2019年02月08日
談合(後編)
新しい施設などができると、備品の購入など入札が行われます。
入札が公示されると説明会に各社の社長が出席します。
説明会では購入する物品のリストが配られます。
リストには物品のメーカーや品番などが書いてあります。
ときにはメーカーと品番が書いてあり、その“同等品”という場合があります。
各社、取引先により得意不得意なメーカーがあるので、同等品の場合は得意なメーカーで入札します。
しかし同等品でなくメーカー指定であった場合、すでにその時点で“勝負あり”ともいえます。
各社、得意なメーカーがあります。
毎年暮れになるとメーカーから総合カタログが発売されます。
各社、得意なメーカーのカタログを得意先に配ってまわり、必要なときに使ってもらうものでした。
一冊1,500円くらいする分厚いカタログを、各課にメーカーごと数社分を置いて歩くのです。
勝負ありというのは、入札リストがメーカー指定であった場合、もう落札すべき会社が決まっているのです。
新たに施設ができる場合、半年とか、早ければ年度をまたいで事前にわかっているときがあります。
その情報をもとに、各社では担当課に営業をかけます。
メーカー指定があるというのは、そのメーカーを得意とする会社の営業努力が認められたのです。
もっといえば、施設ができるという情報をいち早くつかむことがすでに営業努力と言って良いでしょう。
そして“談合”が始まります。
思うと大胆にやっていたなと思うのは、社長さんたちが一堂に会すのです。
場所はある社の中であったり、喫茶店であったりしたと思います。
狭い町で、ある業種の社長たちが集まればすぐにバレると思うのですが、そこは寛容な昔だったのでしょう。
そして社長たちの奪い合いが始まります。
リストを見ながら、
「この商品はうちで落札する!」
と、いうのは仲の良い方で、大抵は
「全部うちが落札する」
のぶつかりあいです。
ただ、
先のメーカー指定があった場合は、他の社長たちも企業努力は認めているので、ある程度“平和”に終わります。
そして入札があり、落札する会社が決定。
施設ができあがり、物品が納入されます。
そして官公庁などから入金があると、落札した会社は粗利益を等分して各社に振込みます。
利益は各社同額です。
すると落札した会社は納入する手間暇を損すると思いがちですが、メーカーに対して“実績”ができます。
なので、それでよしとしていたようです。
“予定価格”が官公庁から漏れることは普通、ありませんでした。
しかし当時は“定価”が決まっていたので、業者ではだいたい“何割引”とわかっていました。
予定価格内で納まり、業者も利益を等分します。
これが“談合”です。
もちろん、絶対にやってはいけないことです。
でもこういった均衡状態がいつまでも続くわけではありません。
“同等品”とあったとき、さらには会社の資金繰りもかかわってくると“是が非でも”となります。
そうなれば“談合”も決裂します。
すると当然、分け前もありませんから各社、だいたい原価(仕入れ値)で入札します。
原価で落札しても利益はありません。しかしメーカーに対して実績をつくるとか、売り上げが欲しいとか、資金繰りがかかわってくれば利益よりも落札するのが大切です。
もし資金繰りに切羽詰まった会社であれば原価を下回ってでも落札するか知れません。
そういう状況であれば、仲良く談合して少しの“配当金”を手にするより、赤字でも落札して売上げが欲しいかもしれないですね。
官公庁にすれば予定価格より大幅に安く購入できるので助かるのでしょう。
“談合”をしてはいけません。
しかし“談合”がなければ“利益”もないでしょう。
“入札”や“見積もり合わせ”にかかわった人間として肌で感じます。
“必要悪”という言葉はありますが、談合を必要悪という言葉にして逃げるのは良くないと思います。
ですが、同時に利益のない商売を強要されるのもどうかと思います。
と、今日はグレーに終わります。
“ブラック”な話はまだあります。
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