あっ。。。
饗と駿栄は、プルメリア港のほとりで、極楽鳥花の花束を海へ投げる。。。
ドキドキ。。。キラキラした水面に映える悲しいほどに美しいオレンジ。今夜はなんとなく、木蓮寺に帰らず、このままこいつら2人についていってみたい。もしも霊感があって自分が視えるキャストやお客がいて騒がれる危険もあるけど。その時は気配を消すか、木蓮寺に戻るか。。。
最初から、気合いを入れて気配を消すか。よっぽど昼間みたいなすげ〜車に乗ってきたあの霊感が恐ろしく強いだろう福の神みたいな奴はまずいないだろうし。昼間、いつもは自分が視えるオーガストさんも吾朗太さんは気合いを入れていたので気配を消し気づかれなかったのだ。オーガストさんよりさらに霊媒体質らしいベルモすら、吾朗太さんが気合いを入れてみたら、見つからなかったので。今夜は。。。気合いを入れて、饗と駿栄。。。この二人の職場のホストクラブ熱帯夜についてってみる事にした。なんだか、ワクワクがとまらない。夜の街というのが、無性に血が騒ぐのか。行けばなんだか、手がかりが掴めるかも。。早く転生して生まれ変わりたいんだろう、俺は。。きっとそうだ。もう一度やり直せるなら、生まれ変わりに希望と願いを込めて。。
もっと、早くこいつらの職場についていくのに気づいていれば。。。吾朗太さんが前向きにいろいろ胸に自然に湧いてきて。。。
それは、生前会ったことがなくても、存在を知りそれでいて饗と駿栄が氷室終夜。。吾朗太さんの為に祈ろうと、この終焉の場、海に還った場で真心込めて、安らかな眠りと冥福を祈る、心に打たれるものがある。
あっ。。。
どうぞ、安らかに安心してお眠りになってください。俺たちは、輝かしい貴方の存在に励まされています。心よりここにご冥福をお祈りいたします。
もう一度生まれ変わったら、どうぞさらなるお幸せに。俺たちは祝福して新しいあなたを待ってます。
海へ
黙祷する饗と駿栄。。彼らには吾朗太さんの姿は見えないけど、吾朗太さんには、二人の祈りの心の声が聞こえてきた。口には出さなくても、静かな心の声が吾朗太さんには響いてくる。あの二人は自分の安らかな冥福と、明るい来世を願っているのだ。なんて、優しい奴らだ。
俺は。。。かつて。。こんなかけがえのない時間を、かけがえのない誰かと過ごしたような気がする。。。よどみなくあふれてくる温かい気持ち。。いつだったろうか、遠い記憶の。。。もう一度、自分をやり直したい。生まれ変わると、その瞬間生前の記憶は無くなるというけどもう一度、、、また俺として生きるんだ、俺は幸せだったに違いない。
でも、生まれ変わるとしたら。。。
今度は、反社会、裏社会じゃなくて。。。
きっと、まぶしいほどの太陽のもとで。。。
吾朗太さんは、饗や駿栄の霊感のない2人からは見えないはずだけど、でも、なんかこみあげてきて。。。しばらく、2人からそっと離れた。
別に。。泣いているのを見られるわけじゃない、アイツらに霊感がないはずなのだから、でも。。。しばらくは。。。
吾朗太さんはあふれてきそうな涙をこらえると、
また、空から、
ひらり、フワフワと。。。天使の羽根のような羽根が一つ舞い降りてきた。。
いつだったか、こんな事あったな。。。
発見されたプルメリア港に
黙祷を捧げた饗と駿栄。。。
「ね、なんか、気のせいかな、さっきちょっとフワッとあったかいような。。。」キョロキョロと駿栄が周りを見渡すと、
「ゆ、雪な、ワケねーな。。羽根、か。」白いモノがヒラリと頭上から舞い降りてきたので雪と、沖縄出身で雪が大変珍しいので一瞬嬉しくなった饗はここは常夏の島プルメリア島だ。。と思い直し、一瞬の雪に驚くけど、よく見ると白い羽根が一枚ヒラヒラと舞い降りてきただけだった。
「あ、白い羽根って見ると縁起いいって幼なじみが言ってたなぁ。天使のお知らせか、天使の微笑みか、なんかで、いい事あるんじゃない。」駿栄が言うと、饗が、「あ、なんかそれ聞いた。客が言ってたな、前に。で、じゃあ、エンジェルスイート飲まないって上手いこと言って高めの銘柄のシャンパン開けさせたから、マジで縁起いいかも。」「現金だなぁーあ、そうだ、まだ仕事まであるから今日はいつもの定食屋でテイクアウトして二度寝もいいけど、寝ちゃうと起きづらいし、ランチに河岸をかえて。。。ちょっと軽く一杯飲まない、一度行って見たかった店があって。あ、南なんだけどタクシー代は誘った僕が出すからさ。」はっ、と思いついたように駿栄が言う。「それはぜんぜんいいけどさ、まずは、これ置きに戻った方がよくねー」バケツ
いっぱいの
シャロンさんへの極楽鳥花の花束があるプルメリア港から自宅マンションや、オーガストさんの家もみんな西地区、港付近で徒歩圏内なので
「あ、そっか。置きに戻ろ切り花の延命剤もあるし、自宅にタクシー呼ぶから。少しでも飲んじゃうとビートルでいけないし。」駿栄はそう言いながら歩き帰りつつ、スマホで気になっている店を検索して饗に見せた。
「あ、ここか、海の家クワタえっ、ここって、老舗旅館がやってるとこで、確かミリオンだっけ、あのジーニアス塾の講師の天才児。。。おデブさんの仲間というか、おデブさんときょうだいだったんだろー、木蓮寺の、美術家のヴィーナスとも。。。えー、まぁ、似てるって言うと似てるかもだけどさー」天才美術家ヴィーナスが有名人だしミリオンも、奇跡の天才児として有名なので、ミリオンやヴィーナスや同じくみつごのベルモもけっこうマスコミに知られている。「混んでるかもしれないけどさ。海見ながら、ちょっと一杯ってのも。気分的に、そうそう、今度トシのオヤジさん沖縄から来るんだろ。で、トシがどっかこのプルメリア島らしいとこねーか、あんまり小洒落てるのもオトンは緊張するし、この島らしいとこ、って言ってたじゃん。で、ここどうかなと思って、気になって。ちょっと候補の一つに下見しとこ〜。」
トシ、というのは饗の本名の歳三で駿栄はプライベートでは饗をトシと呼びました。饗は、2歳前ぐらいに父親と母親が離婚して最初親権を取った
父親を騙した酷い母親から救われて親権を取り返した父子家庭で育ちました。饗が心配ばかりかけてきた父親の斗真をプルメリア島に招待して
今度沖縄からはるばる息子に会いにプルメリア島へ。。。三泊4日でそのうち、ホストクラブ熱帯夜の店休みの日が1日重なるので駿栄も一緒にディナーに付き合うというのでした。と、言うのも家出ではないけどヤンチャ過ぎて女性関係も派手で地元で悪かった饗は、ホストをするために沖縄から仕切り直し、やり直しを込めてプルメリア島へ来てホストなんてと、堅物の父親の斗真を最初大反対で泣かせたものの、漫画すらめんどくさくて途中で読まない活字なんてもってのほかの勉強嫌いの饗が唯一、憧れていた飲食業界の帝王青山奏の自叙伝だけは真面目に読んでいて大成功している青山奏も、学歴がないヤンチャでどうしようもないけど元はホストという事で、働かず喧嘩ばかりでブラブラするぐらいならホストという仕事はあるんだしあの漫画すら疲れて活字嫌いの歳三がと、活字の青山奏の自叙伝をまじめに読み返しているのにも気づいてこれも社会勉強で経験だし時代は時代で職業意識も柔軟性と多様性で変わっていくという事で、最終的には饗の父親は折れたけど。もともと、子どもにはやりたい事をしてほしいものの、斗真はどうも饗に似ていなく人はいいけど真面目で堅物で昔ながらというか、かなり古いところがあり、ホストはヤクザと繋がるのではないかとヤクザ落ちするのではないか?と、そんな心配ばかりしていましたが、同じ生年月日の駿栄が流星としてホストになり、ルームシェアで仲良くなって聡明な駿栄がTV電話で饗の父親の斗真に、饗にとてもお世話になっているお礼と、今しかできない社会経験をホストとして積み将来の事業立ち上げに表社会では培えない斬新でユニークな視点と経験と資金を役立てたいので同士として饗と切磋琢磨しているかけがえのない仲間です。と、丁寧に誠実に安心感を与えるように挨拶したのもあり饗の父親は駿栄と一緒なら大丈夫だとすっかり安心するようになりました。
おまけに駿栄は地元、東京で例の息子を変えた成功者の青山奏の近所に住んでいて奏から子どもの頃から可愛がられていたので。
ホストと言っても決して目先の手取り早く金が欲しいとか、
チャラっと遊び半分に女にモテたいというのでなく、将来の事業展望の為に目的を持って今だからこその時間を経験と視野見分を広げる為にホストをやっているという明確な志しがあり、 斗真も駿栄の影響がか
今ではもう逆に饗がホストをやっている事をお上する様になり、駿栄ともTV電話で時々話すようになりました。だから、潤滑油というか緩和剤のように父親への信頼性のパイプ役みたいな駿栄は、饗にとっての恩人で照れくさくて口には出さないものの饗は駿栄に心からいつも感謝している。とは言え、駿栄もなにもよくわからないホストクラブのなかで少し前に入店した饗には同じ部屋だしいろいろ世話になって感謝しているのだ。
つくづく駿栄は、家庭では虐待されて冷遇されてきて
そのかわり、180度コロッとまるで神さまにもて遊ばれるかのように、学校や社会、家庭の外ではかなり人間関係に特別恵まれてきたのだ。それは、駿栄が外ヅラがいいからではない。本当に、家庭がめちゃくちゃな反面社会がとびっきりいいのだ。不思議と家庭の外では温かい支援や応援されてかなりうまくいく。
きっと、多分、家庭や仕事、社会適度に良し悪しバランスが取れた人が幸せなんだろうけど
それでもいま、東京のあの環境から家出して幸せだと思う。確かに。。。東京の幼なじみや近所の人や、それこそ青山奏、青山のおじさんには良くしてくれて感謝してるけど。。。
確かに
駿栄は今までたくさんの人に支えられてここまでやってこれて感謝しきりだけど、かと言っていつまでも東京にいるわけにはいかない。地元の人たちに深い感謝をしながらも、明日の自分へ、新しい自分に会いに行かなければならないのだ。
あっ。。。
霊感なんかないあの2人に泣き顔が見られるわけじゃないけどさ
なんとなく、泣き顔を見られているような気持ちになって饗や駿栄から少し離れていた幽霊の吾朗太さん。。2人に冥福を祈られ、早く転生したくなる、と、
家へ戻るのかな饗と駿栄がバケツにいっぱいお客に渡す極楽鳥花の生花をかかえながら、こないだやってきたこの2人の住まいのマンションの方へ行く。
きっと、このまま用事が済んで帰るのか。。。吾朗太さんは2人が霊感が無いのをいい事に、やっぱり跡をついていってしまう。
「ね、いこいこ、ちょっとどんなんか、お店の雰囲気下見しとこうよ。やっぱり、お父さんにはここぞ、ってとこで一緒に食事したいじゃん。」と、駿栄が言う
吾朗太さんは、駿栄の言葉にあ、アレお、お父さんこの犬の方って。。。こないだ家についていって耳をふさぎたくなるような親に虐待されて家出してきたって話しじゃなかったっけ。。。と、不思議に思ってると、すかさずフェネックが「まぁ、うちのオヤジが来たら駿栄頼むよーすっかり駿栄には安心してるからさ。ま、とりあえずこれ置いて海の家クワタ、いこ。」
「あ、じゃ、今からタクシー家に呼んどく」駿栄が言う
あっ、そうか、なるほど、仲良いのはこのフェネックの方のオヤジの事か。だよな。。犬の方は。。無理だろうな、あれはもう。。。盗み聞きした駿栄の親は全くダメだ。。。
「全くよー、俺はヤンチャなのに、オヤジに殴られた事も全然無いんだぜ、ま、もちろん俺もオヤジを殴った事ないけどさ、普通はボコボコにされててもおかしくねーんだろうけど、末っ子なのか俺に激甘でさ、オヤジ。。」フェネックは嬉しそうに言う
フェネックの饗が、自分の父親の話しにクスクス笑う。。。
でも、それに反応するかのように吾朗太さんは。。。
あ、あっ。、。。吾朗太、ゴロー、吾朗太、、。
吾朗太さんの胸に懐かしい。。どこかで聞いたようなあの声がする。。。大人の男性の。。。それは。。。いつかどこかで。。
俺、オヤジに殴られた事ないんだぜ甘やかされて。。。饗のその言葉、
それは俺もだ
吾朗太。。。吾朗太さんの再び胸の中で。。
名前を呼ぶリフレインが。。
あっ、これは。。。この声は。。。オヤジ。。。
いつの日にか、多分幼い日。。。確かに聞いた、これは、オヤジの声が。。覚えてるそうだ
剣崎蓮気。。。オヤジ、剣崎蓮気の声。。。
お、俺は、俺の名前は、確かに、確かに剣崎吾朗太、だった気がする
吾朗太さんは、
まだまだ無邪気な饗と駿栄の素直な優しさに心を打たれて。。。
うっすらと遠い記憶が蘇るような気がしてきました。。。
2023年03月27日
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