われます。
人を増やす努力はもちろんしますが、
現実的な問題として、
人口減少を受け入れて対策を講じることもとても重要です。
夏野 ふたつの政策は矛盾していますよね。
鈴木 しかも、
どちらの受けがいいかというと、
「人口は減りますから、
都市構造を変えます」と市民のみなさんに言うと、
「おいおい、
高い目標をかかげろよ」と反発される。
ですからこれまでは選挙で選ばれる身としては、
人口減少を前提とした都市計画をつくりにくかった、
という部分がありました。
でも夕張市長になって「20年後には人口が半分になります。
その時、
みなさんはどうなりますか、
あなたの地域はどうなりますか」と問いかけた。
70歳の方は、
20年後には90歳。
人口は半分。
今でも住宅は空いているのにもっと空いてくる。
そのときに
「いよいよ限界だ」と動くよりも、
今から人口減少を前提として計画をみなさまと
ともにつくった方がいいのではないか、
と呼びかけました。
計画をつくる際も、
将来、
町の真ん中に集まってくる人たちの
地域代表にも話し合いの場に参加してもらい、
計画をつくったわけです。
町まるごと人口減少を前提にした都市構造の転換。
その計画が全国初とは、
それまで知らなかった。
学者の方に「初めて」と言われて、
「そうなんだ」と。
夏野 増田寛也・元総務大臣らの日本創成会議が、
全国で50%近くの市町村が消滅可能性都市だと発表したときに、
全国の首長が
「うちの町は消滅可能性都市か」とびっくりしました。
これはおかしな話で、
どの市町村も人口の将来推計を持っているのだから、
自分の町の人口が減っていくのは分かっていたはず。
日本創成会議のリポートで初めて知ったというのは、
見たくないデータを見ていないからです。
選挙には関係ないし、
手もつけられない。
そこに手をつけた鈴木さんは相当大変だったと思う。
2040年までに20〜39歳の若年女性が半減し、
行政機能の維持が難しくなるとみられる自治体。
介護保険や医療保険など社会保障の維持が難しくなるほか、
雇用も確保しづらくなる。
有識者らでつくる民間研究機関
「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)が
全国計896の自治体に上るとする独自の試算を公表した。
岩手、
宮城両県沿岸部の被災地の多くが該当。
福島県内は原発事故の影響で推計困難として試算対象外となった。
鈴木 こないだも財務省に呼ばれました。
「夕張で取り組んでいる
コンパクトシティをぜひ教えて欲しい」ということで。
約1700の市町村は、
ほとんどが東京のような大都市ではない。
大都市以外をどうするかが大きな問題です。
人口減少が進む中で、
どのような持続可能な仕組みをつくるか真剣に考え、
実践しなければならない。
夏野 実際に町の中心地に移転交渉をするとなると、
いろいろな問題を解決しなければならないでしょうね。
鈴木 移転交渉は200世帯以上が終わっています。
移転先は中心地区に建設したバリアフリーの平屋の木造など。
新しい風呂つきの住宅で、
移転補償として14万円をお支払いする。
この条件を聞いて、
「いい条件だ。
合意してもらえるのでは」と考える人も多いと思いますが、
それが落とし穴です。
交渉担当者には「そういった前提は捨ててくれ。
まず絶対反対されるから」と言いました。
夏野 どういうことですか。
道内の優れた公的賃貸住宅を表彰する「北の地域住宅賞」で、
夕張市の歩(あゆみ)団地が最高賞の知事賞に選ばれた。
歩団地は同市で10年ぶりに新築された市営住宅。
鈴木直道市長は、
札幌市で14日にあった表彰式で「市民など皆さんに伝え、
今後の(住宅)再編事業の励みにしたい」と語った。
歩団地は夕張の中央部にあり、
平屋建ての全6棟に1LDKから3LDKまで28戸がある。
昨年度中に全棟が完成し、
昭和40年代に建てられた市営住宅など市内各地にいた人たちが入居した。
建設費は約5億円。
住宅賞は道地域住宅協議会の主催で、
他地域のモデルとなるような公営住宅を表彰する。
歩団地は、
全国唯一の財政再生団体である同市で人口が激減するなか、
点在する住まいの集約を目指したことや、
木材の約9割に市有林のカラマツを使う取り組みなどが評価された。
鈴木市長によると、
入居した80代の女性が
「引っ越しには反対だったけれど、
これまでで一番暖かい冬を過ごせた」と話していたという。
鈴木市長は
「(住まいを集約する)
コンパクトシティー化の部分でも一歩踏み出したという評価だと思っている」
と語った。
夕張では、
歩団地と同様の間取りで萌(めばえ)団地の全6棟32戸が
今年度末までに完成の予定。
市は2015年度までに、
歩と萌を含めて合計100戸を
市の中央部に建てることを計画している。
ただ待っていてはいけません、
積極的に動かなくてはいけませんね。
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多くの地方都市が苦しんでいます。
「東京一極集中の裏側で。
日本の将来を考えるうえで、
地方を救う手がかりを見つけなくてはなりません。
2007年に財政破綻し、
再生に向けて動き出している北海道夕張市。
市長の鈴木直道さんに夏野剛さんが再生への取り組みを聞きました。
鈴木直道(すずき・なおみち)氏
1981年生まれ、
33歳。
埼玉県三郷市出身。
東京都職員として働きながら法政大学法学部を卒業。
大学ではボクシング部主将だった。
08年から10年まで、
東京都から財政破綻(はたん)した夕張市に派遣される。
11年に夕張市長選に立候補し当選。
30歳で全国最年少市長(当時)になった。
夏野剛(なつの・たけし)氏
1965年生まれ、
49歳。
慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授。
NTTドコモ時代に、
「iモード」
「おサイフケータイ」
などの多くのサービスを立ち上げた。
ニコニコ動画のドワンゴの取締役もつとめる。
夏野 僕は人口減少社会の行方に、
危機感がものすごくあります。
「均衡ある国土の発展」は
田中角栄さん以降の日本の国策でした。
都市も地方も一緒に発展するということが
前提となっていましたが、
人口減少で前提が変わってしまいます。
2010年から13年までで
日本の人口は75万人減った。
これから20年までにもう300万人減る。
この10年間でおよそ400万人減る。
北海道(540万人)ひとつよりちょっと
少ないぐらいがいなくなる勘定です。
人口減少社会に向けて、
国土開発の計画を根本的に
変えなくてはいけない時代なのに、
均衡ある国土の発展の延長線上に
「国土強靱化(きょうじんか)」が
改めて登場しました。
政府は14日、
今後5年間の防災・減災対策の指針となる
「国土強靱(きょうじん)化基本計画」と
実行計画「アクションプラン」の素案をまとめた。
南海トラフ巨大地震などで津波が想定される地域にある
堤防の整備率を2012年の31%から、
16年にはほぼ2倍の66%に引き上げることが柱。
基本計画は5月末にも閣議決定し、
来年度予算に反映させる。
基本計画は巨大地震や火山噴火などの
大規模災害で考えられる45のリスクについて、
現状の対策の弱点を指摘し、
改善策を示した。
年度ごとにアクションプランを更新し、
数値目標を定めるのが特徴。
今年度は住宅の耐震化率を
79%(08年)から
95%(20年)に高める目標などを掲げた。
地方から見たら、
このままでは生活が成り立たない、
公共事業がなくなれば、
我々の生活はどうなるのか、
という思いがあるのは分かります。
でも日本全体の流れからみれば、
人が住む可能性がないところに
新たに公共事業を実施するには無理がある。
東京だけに集中しろ、
というのではなくて、
地方の中核都市を育てたり、
地方の都市をコンパクトにしたりして、
地方も効率化しなければいけない。
そう思っていたら、
鈴木さんがすでにやっていたんですよ。
鈴木 やらざるを得ないからやっているんです。
おしりに火がついていますから。
夏野 頭の構造をチェンジしない人が多いのに、
どうやって鈴木さんはクリアできたのか。
鈴木 完全にクリアしたのかどうかはわかりません。
しかし、
政治家として方向性を決めたら、
半歩、
一歩ずつでも前へと進んでいかなければならない。
夏野 人口減少について、
やっと国も躍起になり、
何とかしなければいけないという動きが出てきた。
今のタイミングはいいですね。
鈴木 確かにそうです。
しかし、
選挙で選ばれる公選職の首長は、
市民のみなさんからは
「人口を増やせ」と言われます。
人を増やす努力はもちろんしますが、
現実的な問題として、
人口減少を受け入れて対策を講じることもとても重要です。
夏野 ふたつの政策は矛盾していますよね。
鈴木 しかも、
どちらの受けがいいかというと、
「人口は減りますから、
都市構造を変えます」と市民のみなさんに言うと、
「おいおい、
高い目標をかかげろよ」と反発される。
ですからこれまでは選挙で選ばれる身としては、
人口減少を前提とした都市計画をつくりにくかった、
という部分がありました。
でも夕張市長になって「20年後には人口が半分になります。
その時、
みなさんはどうなりますか、
あなたの地域はどうなりますか」と問いかけた。
70歳の方は、
20年後には90歳。
人口は半分。
今でも住宅は空いているのにもっと空いてくる。
そのときに
「いよいよ限界だ」と動くよりも、
今から人口減少を前提として計画をみなさまと
ともにつくった方がいいのではないか、
と呼びかけました。
計画をつくる際も、
将来、
町の真ん中に集まってくる人たちの
地域代表にも話し合いの場に参加してもらい、
計画をつくったわけです。
町まるごと人口減少を前提にした都市構造の転換。
その計画が全国初とは、
それまで知らなかった。
学者の方に「初めて」と言われて、
「そうなんだ」と。
夏野 増田寛也・元総務大臣らの日本創成会議が、
全国で50%近くの市町村が消滅可能性都市だと発表したときに、
全国の首長が
「うちの町は消滅可能性都市か」とびっくりしました。
これはおかしな話で、
どの市町村も人口の将来推計を持っているのだから、
自分の町の人口が減っていくのは分かっていたはず。
日本創成会議のリポートで初めて知ったというのは、
見たくないデータを見ていないからです。
選挙には関係ないし、
手もつけられない。
そこに手をつけた鈴木さんは相当大変だったと思う。
2040年までに20〜39歳の若年女性が半減し、
行政機能の維持が難しくなるとみられる自治体。
介護保険や医療保険など社会保障の維持が難しくなるほか、
雇用も確保しづらくなる。
有識者らでつくる民間研究機関
「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)が
全国計896の自治体に上るとする独自の試算を公表した。
岩手、
宮城両県沿岸部の被災地の多くが該当。
福島県内は原発事故の影響で推計困難として試算対象外となった。
鈴木 こないだも財務省に呼ばれました。
「夕張で取り組んでいる
コンパクトシティをぜひ教えて欲しい」ということで。
約1700の市町村は、
ほとんどが東京のような大都市ではない。
大都市以外をどうするかが大きな問題です。
人口減少が進む中で、
どのような持続可能な仕組みをつくるか真剣に考え、
実践しなければならない。
夏野 実際に町の中心地に移転交渉をするとなると、
いろいろな問題を解決しなければならないでしょうね。
鈴木 移転交渉は200世帯以上が終わっています。
移転先は中心地区に建設したバリアフリーの平屋の木造など。
新しい風呂つきの住宅で、
移転補償として14万円をお支払いする。
この条件を聞いて、
「いい条件だ。
合意してもらえるのでは」と考える人も多いと思いますが、
それが落とし穴です。
交渉担当者には「そういった前提は捨ててくれ。
まず絶対反対されるから」と言いました。
夏野 どういうことですか。
道内の優れた公的賃貸住宅を表彰する「北の地域住宅賞」で、
夕張市の歩(あゆみ)団地が最高賞の知事賞に選ばれた。
歩団地は同市で10年ぶりに新築された市営住宅。
鈴木直道市長は、
札幌市で14日にあった表彰式で「市民など皆さんに伝え、
今後の(住宅)再編事業の励みにしたい」と語った。
歩団地は夕張の中央部にあり、
平屋建ての全6棟に1LDKから3LDKまで28戸がある。
昨年度中に全棟が完成し、
昭和40年代に建てられた市営住宅など市内各地にいた人たちが入居した。
建設費は約5億円。
住宅賞は道地域住宅協議会の主催で、
他地域のモデルとなるような公営住宅を表彰する。
歩団地は、
全国唯一の財政再生団体である同市で人口が激減するなか、
点在する住まいの集約を目指したことや、
木材の約9割に市有林のカラマツを使う取り組みなどが評価された。
鈴木市長によると、
入居した80代の女性が
「引っ越しには反対だったけれど、
これまでで一番暖かい冬を過ごせた」と話していたという。
鈴木市長は
「(住まいを集約する)
コンパクトシティー化の部分でも一歩踏み出したという評価だと思っている」
と語った。
夕張では、
歩団地と同様の間取りで萌(めばえ)団地の全6棟32戸が
今年度末までに完成の予定。
市は2015年度までに、
歩と萌を含めて合計100戸を
市の中央部に建てることを計画している。
ただ待っていてはいけません、
積極的に動かなくてはいけませんね。
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