生きていた頃。。。かぁ。史上の楽園プルメリア島
限りなく続く透明な向こうの海、
観光客、常連客、昼間からほろ酔いと乾杯、喜びのざわめき。まるで悲しみなど知らない楽しさしかないような雰囲気の
海の家クワタのにぎやかな昼下がり。。だけど、自分は笑い合って場を楽しむ人々を見ているだけ。。。
異母兄の懐かしい姿が近くにあれど。。
幽霊の吾朗太さんは、賑やかさの隣でふいに孤独に包まれてぼんやりとながらも生きていた頃の事を少しづつ思い出しはじめた。少しづつ、少しずつだけど。蘇る思い出、走馬灯が静かに流れて。。きっと、奔流には喜び。生命の輝きが流れていた事も。生命には今世限りの有限な時間があるから幸せな時間はどこまでも続くとは思わないけど
それでも、まだまだ生命は続くと多分多くの人は自分が天寿をまっとうできると信じて疑わないだろう。吾朗太さんは。。。母親なんて自分を産んだ事で亡くなり、顔すら写真ぐらいしか見たことがないし父親の蓮気も小学生の頃に死んだ。父親のヤクザの部下や身近の幹部の若い衆も何人も亡くなっている暴走族をやっていた頃の仲間も反社会の東京邪神軍の仲間も事故や喧嘩で若いうちに何人か亡くなっているだけど今から思えば死線スレスレで事故や殺されてもおかしくない環境でいつ死んでも当たり前だった生前があの頃はそれだけ死は身近にあっても大切な人達の死を目の当たりにしたとて。。。死などどこか他人事のようにしか思えなかった長い未来はきっとあると当たり前のように思って。。。馬鹿だったなぁ。。今更ながら遅いけど。この世に未練タラタラで。。。
そうだった、小学生ぐらいの時に父親の蓮気が亡くなってよけいに俺は荒れ果てて剣崎組は解散したけどオヤジの部下や友人が気にかけて面倒をみてくれたり、オヤジの弟のヒロキは僧侶になって剣崎家と縁を切ったはずだったのに世話してくれたり気にかけてくれたり。。
いつ命を狙われたり死んでもおかしくない環境の
父親の蓮気はもしもの時に弟のヒロキにいろいろと頼み事をしていたらしい。叔父のヒロキの事もジワジワと思い出してきた。
ヒロキはヤクザを嫌って剣崎と絶縁て僧侶になったものの剣崎家が嫌なのであって兄の蓮気とは仲が悪いという事もなかったし蓮気とヒロキの父親の先代の剣崎組の組長から蓮気と末っ子の弟はヤンチャでヒロキだけ大人しいのであれこれうるさく言われていたらしいが蓮気が間に入って、「必ずしも家業に適した性質の子どもが産まれるわけじゃないし、むしろ適材適所に産まれて来た方が珍しい。自分が責任持って跡取りになるからヒロキは真面目だし、向いてないヤクザなんかできるわけない。
ヒロキはヒロキの好きにさせたらいい。」と必死でヒロキを庇ってきたらしいしヒロキが剣崎家から出て行っても蓮気はヒロキと繋がっていたのだ。
なんか。。。
吾朗太さんはぼんやりと考えました。
蓮気が亡くなっても自分は確かになんでかよくわからないが。悪い事ばっかりしていた癖に
たくさんの人からなお愛されてきたけれどヒロキ。。。ヒロキの叔父貴。。。まだ生きてるんだろうか。
そう言えば。。。生きていても爺さんだし。かと言ってまだ生きていてもおかしくない年齢だったと思う。だけど。。。俺、はっきりとじゃないけど。。ヒロキの叔父貴とはなんか。。。オヤジが死んで家出や年少入りでろくに家に寄り付かなかった割にはなんか、大事な事を話し合っていた気がするけど
ヒロキは剣崎家を嫌がってそして、代々、ヤクザでたくさんの人達に迷惑かけてきてのし上がり剣崎家はだいたいの男性が異性に強くモテるので。。。女性を利用したり売り飛ばしたり騙したりで特に女性から恨まれていたので、ヒロキは自ら厳しい寺の僧侶になり結婚もせずに生涯独身を貫いて今まで迷惑をかけてきた浮かばれない亡くなった人の供養もしながら少しでも剣崎家の過ちの償いをと弔いと反省とともに修行に勤しんでいたはずだ。そんな生活をしてる叔父貴だけど。。どうも気になるもう死んでるなら仕方ないけど生前は疎遠じゃないはずだ、子どもの頃、オヤジが亡くなった時にあれこれ世話をやいてきた、とそれじゃなくて。。。
それよりもっと。。。もっとヒロキの叔父貴が歳をくって、俺がヤンチャして、何度もムショに出入りして。しょうもない生活して、で死ぬ前。。なんかすんごい。。大事な事を。。。記憶が少しずつ、だけど思い出しつつある吾朗太さんはおじさんのヒロキの顔をなぜか幾度となく。。なんとなく思い出すきっと、大事な。。。でもなんで。。。吾朗太さんの生前のハタチやハタチ過ぎ、反社会、闇の中で荒れ狂う生活をしていたはずが。。。不思議な事になぜ、僧侶の叔父貴のヒロキを思い出すんだろうか。。。しかも、叔父貴はかなり厳しいという寺の僧侶で、結婚もしてはいけない、食べるものも菜食主義の、いわゆるベジタリアンみたいなところだったと思う。
あの、ブーコ達のゆるい木蓮寺とは全く違うのだ。。。別に木蓮寺が悪いという事でもないし。木蓮寺達にベジタリアンを言わせればじゃあ植物の命をもぎ取ってもいいのかそれはおかしい、植物だって生命だし、我々人間や生命体だって、亡くなって土に帰ればバクテリアや植物の養分になるのでみんなエネルギー、生命を循環してお互い様なので。。そうやってお互いに必要に応じ合って支えて発展していくのだという事になる。。。まぁ、俺もはっきり言って肉も魚も食べないが植物だけ生命を奪っていいというのはおかしな考え方としか思えないしそれをいい事をしているというのはあまりにも屁理屈だし。。変だとしか思えないけど
とにかく、今はそんな事どうでもいいけどなんで。。生前俺のいた反社会とは真逆の縁がないような世界。。。そんな厳しい環境にいる叔父貴を思い出すんだろう。
寺。。。か。吾朗太さんは、俺が亡くなって幽霊としてこうやって彷徨い続けながらも拠点を木蓮寺として、知らないうちに自然に木蓮寺にたどり着いて夜に住み着いているのも、
なにか、生前の事で深層心理で気づかないうちに寺を求めていたのかもしれない。でも、まさか。。。まさか、俺が反省して極道から足を洗ってヒロキの叔父貴のように僧侶になる、なんて
そんなふうに考えていた。。。って事はないよな。。。それは。。。無さすぎる。。いくらなんでもない、絶対ない。あり得ないだけど、どうしても叔父貴のヒロキの事が気になって。。
四朗、なんか、ヒロキの叔父貴の事話題に出さないかな。、と、吾朗太さんは傍で必死にヒロキの叔父さんの事を話題にしてくれ、せめて。。安否だけでも。。。とずっと強く四朗さんに念を送るようにしていましたが、、、
お昼過ぎて、結構な長い時間
あれこれガヤガヤと笑い合って、東京の話しやパテシィエ、海外の視察や留学やコンクールの話し、
確かにだいたいは四朗中心の話しだったけど。。。
残念ながら、叔父のヒロキの話は出てこなかったまぁ、仕方ない、ヒロキは世俗から離れた世界にいる人で今はもう、四朗と疎遠になっているかもしれない。四朗は四朗でやる事はいっぱいだし。ヒロキも世俗離れしているとはいえ組織である生活だから、子どもや身内がいなくても歳をとってもなんとか誰かが面倒見るぐらいはされるだろう。それに今の時代なんか子どもですら当てにできないのに、親族身内なんてもう付き合いがないのは当たり前かもしれない。ましてや、父親の蓮気もとっくに亡くなっているし。吾朗太さんがふと、考えると
「また来ますね今回は急遽、警察署に用事があってそれを済まさなきゃならないって。。やっと時間が取れて旅行や観光って余裕はないけど、この景色は心が洗われます。そろそろ、警察署へ行かないと。タクシー呼ばなきゃ、」四朗は御礼を言うと、もう次の用事があるからと会計するようだ。
「また来てくださいね。今度はゆっくりと。アッシも毎日遊びみたいだけど現実働いてるし、他人様にとやかく言えないけど、たまには骨休め、ゆったりのんびりと休息するのもいいですよ。。。」桑田の大将が挨拶をすると、四朗は
「ええ、家族も。。。まぁ、息子達はもうある程度大きいからね、男の子だし。。もう来ないだろうから、うちの義両親と妻と。。。一度プルメリア島にゆっくり連れてきたいですね。まぁ、でも、それもあるけど桑田さん、海の灯りの旅館はベジタリアン対応してますか」
「え。。。ああ、うちは魚魚介がメインですが宗教やアレルギーや体質、ベジタリアンの方に対応した料理もご相談くだされば出せますよ。いろいろなお客様が、世界中からお見えになってるので
英語や他の言語を話せるスタッフも外国人のスタッフもいますし、ミリオンは何ヵ国語かは話せますしね。あいつは少し学べばだいたいの国の言葉はほどなくして話せるようになるんです。ミリオンの勤務している塾の講師は月何時間か他の教室の講義を見学できるので外国語クラスはミリオンも何度か見学して話せるようなんですが。まぁ、それはそうとして魚がダメって方もそれから広い世界ではいろいろな宗教があるし、安心して泊まっていただけるようにと出来るだけの多様性は取り入れる事にはしているんですよ。。。、
料理ももちろんメインはうちの自慢の海鮮ですが。。
誰か、アレルギーでもお持ちですか。」と桑田の大将が会計をしがてら聞くと
四朗は
「おじさん。。父親の真ん中の弟ですが。。父親が亡くなってから随分といろいろ面倒をみてくれたんですよ。ヤクザの剣崎家を嫌って若い頃から出家してしまったんですが。。実は父親の蓮気が信頼していてなにかあったら、と。今はもうちょっと認知症になって山寺からは降りて東京の施設に入っています。私も忙しいので最近はあまり顔を出していないんですが厳しい環境の僧侶なんで結婚もできないし、菜食の主義なんで。。。施設に許可をもらって、たまにはのんびりと外泊ついでに景色のいいところでゆっくりさせてあげたいんです。もう年齢が年齢であとどれだけ先があるかはわかりません。でもね、叔父は代々悪さをしてきた剣崎家の少しでも罪滅ぼしの為になればと自ら償いや弔いの為に出家したんです。僧侶になりたいからなったのかもしれませんが。。。でも。。。いつ終わりがくるかわからない認知症でわからないかもしれないけど少しの時間でも豊かな気持ちになるひとときをと願ってるんです。余計なお世話かもしれませんが。私の事も、どうやら忘れたり、時々どうも吾朗太の仲間のそっくりの男性だと勘違いしてるんですよ。吾朗太の生前に四朗そっくりの奴がいるヤンチャで全然性格は似てないけどって写メも見せられた事があって。。。確かに、私に似てますが。。まぁ、とは言え私は平凡な量産型だから。その人に悪いけどわりとよくあるタイプの顔なんじゃないか。でも、不思議な事になんでその吾朗太の仲間を叔父が知ってるのか。吾朗太の生前、大人になってから時々会っても特に叔父のヒロキの話しなんかしなかったし、叔父と会った時も。。。吾朗太に会ってるなんて話しは全く聞かなかったんです。。なのに。。そりゃあ。。僧侶ですから刑務所にお説教しに行くとか講演しにいくとか、悪い事をしていた人や前科のある人の相談に乗ったりはあるでしょうけど。でも。。別に、吾朗太もヒロキ叔父さんも。。会っていた事を隠す事でもないと思うのに。。なんなんでしょうね。今となっては、叔父さんも認知になってしまって。。。私の事を会えばよく、その吾朗太の知り合いのマナベ君とか言ってきたりして。マナベ君、今日は吾朗太はどうしたんだ、吾朗太は一緒じゃないのかとか言うしまぁ、認知症の相手にいろいろ深刻な事を言ってもいけないので適当に話しを合わせて、吾朗太が亡くなった事も言ってません。でも。。。叔父は。。。私の事を忘れる事があっても、吾朗太の事を忘れていないって。。。なんかあったとしか。。。」
四朗のそう話す声が聞こえてくると、幽霊の吾朗太さんははっとしました。。。
叔父貴、ヒロキの叔父貴、生きてたんかでも。。認知症って。。複雑だなぁ。生命の不平等というかヒロキの叔父貴は、剣崎家の罪深さに耐えかねて贖罪のつもりで出家して厳しい環境に身を置いたというのに、ボケたか。。。でも。。。俺の話しをしてくるって
ああ、やっぱりどうしても思い出せないけど
ヒロキの叔父貴。。。四朗に言えない事で。。俺となんかあったんだろうかマナベ。。。って。。四朗そっくり。。って、ああ、なんとなくだけど。。いた、俺の弟子みたいなヤツ。。。だけど、確かアイツも俺と一緒に悪さしてたヤツだ。反社の東京邪神軍のメンバーだったしアイツも今何やってるんだろう、でも。。。
なんでヒロキの叔父貴は。。四朗にも話せない事を俺に関してなんか。。。まさか。。悪い事に手を染めて俺らと組んで。。まさか。。で、四朗に言えないとか
まさか。。。波紋のように黒い疑惑が広がっていく。。。やがて広がる疑惑が果てしないブラックホールに思えて。。クラクラと疑惑の渦に吸い込まれそうになる。。叔父貴。。まさか。。。
まさか。。。俺は。。。ヒロキの叔父貴に。。。
2023年12月21日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/12356153
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック