「えー嘘でしょ。。トシが幽霊信じてるの、意外。。。」駿栄が意外そうに言う。同じくプルメリア港区で
二人の住まいにほど近いオーガストさんの民家を優しく包むストレリチアの群れの中で駿栄と饗はオーガストさんのハイヤーのお客様でもあり、饗の太客でもある未亡人の女社長シャロンさんのバースデーに合わせてシャロンさんの大好きなストレリチアをオーガストさんの頼みと許可を得て2人で摘みに来た。のは、いいんだけど。。さっきから、なんか。。誰かに見られているような、なんらかな気配を霊感がないと言う駿栄と饗でも、さっきからずーっと誰かいるような不思議な感覚。。。
キョロキョロする二人。。。だけど、遠くに人の声や波の音がするだけで、二人のそばにはもちろん人影はなく。。
ただ、
穏やかで優しい静かな時間が流れていくだけでした。
トシ、というのは饗の本名歳三のトシ、でルームシェアしているし、プライベートでは駿栄も饗の事はトシと呼んでいます。
そんな二人を、幽霊の吾朗太さんがなんとなくそばで見つめていました。さっきは、神楽町市の海辺で自分が見える仕事中のオーガストさんを見つけて、別に彼だけなら挨拶や邪魔にならない程度の少し話をするのもお客が一緒にいたので自分の姿が見えない様に神経を集中させて様子を見ていたら、オーガストさんには見つからないものの、浜辺を盲目らしい若いお客に案内していたオーガストさんのところに、会社の会長が凄い車に乗ってやってきたいったい家が何軒建つんだというくらいくらくらめまいがするほどの幻の高級車に圧倒されているとそれは、どうも福の神のようで。。。奴は自分の姿に口を出さないにしろ確実に気づいている。。。別に追い払ったり睨まれはしなかったけど
福の神に姿が見つかり気まずいままにまた吾朗太さんはプルメリア島へと戻って。。で、急に思い立ちオーガストさんの家のストレリチア畑へやってきたものの、いつかこの近くで見た若い二人のホストが先客でいたのだ。この二人には吾朗太さんの姿が見えないものの、なんだか気配を感じるけど、でも嫌な気配ではなく。。。聞き耳を立てると、吾朗太さんが生前ホストをしていた源氏名の氷室終夜だの、ストレリチア。。というか、極楽鳥夜、ストレリチヤという店の名前を話しに出してきて
思わず吾朗太さんは二人が霊感がないのをいいことにさらに近づいてさらに聞き耳を立てました。まぁ、自分の姿は見えないものの、盗み聞きは良くないけど見つかったら見つかったで、別に。。。盗み聞き以上二人に危害を加えるでもないしな。。。
それよりも、二人の話でなにか自分が生前の記憶を思い出すのではないかと期待がある、
氷室終夜という源氏名も、極楽鳥夜という店名も、どちらも生前そうだったんだって、と教えてもらったにしろ、自分では初めて聞く名前で全く実感がないからだ。残念ながら。、
駿栄という知性的な感じのビーグルの方はトシと呼ばれたフェネック狐が幽霊の事を口にするのが意外だったらしい。そのトシの方が、「別に、そーゆーの見えるとかじゃねーんだけどさ。オトンが変な写真持ってた事あって。まぁ、変なって言ってもオトンが社員旅行かなんかで。。山かなんかの写真だけど。。虹色の昔の人みたいな。。?虹色の光の爺さんみたいなのが写ってて。。姉ちゃんとギャアギャア言ってたんだけど。まぁ、綺麗なキラキラした虹色で穏やかで。。どう見ても気持ち悪いわけじゃねーし、姉ちゃんは神様じゃねーかって言うし。。オトンは心霊写真とか神霊番組とか全く興味ないし全然見ないしそーゆーの関心ないからわざわざ加工したわけじゃねーだろうしな。。。だから平気でそんな写真アルバムに貼ってあったんだけど。。。そういう話しを信じないというか、全然関心がない人でもそんな不思議なもんを持ってるとなると。。。俺、故郷が沖縄で心霊スポット結構あるんだけどさ。俺は視えないし別に感じるもんもないんだけど。。で、近所の爺婆は変なとこへいくな、取り憑かれたらどうするってうるさかったけど俺らヤンチャで馬鹿みたいに肝試しやったり、オトンは幽霊なんか信じてないからなんも言わんかったけど。でも、俺らの連れじゃないけどさー
ガキの時からどー考えても嘘をつかないような奴がいきなり授業中に取り憑かれてスッゲー大人しい奴だったけど学校で狂ったみたいに暴れてユタの人が来て祈祷してたの見たことあるし。。。あれは、どー考えてもガキの演技ではムリだろ。。。」「わ。。。ま、現実に幽霊見なくても。。。どう考えても嘘をつかない人が取り憑かれたり変な写真持ってたり。。。そーゆーの目にするとどうも信じないってわけにはいかなくなるね。。。」ビーグル犬とフェネック狐。。。
吾朗太さんの目の前にいるこの二人は、どうも、話しからすると。。オーガストさんの知り合いで、金持ちのお客をオーガストさんに紹介したかなんかで、その客が誕生日か特別な日でこのオーガストさんちのストレリチアをその金持ちのお客の為に摘みにきたらしい。
ま、女は単純に花束に喜ぶだろーし、女は特別に好きな花がある奴が多いだろう。。。ましてや、好きな花をわざわざ好きな男が買ってくる以上に
時間と手間をかけて摘んできた、と言ったら。。
参るだろうなぁ。それにしてもさ、俺は生前にホストをしながら、ホストのスカウトもしていたらしい。木蓮寺の俺が視える
ブー子がいろいろ教えてくれた。もちろん俺にそんな自覚はないけど。かなりのハンパない目利きだったらしく、俺のスカウトしたホストはどんどん売れていったんだと
ブー子が情報を集めた。
あっ、もしそうならいまこの目の前にいる二人も当時の俺はスカウトしていただろうな。。。多分。。。
ブー子は、俺が多分かなり余裕がある性格だったんじゃないかと言う。ヤクザの息子でどうしようもないけど類稀なイケメンで甘やかされてかなりわがままだけど、父親から寵愛されて、上の兄二人や父親の本妻からは疎まれたけど下の二人の兄からはかなり大事にされていたらしいし。。生まれながらにして愛情にもお金にも不自由なく可愛がられて育ってきたのか、だから、自分より魅力的で売れそうなホストが出てくる危機よりも、女性はイケメン好きだがタイプ別だろうと、
イケメンとか魅力的なとか、売れそうな多様なタイプのホストをスカウトしたり、社長のマヒルさんという人に勧めていたらしい。出来る男性や魅力的な男性を蹴落として自分がお山の大将でいる事がプライド的に許せなかったようで、イイ男がでてきたら、自分も負けじと自分を磨く研磨剤や刺激にするタイプというか。。。へー吾朗太さんは、ベルモのブー子に調べた生前の様子をあれこれといろいろ伝えられたものの。。
それはいい男をスカウトすりゃ金が入ってくるからだろうに。だいたい、自分より格下みたいな感じのくだらない男をスカウトして自分の手下にするなんて。。。そんな惨めな。。それこそ自分が惨めになってくる。だけど、今日もこの二人、駿栄と饗を見ていると。。
もしかして。。もしかしたら、俺も。。こいつらスカウトするな、自分がホストで生きてたら。
饗の方は俺に雰囲気が似てるしヤンチャも愛嬌で母性本能をくすぐるだろう。駿栄の方は俺とは全然違うタイプだけど、知性的で性格良さそうだし、女が好きな誠実な人というジェントルマンタイプだし。友人として付き合うなら紳士的で穏やかで友情に厚そうだし、自分とは全然違うタイプだけど仲良くなれそうだ。
熱帯夜という店に勤務しているようだが。。。吾朗太さんは
昼間フラフラ街中を適当に徘徊してるせいか、
いつもなんだか夜には定宿の木蓮寺に戻っている吾朗太さんだったが
いいこと考えた
あえて今度はこいつらの職場についてってみようか、まぁ、お客や従業員で霊感があるやつに見つかっては大騒ぎになるからあれだけど、
今日のオーガストさんに見つからなかったみたいに、気合いを込めて気配を消せばなんとかなる。。。そうだ、どうせ、コイツら話には金持ちのいま摘んだ花もらいのイロキチ婆さんが店に来ると言うし、ビーグルの方はもしかして休み
かもしれんけどでも、少なくともフェネックの方は絶対店に出勤するよな。。。
なぜか心に引っかかってる
この二人が以前に言っていたマヒルという男も。。。この二人の社長の昔働いていた恩人だと言う。。。マヒルというのは俺の働いていた極楽鳥夜の社長だったらしい。。。働いていた時はオヤジのように俺を寵愛していたらしいが、残念ながらそんな実感がない、なんにもわからない。。でも、
社長の顔は全く忘れて実感がないけど。。マヒルという名前は、名前だけはどうにも引っかかっている。
コイツら、駿栄と饗の熱帯夜という店の朔夜とか言う社長はそのマヒルという男の元従業員って事は。。。俺の同期とか、もしかしたら俺がスカウトした奴かもしれん。。。店にとってもかなり太客らしい饗の金持ち婆さんのバースデーって事は。。。その朔夜って社長も今夜は店に来る可能性は高い。。。朔夜って社長は、俺を寵愛していたマヒルに恩を感じてるなら俺にも結構関係ある奴かもしれないし。。。
なんせ、生前に、剣崎吾朗太である自覚と、俺がどうやって死んだのか死因がわかれば、俺は昇華して転生するチャンスが与えられる。。生まれ変わって。。。生まれ変わる、か。。。
今度はもう、ヤクザはいい、、だけどヤクザかもしれん。きっとヤクザだろうなぁ。。。でも、金や愛情に溢れて注がれた人生というのには感謝を感じる。
ブー子は生まれ変わったら前世の記憶はなくなるからと言う。。。魂が成長する、修行のような遊びのような喜びも悲しみも経験体験して本当の自分に戻るために魂は生まれ変わって自分が輝いてお互いが各々に輝きあって世の中を照らし出して自他社会を発展させていくようだ。そんなのは、現世のブー子は死んだ事があるわけでもないし。ベルモのブー子が適当に上手いことを言って檀家を洗脳するためにお綺麗にヨイショするだけかもしれないが。自分というのはこの世に一人きりで、例え魂が生まれ変わっても今世は一度っきり。
なんだか、信じたくなった。どうしてもこのオーガストさんの家に無性に来たくてたまらないというより
むしろ、行かなければならないと衝動的にここへ来てしまったのは、多分
コイツらに会って、コイツらの職場に着いていく事を思いつき、俺の生前を実感する手がかりとなるかもしれないなにかが待っているかもしれないかも。。。
吾朗太さんがハッと、インスピレーションが湧いてきたというか、もしかして。。。生前の自分への真実の扉に手をかけるかもとまるで追い風というか、神風が吹いたように
不思議な力に押されるかのように。
なんとなくだけどそんな気がしてならないような。。。
そんな時、駿栄というビーグルが、「ね、これさ、まぁ、もうちょっと貰って今からプルメリア港へ行かない」饗に言う。。。すると、饗が、
「あっ、もしかして。。。その、プルメリア港で発見されたその、氷室終夜って伝説のホストに。。。」
「そう、朔夜社長が東京へ帰ってマヒル社長の墓前にこの花を捧げてるみたいだけど、この花のイメージって、そのマヒル社長が寵愛してたって、氷室終夜さんって感じなんでしょ。オーガストさんも、その終夜さんの幽霊に話しかけたみたいだし。。。なんとなく、この花って、憎めないって言うか。。。ホストにはよく似合う。。。」
「ウーン、確かに。シャロンさんが、ストレリチアは花言葉がなんとなーく、ホストぴったりで。恋の伊達者とか気取った恋とか。。。小さな頃から好きだけどまるで、自分が将来ホストに飲みに行く未来予想みたいに好きになったし、なんだか、賑やかで華やかで歓喜めいて。。そして謎めいて。。。だから、好きになったのかも、なんて言ってたなぁ。。。」
あっ。。。
会ったこともないけれど、これもご縁だし、と、二人はじゃあ、オーガストさんにLINEしとかなきゃ、氷室さんの、あのオーガストさんが出会った港で亡くなった若いホスト氷室終夜さんに僕たちも追悼します、ストレリチア、余分に分けてくださいって。。。と楽しそうに話し合ってストレリチアを摘んでいる。。。
二人はこの後、いっぱいのストレリチアの花束をかかえて。。。
港へ。。。氷室終夜さんが見つかったプルメリア港で。ストレリチアで氷室終夜。。。吾朗太さんを追悼するようだ。
会った事もない
俺の。。ために。。か。
吾朗太さんはなんだか。。。こみあげるものがあり、もう一度生まれ変わってみたいと思いました。
2023年03月03日
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