「オッさん、仕事かよ。。。まぁ、そのかっこでこの車そうだよなぁ。あれ、こないだ青じゃなかったっけ。車。。。」
吾朗太さんが声を掛けてきたオーガストさんに言いました。
「こないだのアクアブルーは、ウチのプレゼンスタクシーのカラーだけど、今日はハイヤーなんで。こないだはちょっと人手が足りなくて一般車を手伝っていたんです。」見るからに黒い高級車のタクシーでオーガストさんは言いました。
「ほー。んじゃ、けっこうな金もってるお客かよ。まぁ、オッさんそういう上客相手に向きそうだなぁ。」「昨日からのお客様です。そうそう昨日はお客様と木蓮寺へ行きましたよ。吾朗太さん、夜は木蓮寺にいらっしゃるんですね。どっかお出かけですか。」「まぁな。俺あんまりジッとしてるって嫌なんだよな。へー、木蓮寺の参拝にでも付き合ったのか。」「いえ、東京から来た新聞社のお嬢さんで木蓮寺の取材でしたね。私も同席してましたよ。木蓮寺さんとは顔見知りですし。よく参拝のお客様や個人的なご用事のお客様を上座へ乗せていきますからね。あっ、上座というのは木蓮寺の住所みたいなもんですね。」「あ、そういやブーコが。。。あの、ベルモが新聞社の取材があるからみたいな話をしてたっけ。へー東京。俺も東京出身らしいんだけどさ。言われても全然覚えてねーんだぜ。ハァ。」「東京。。。そうですよね、そうそう、あの日、初めて吾朗太さんを見かけた日私は吾朗太さんのお兄さんという方をプルメリア警察署からプルメリア港に乗せましたよ。すれ違いで残念でしたが。。。吾朗太さんそっくりですね。」
「ああ。。。ブーコから聞いたよ。そっくりって。。。アニキって奴はオレと違って優秀なんだろう。別人種だろ。チンピラやヤクザみたいなろくでなしでもないんだろ。。。」
「お優しそうな雰囲気が良く似てますね。」オーガストさんがにっこりしました。
「は。。。ハァ優しい。。。ネェ。。、ま、まぁ、オレはコワモテじゃねー、どっちかってと甘い顔だからなぁ。でも。。。優しいかねぇ。しかし、馬鹿だねーアニキって三太夫とかいう奴もさ。わざわざ金や時間使って東京から来たんだろ。ブーコが言うには。。反社会の実家と一切縁切ってカタギの。。外務省かなんかの官僚だろ。俺みたいな弟がいるのバレたら。。。もう死んでるし。頭のいい奴はなに考えてるかわからん。死んだヤクザもんなんかほっときゃいいのに。」「そんな事言わないでくださいよ。縁なんて切っても切れないでしょう。って。。。言いたいけど。。私は学生の頃に博多から東京に出て。。東京で仕事して海外へ行ったりで。すっかり実家とも疎遠です。あなたが羨ましいですよ。お兄さん。。。海で貴方を弔って泣きながらプルメリアの花束を海に捧げてましたね。私もプルメリア港に近いので、ご一緒に。。ストレリチアの花を。。。」
「あっ」あの時。。。寝ていたら、いきなりプルメリアとオレンジの花が降ってきて。。。なんだと思ったんだけど。。。
もしかして。。。「オレンジの鳥の頭みたいなストレッチって、それだろ。ブーコに教えてもらったんだけど。。。」吾朗太さんはなぜか泣きそうになるのをこらえて。。。
「よくご存知ですね、ストレッチじゃなくてストレリチア、ストレチアとも言うんですが極楽鳥花です。私が買った古民家に群れがあって。前の人が残していったんですが。私は好きな花なので、そのまま刈り取らずにお世話してます。」
あの日。。。どこからともなく降ってきたプルメリアとストレリチアは。。。オッさんとアニキという奴が俺に捧げた花だったかもしれん。それに。。。
「プルメリア港の近くの。。あの花の群れって、あ、あの家か。昔ばなしみたいに古い家だけどこじんまりして綺麗だし。で、日本風な家だけどあの花があってもおかしくない不思議な感じの。。。」
「そうそう、多分私の家ですね。プルメリア港の近くのストレリチアの古民家」
オーガストさんは、ストレリチアはお祝いの花だけど吾朗太さんが天国で幸せになれるようにと三太夫さんに言って一緒に吾朗太さんが眠っていた海へ花を捧げました。
ああ。。。そうだ、俺がホストクラブで働いていたらしいがそのマヒルというチワワのオッさんがあの花が好きで極楽鳥夜。。。ストレチヤという店名にしたとかブーコに言われたなぁ。マヒルって名前はボーっとなんとなく覚えていたんだけどな。
ただそれだけであり。ホストクラブで働いていた事すら覚えてはいない。残念ながらだけど。
「そうか。俺が。。。飲み屋のにいちゃんだった頃に、ストレチヤとかいう店で働いてて、そこのオーナーがあの花が好きだったらしい。って聞いたけどな。でも。。なんも思い出せん。」「飲み屋ああ、そう言えば、ホストクラブのお兄さん達にあの花をあげましたよ。ああいうお店って女性がお客様だから生花も喜ばれるでしょう。ビーグルとフェネックのハタチぐらいのお兄さんで。。。二人とも私の名刺を見て、私はオーガストで会社の番号が24だから、名刺にオーガスト24となってまして。俺たちの誕生日じゃないかってびっくりしてて。私も8月24日産まれなんで。それで話が盛り上がって。で、今日のお客様もビーグルさんの東京の幼なじみでご紹介いただきました。」
オーガストさんは、吾朗太さんにアクアブルーの名刺を見せて言いました。オーガストという名前で、会社の番号の24番が空いていたので8月24日産まれだったので。
名刺には家紋かどうかはわかりませんが
なぜか、青い山のような形のスタンプも押してありました。
「あっ。。犬、耳のたれた犬と目が大きいキツネのにいちゃんだろ。アイツらなら見た事あるぜ。プルメリア港の近くに住んでる奴らじゃね?」
自分は死んでいるが、なぜかああいう奴らは羨ましい反面で微笑ましい。ビーグルとフェネックのホストのにいちゃん達。
奴ら二人は霊感が無さそうで、自分が視えないだろうと暇を持て余した吾朗太さんは彼らの家にこっそりついていった事があったが。。。
思ったとおりに二人とも部屋をかなり綺麗にしていたし。俺は汚いのは嫌いだ多分、生前も相当潔癖症というか綺麗好きというかそんなところだろうな。
だから、寝るときは一段と綺麗な木蓮寺で寝るデブ子が幼稚園の先生とか言って。
昼間はピーギャーガキがうるさいからだいたいは寺にいないけどよ。ウッざい奴で俺が視えるガキがいて、あんなウンコな話でギャーギャーうるさいし。
みたいなことを吾朗太さんはオーガストさんに言います。
あっ。。。
そうだ、ブーコの友人らしき神野純。
ブーコのノートには、仲良い友達的なメモで書いてあった。って事は。。。東京じゃなくてどうもこっちに住んでるのでは。ネットの友人なら、そうやって書くか、あそこまで真っ青になったって事は。。。東京ってより、こっちに住んでる可能性が高いな
まぁ。。。このオーガストのオッさんは、時々木蓮寺に仕事で行く程度でブーコの人間関係まではわざわざ把握してないだろう。昨日は特別に仕事以上で木蓮寺へ行ったみたいだが。。。
まさかまさか。。だけど。。
でも。。オーガストのオッさんもこのプルメリア島に何年か住んでるらしいし。。。
もしかして、ブーコの友人らしき神野純って奴も。。。知っているかも。。。ブーコもだけどオーガストのオッさんも職業柄色んな人と付き合って人間関係は広いし。ちょっとした知り合いや少し知ってるとかあるかもしれない。男か女だけでも。。。
確かに、嫁だった緋夏って女の托卵。緋夏って奴は托卵するぐらいだからあまりいい奴でもないだろう。俺も人のことは言えない。吾朗太さんはそう思う。俺もろくでないし。
神野純って奴は、ブーコが真っ青になるほどなんかを心配していたわけで
ブーコもろくでもない奴なら友達にはならないし自業自得だぐらいにしか思わないだろうが
神野純がいい奴なんだと思う。だから緋夏って馬鹿嫁に結婚してない独身だと嘘をついてお人好しの男がひっかけられて
多分そいつが純の父親だとは思うが。。
でも。。気にはなる。。
そこで吾朗太さんはオーガストさんに、「オッさんあの、この辺で、神野純って奴知らないかな。。ブーコの友達だと思うんだけど。」
さりげなく吾朗太さんがオーガストさんに聞いてみました。
「神野あ。。。神野。。純さん」
オーガストさんはなにか思い出したようで。。。
「なんだ。。。知ってるのか。。。」
「あ、確か、今からのお客様のリリコさんのお友達で。。東京から神楽町市に進学されてるらしいです。。。あのイーストサイエンス大学にね。。。ベルもさんも仲良いみたいですよ、そうそう、その純さんというお嬢さんのことで。。」
そうすると。。なぜかオーガストさんの顔が曇ります。
「なんだ。。。ヤバい奴なのか。でもブーコがわざわざロクデモネー奴と仲良くしないとは思うんだけど。。。」
「いや、そうじゃなくてね。純さんが東京に帰省してて。。。逆にこっちに仕事で東京から来ているリリコさんが東京の同窓会に出られないというので、同級生が同窓会の写メを送ってきたんですが。。。」
「神野純って、女か」「はい。。お嬢さんです。ハリネズミの。可愛らしい感じの。。。でも。。」
さらに。。オーガストさんは顔を曇らして言葉を濁らせてしまいます。
「やっぱり女かなんかあった。。。のか」
吾朗太さんが尋ねますと、オーガストさんは、ようやく重い口を開き
「あのね。。まぁ、私はちょっとだけ霊感がありますので貴方も視えてるんですが。。。実はその。。リリコさんのお友達の純さん。。リリコさんのスマホに送られてきた写メが。。。身体が透けていたんですよ。」
「なんだそれ。。。」
「私は若い頃そんなような写真を見たことがありまして。そういう半透明に写真に写っている人って言うのですか。。でもね。。。私が見た限りのはなし、そういう半透明に身体が透けて写真に写っている人は暫くしてお亡くなりになっているんです。ひとりの例外もなく」
「えっ。。。」
2021年12月09日
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