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2024年09月13日

社会学の観点から文学をマクロに考えるー自然や文化の観察者としての作家について4

2 ネットワークの構築

 社会学の考え方として、多方面に渡って人間相互のネットワークを分析することにより、人間の条件を理解するというものがある。橋爪他(2016)は、社会のごく一面に注目して研究を進める政治学や経済学や法学とは異なり、社会学こそが社会全体を丸ごと研究する学問とし、人間と人間との関係こそが社会であると考えている。政治も経済も法律も確かに人間と人間との関係を扱っている。しかし、いずれも権力や金や法律による関係であって、特殊なものである。一方、社会学は、多様な関係のより一般的な在り方を研究する学問である。
 作家の執筆脳を理解するとき、文理に通じるようにシナジーのメタファーという用語を使用している。作家が自身で執筆していれば、読者に伝えようと思っている情報が小説の中に必ずあるはずである。例えば、定番の読みといわれるもの、トーマス・マンならばイロニー、魯迅ならば馬虎(詐欺をも含む人間的ないい加減さ)、川端康成であれば無と創造がそれに当たる。
 そもそも作家の執筆脳は、人の目には見えないものである。執筆脳の研究をするとしたら、理系の研究者の場合、生存者の脳波を取り、反応している部位の細胞を調べていくであろう。一方、人文の研究者は、あくまで文献学が専門のため、亡くなった作家についても自分で書いていることを条件にデータベースを作成しながら研究するとよい。 

花村嘉英(20202)「社会学の観点からマクロの文学を考察するー自然や文化の観察者としての作家について」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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