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2015年06月12日

蕎麦屋の粋

そばイメージWEB001.jpg

以前、東京で仕事を終え、さて仙台に帰るかという時に
新幹線の時間もあり、なんとなく小腹もすいたので上野駅界隈をあるいて、
なにかちょうどいい店はないかと探した。
御徒町で、蕎麦屋をみつけて暖簾をくぐった。
昼時はとっくにすぎ、夕方にはまだ間がある時間帯。
いきなりそばを頼んで、さっさとでてくるのも惜しい気がしたのでお酒をたのんだ。
冷やを1本。
すると四角い塗盆に1合徳利(正確には7勺ほど)と
小さな塗りの器には、漬け物そして塩が盛られて、出て来た。
お酒を頼んだだけなのに、しっかりと酒のみをとらえる心憎いセットだった。
冷や酒といってもキンキンに冷えたお酒ではなく、常温よりは冷たいかなという程度の
灘系の日本酒である。江戸時代なら「下りもの」だ。
塩をなめ、ちょっと漬け物をあてに酒を飲みながら味わう午後。何とも粋な時間だった。
池波正太郎も良く同じようなことを書いている。
本格的に飲むのではなくちょっと時間が空いている時、一人なら必ず蕎麦屋に入って飲む。
海苔か卵くらいでさっとやるのがいいのだ、と。
日本酒が終わる前に蕎麦を1枚頼み、あたりを見回すと、同じように酒を静かに飲んでいる親爺さんが
幾人かいた。みなそれぞれお店を持っており、夕方の忙しい時間帯の前の休息なのか。
もしくは、引退し店は息子に任せて自分は楽隠居の身となり、この後は銭湯に行って汗を流したら、
落語にでも行くかという風情だった。
江戸の蕎麦と蕎麦屋の粋。
そういう店だった。




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