2024年05月11日
固定電話
まだ昭和の時代。まだ携帯電話などなくて、通信手段は固定電話か手紙の時代。
中学生の頃、部活中にふと見ると、よくこちらを見ている女の子がいました。後輩で年齢は、いっこ下。かわいい顔をしていて、私も好意を寄せていました。
というより、チラチラ見る作戦にだんだん私が嵌められていったのかも知れません。
私は中学を卒業し、先に高校へ進学します。高校は親元を離れ、実家から鉄道で4時間くらいかかる地方都市へ行きました。鉄道といってもまだ国鉄の時代です。
きっかけをどう作ったのかは憶えていません。でもその女の子と文通を始めたんです。
私は先に地方都市に来ていましたけど、女の子は中学3年生です。将来をどう考えているのか聞くと、美容師になりたいと返ってきました。
美容師?
では理容美容専門学校で、同じ地方都市に??
するとまったくそのように考えていると返事が来たんです。
とうとう春が来た!って思いましたね。
季節は春になり、春休みで帰省した私は女の子とデートしました。白のサブリナパンツと白い靴で、おしゃれしてきたんだと思いました。
とうとう4月になり、いつ引っ越してくるのか、いつ会えるのか?
待ち遠しくて仕方のなかった私は、女の子から来た手紙をむさぼるように読み始めたんです。
そしたら、え??
お付き合いはできないと書いてありました。美容学校での学習を頑張ると。
私は、天井から奈落です。
3億円の宝くじが当たって、受け取りに行ったら
「うそぴょーん!」
と言われた方が、まだよかったかも知れません。
自分の居場所がないっていうんでしょうか。
誰とも話したくないし、会いたくないし、一緒にいたくない。
ひとり徹夜で街を歩き続けたこともありました。
事実はこうです。
女の子とデートをしたあと、私、電話で話したんです。当時はまだ固定電話。
電話をしたら、女の子の父親が出ました。私は
「○○さんはいらっしゃいますか?」
と聞いて、ここまでは良かったんです。
固定電話でよくあったのが、電話の並列つなぎでした。もともと1本しか来ていない電話線に2台の固定電話を、例えば1階と2階とで並列に接続します。すると、どちらの電話機もつながった状態になります。
女の子の父親は2階にいる女の子に代わって、それでもずっと我々の会話を聞いていたんです。
そして女の子の父は、理容美容専門学校には彼氏を作りに行くんじゃない。勉強しに行くんだと諭し、女の子は納得してしまいました。
当たり前に盗聴がされていた時代でしたね。
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